ケネディー惨敗
復活祭も終わり、ヨーロッパの平場競馬も一気に本格化してきます。昨日はアイルランドとフランスで重要なトライアルが行われましたが、今年は国別に分けてレポートして行くことにしました。その方が後から検索するのに何かと便利、という当方の都合でもあります。
ということで、この記事は4月12日にレパーズタウン競馬場で行われたトライアルから。G戦に格付けされているのは2鞍で、先ずは第3レースに組まれていたレパーズタウン1000ギニー・トライアル・ステークス Leopardstown 1000 Guineas Trial S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。去年は3月末に行われた開催ですが、今年は若干遅れ気味です。
馬場は soft 、所により yielding と重く、この時期は止むを得ない力の要るコース。このレースは最近11年でオブライエン厩舎が6勝もしているお得意様レースですが、そのオブライエン師が予定していた2頭を共に取り消したため、8頭立て。レース前からオブライエン厩舎の勝利はなくなりました。そんな中、4対1の1番人気は2頭が分け合い、今期既にマドリッド・フリー・ハンデに勝っているストームフライ Stormfly と、クールモア所有馬ながらウォッチマン厩舎に所属するレガティッシモ Legatissimo が並びます。
英国から遠征してきた3番人気(5対1)のカリプソ・ビート Calypso Beat が逃げましたが、2~3番手で追走したストームフライが残り1ハロンで抜け出し、4番手を進んだブービー人気(10対1)のデヴォンシャー Devonshire に3馬身4分の3差を付ける快勝です。4分の3馬身差3着には3番手を進んだ4番人気(6対1)のミリタリー・エンジェル Military Angel が入り、人気の一角レガティッシモは4着。逃げ馬を除いては前に行った馬で決まった一戦でした。
勝馬を管理するデルモット・ウェルド師、騎乗したパット・スマーレンは、共にこの日第1レースから続けて3レースを制し、いきなりのハットトリック達成です。勝ったストームフライは2歳時は5戦しており、2戦目で初勝利。2歳シーズン最後はパーク・ステークス(GⅢ)3着で、上記の様にこれが今期2戦目で連勝。今回は初めてブリンカーを着用しての競馬でした。陣営ではズブいタイプと見ており、仏1000ギニーがこの馬向きと考えているようです。
続いてはギニーというよりダービー・トライアルのバリーサックス・ステークス Ballysax S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。去年は何故かネイヴァン競馬場で行われましたが、今年は本来のコースに戻っての一戦です。出走馬は何と3頭のみ。冬場のダービー本命に挙げられていたジョン・エフ・ケネディー John F Kennedy のシーズン・デビューとあって、他は遠慮したのかも知れません。当然ながらオブライエン厩舎でもダービー筆頭候補のジョン・エフ・ケネディーが1対4の圧倒的1番人気。
しかしショックが待っていました。スタートから強いペースで飛ばした最も人気の無い(10対1)サクセス・デイズ Success Days が、最後は内ラチに向かって左に寄れながらもそのまま逃げ切ってしまったのです。2番手に付けていたジョン・エフ・ケネディーは、最後は2番人気(9対2)のザフィラーニ Zafilani にも交わされて最下位惨敗に終わりました。着差は4馬身半、6馬身ですから「惨敗」としか言いようがないでしょう。ところで今期からエイダン・オブライエン厩舎の主戦騎手にはライアン・ムーアが選ばれたようで、今回もムーアとのコンビでした。息子のジョセフ・オブライエンは身長が高いこともあり、やはり体重を落とすのに苦労。この冬は専ら障害レースに騎乗していました。今後も重ハンデの馬で平場に乗ることもあるでしょうが、オブライエン軍団の第一候補はムーアが選ぶ、という図式になりそうですね。
さて勝ったサクセス・デイズはケン・コンドン厩舎、シェーン・フォレイ騎乗で、2歳時には3戦1勝、今期も8日前にコーク競馬場の一般戦(8ハロンの不良馬場)に勝っており、使われた強みと得意の重馬場を味方にしての勝利。2戦目にゴウラン競馬場の未勝利戦(7ハロン)に勝った時も25対1の大穴で、陣営にとってもサプライズを演出するタイプのよう。クラシック登録は愛2000ギニーのみですが、距離を克服したこともあり、陣営は愛ダービーも視野に入れたようです。
一方敗れたジョン・エフ・ケネディー、レース前のダービー・オッズは4対1の本命でしたが、この敗戦で一気に9対1まで急降下してしまいました。ただシーズン初戦と重馬場、これで見捨てるのは早計と思いますが、これまでの高評価に影を落としたのは事実、陣営がどのように巻き返してくるかが視点でしょう。
ところでこの日は二つのG戦に先立ってレパーズタウン2000ギニー・トライアル・ステークス Leopardstown 2000 Guineas Trial S (L、3歳、1マイル)も行われています。これも取り上げない訳にはいきません。リステッド戦なので簡単に触れておきますが、優勝は1番人気(11対8)に支持されたザウラク Zawraq 。上記デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗の無敗馬で、4番手から抜け出す圧勝でした。(2着とは3馬身半差)
2歳時の新馬戦でオブライエン厩舎の期待馬サー・アイザック・ニュートン Sir Isac Newton を破って優勝した器で、この勝利で2000ギニー、ダービー共に12対1のオッズが出されています。更にバリーサックスでジョン・エフ・ケネディーが負けたため、ダービーのオッズは更に8対1まで上昇。血統的にもレース内容も長距離向きのタイプとあって、俄然ダービーの有力候補に上がってきました。オーナーはシェイク・ハムダン、ザウラクという名前を覚えておいてください。
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