2016ロイヤル・アスコット初日
今年もロイヤル・アスコットがやってきました。今年はエイシンヒカリが二日目のプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスに参戦するということもあって、日本でも一部で話題になっているようです。昨日の時点ではエイシンヒカリが大本命ですが、その前に火曜日、初日の結果を紹介して行きましょう。
御存知の様に5日間亘って開催される王室主催のアスコット競馬、毎日6レースが組まれ、全30レース中でG戦は18鞍となります。例年通りのプログラムで、初日は第1レースから第4レースまでがG戦、あとの2レースはハンデ戦とリステッド戦という構成でした。
6月14日のアスコット競馬場、オープニングはアスコット競馬場を拓いたクィーン・アンに因んでその名もクィーン・アン・ステークス Queen Anne S (GⅠ、4歳上、1マイル直線)。予報通り雨で馬場は渋り、soft 一色。1頭が取り消して13頭立てとなりましたが、例年に比べて出走頭数が多いのが目立ちます。
確たる中心馬不在で人気はかなり割れ、前走ロッキンジ・ステークス(GⅠ)に勝ったゴドルフィンのベラード Belardo と、フランスから遠征してきた去年の仏1000ギニー馬で去年のアスコットでコロネーション・ステークス(GⅠ)を制したエルヴェディア Ervedya が9対2で人気を分け合っていました。今世紀に入ってから6歳以上の馬が勝っていないレースですが、去年の2着馬で6歳のエソテリク Esoterique は7対1で5番人気、アメリカからの参戦が話題のBCマイル覇者テーピン Tepin が11対2でジョイント3番人気、日本から遠征したエイシンエルヴィンはほとんど可能性も無く66対1のブービー人気です。
人気の一角ベラードのペースメーカーで最低人気(200対1)のバーチャン Barchan が強いペースで飛ばし、馬場もあって力の勝負に。逃げ馬がバテて2番手を追走していた6番人気(9対1)のコーディ・ベアー Kodi Bear が一旦先頭に立ちましたが、スタンドに近いコースを先行していたテーピンが残り1ハロンで抜け、同じく先行策から伸びたベラードに半馬身差を付けて優勝。1馬身4分の1差で後方から追い込んだジョイント8番人気(20対1)のライトニング・スペア Lightning Spear が3着に入り、人気の一角エルヴェディアは5着。エイシンエルヴィンは後方から順位を上げましたが10着での入線、人気の割には走ったと言えるでしょうか。
勝ったテーピンは当ブログのアメリカ競馬ジャンルで常連になっている5歳牝馬で、マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルーが騎乗していました。去年のBCマイルで牡馬、ヨーロッパ勢を蹴散らして優勝した馬。今回は英欧共にデビュー、馬場に不安はありましたが、問題にせず快勝。それでも鞍上ルパルーは“最後の100メートルは長かった”と言っていますから、アスコットはきつい最後の上り坂を克服できるスタミナがあることが、勝つためのポイントでしょう。テーピンは大西洋を挟んでGⅠ戦は5勝目、秋のBCマイル連覇が目標です。
第2レースのコヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)は、今年の2歳による最初のG戦。1頭が取り消して18頭立てとなり、無敗馬(と言っても1勝馬と2勝馬)が8頭。その中からエイダン・オブライエン師が送り込んだカラヴァッジョ Caravaggio が13対8の1番人気。
アスコットの多頭数は二つのグループに分かれるのが常で、主導権を取ったのはスタンドから遠いグループ。このグループの先頭に立ったのは5番人気(10対1)のヤルタ Yalta でしたが、スタンド側の馬場中央を先行していたカラヴァッジョが残り2ハロンで抜け出し、スタンドから遠い側を抜けたジョイント3番人気(8対1)のメーマス Mehmas に2馬身4分の1差を付けて見事人気に応えました。更に2馬身半差で、これも遠い側を先行していた2番人気(9対2)のサイケデリック・ファンク Psychedelic Funk が3着と順当。勝馬を除いてはスタンドから遠いグループを走った馬が2着から5着を独占しています。
カラヴァッジョは上記の様にエイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗で、ゴウランの5ハロン、カラーのリステッド戦(5ハロン)と連勝し、これでデビューから3連勝。早くも来年の2000ギニー候補のトップに上がりましたが、オブライエン師は暫くは6ハロン戦を使い、その先は結果を見てから、とのこと。
オブライエン師はこのレース8勝目で、歴代の最多勝利調教師に上がりましたが、当初は馬場が悪化したため“選択を誤ったかも。ノーフォーク・ステークスを選ぶべきだったかな”と考えたそうで、それでも勝ったカラヴァッジョは相当な器かも。
次も短距離戦ですが、3歳と古馬の混合戦GⅠのキングズ・スタンド・ステークス King’s Stand S (GⅠ、3歳上、5ハロン)。当初はアメリカからアカプルコ Acapulco が3歳馬として唯1頭参戦する予定でしたが、雨のため同馬を含む4頭が取り消して17頭立て。去年のナンソープ・ステークス(GⅠ)を制し、今期も一叩きされたメッカズ・エンジェル Mecca’s Angel が6対4の1番人気。色々なドラマを含んだレースとなりました。
優勝は、先行から残り1ハロンで抜け出した2番人気(4対1)のプロフィタブル Profitable 。同じく先行したジョイント10番人気(33対1)の伏兵コタイ・グローリー Cotai Glory を首差抑え、1馬身差でスタートで出遅れたジョイント14番人気(50対1)のゴーケン Goken が3着に追い込みました。人気のメッカズ・エンジェルも先行していましたが、前を塞がれる不利もあって16着と期待を大きく裏切っています。3着のゴーケンはゲートインを嫌い、スターターは再試験を命じました。
勝ったプロフィタブルは、今期パレス・ハウス・ステークス(GⅢ)、テンプル・ステークス(GⅡ)と負け知らずで、G戦3連勝で待望のGⅠ戦初勝利です。勝利調教師はクライヴ・コックス師ですが、ドラマティックな勝利に酔ったのは、騎乗したアダム・カービー。スポーティング・ライフ誌が報ずるところによると、カービーにはこの日男の子が誕生したばかり。
カービーのガールフレンド(スポーティング・ライフは妻とは書いていません)はデヴィッド・エヴァンス調教師の娘ミーガンで、カービーは午前2時に起こされて病院に急行。仕事のためにアスコットに向かい、第1レースの開始30分前に無事出産を知ったとのこと。カービー騎手にとっては息子の誕生とGⅠ戦制覇が重なり、“この日付は一生忘れない”とコメントしたそうですが、そりゃそうでしょう。二重の祝福に沸く陣営でした。
初日の最後で、今年のロイヤル・アスコット最大の目玉になりそうなのが、セント・ジェームス・パレス・ステークス St. James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。1頭が取り消して7頭立てですが、英愛仏2000ギニー馬3頭の揃い踏み。他の4頭はあくまでも脇役に過ぎません。
英2000ギニーを制したガリレオ・ゴールド Galileo Gold は、不利があったとは言え愛2000ギニーでアウタード Awtaad に完敗。一方、仏2000ギニーを制したザ・グルカ The Gurkha は2頭とは初対戦で、勝ち方が最も強かった馬。これ等の要素から、ザ・グルカが4対5の2倍を切る1番人気。アウタードが5対2で2番人気となり、ガリレオ・ゴールドは3強の中では最も劣勢で6対1の3番人気でした。
ムハンマド・マクトゥームを総裁とするゴドルフィンが2頭、ムハンマドの兄でアウタードのオーナーでもあるハムダン・マクトゥームが2頭とドバイ勢が半数以上を占めるメンバーから、ゴドルフィンの6番人気(66対1)キムリック Cymric が援護射撃の逃げでペースメーカー。これを2番手で追走したガリレオ・ゴールドがすんなり先頭に立ちましたが、これを追っていたアウタードが、後方から追い上げたザ・グルカが残り1ハロンで前に立ち塞がるような場面。このアクシデントを尻目にガリレオ・ゴールドが、結局は左に進路を変えたザ・グルカに1馬身4分の1差を付けて優勝。半馬身差でアウタードは3着でした。このアクシデントが無ければ、1馬身4分の1差はもっと詰まっていたかもしれません。
ヒューゴー・パーマー厩舎のガリレオ・ゴールドは、もちろんフランキー・デットーリ騎乗。得意のフライング・ディスマウントでアスコットの観衆を沸かせました。何よりトラブルに巻き込まれなかった先行策が奏功したと言えまょうが、元祖2000ギニーを制した馬の意地でもありましょう。各馬とも次走は未定ですが、差し当たってはグッドウッドのサセックス・ステークスで再対決が見られるかも。意外にレヴェルが高いかも知れない3歳マイラーの活躍に期待しましょう。
序でと言っては不謹慎ですが、このあとアスコットでは第5レースに2マイル4ハロンのアスコット・ステークスというハンデ戦、第6レースには2歳のリステッド戦ウインザー・キャッスル・ステークス(5ハロン)が行われました。
前者は20頭立て、6対1の2番人気に支持されたジェニーズ・ジェウェル Jennies Jewel が逃げ切り、5対1の本命シルヴァー・コンコルド Silver Concorde (ウェルド/スマーレン)は16着に敗退しています。
後者は22頭立て。勝ったのはゴスデン厩舎の10番人気(20対1)で、本命(11対4)ミスター・トレーダー Mister Trader は20着に終わりました。
最近のコメント