ルジェ師のクラシック・ダブル・ダブル!

6月19日、フランスのシャンティ競馬場はオークス・デイ。soft の馬場の下、3鞍のG戦が行われました。仏オークスがメインですが、今日はレース順に行きましょう。

先ずリス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳、2400メートル)から。仏ダービーが2400メートルで行われていた当時は残念ダービー的な性格でしたが、現在はパリ大賞典のトライアルとして位置付けられることが多いようです。
当初6頭の登録がありましたが、1頭が取り消して5頭立て。そのうち4頭が4戦目と言うキャリアの浅い馬たち。残る1頭も6戦目というメンバーで、19対10の1番人気に支持されたのは、前走サン=クルーのリステッド戦で2着している1勝馬のスプリング・マスター Spring Master でした。

メンバー中最も経験の多い4番人気(9対2)マハリ Mahari がレース半ばまで逃げましたが、2番手に付けていたスプリング・マスターがここで先頭に立ち、後はそのまま押し切って人気に応えました。後方待機から外に出して2番人気(23対10)のゴールデン・ヴァレンタイン Golden Valentine が追い詰めましたが、短頭差届かず2着。3馬身半差で3番手を追走した最低人気(と言っても15対2)のアル・ハラム Al Haram が3着に入っています。
パスカル・ベイリー厩舎、オリヴィエ・ペリエ騎乗のスプリング・マスターは、3歳になってからシャンティーの1900メートルでデビューして4着。2戦目もシャンティーで、2000メートルの未勝利戦に勝ち、前走サン=クルーのリステッド戦(アーヴル賞、2400メートル)で2着していました。これで4戦2勝、2007年にサン=タラリ賞(GⅠ)に勝ったコキレール Coquerelle の半弟ということで、距離が伸びて能力を発揮するタイプでしょう。

続いてはベルトラン・デュ・ブレイユ賞 Prix Bertrand du Breuil (GⅢ、4歳上、1600メートル)。こちらも1頭の取り消しがあって7頭立て。去年の英2000ギニー2着、ジャン・プラ賞勝馬のテリトリーズ Territories が3対5の圧倒的1番人気。今期は前走パレ・ロワイヤル賞(GⅢ)3着からの始動で、叩かれ2戦目に期待が掛かります。
逃げたのは5番人気(10対1)のスティルマン Stillman 、テリトリーズは後方から末脚に賭けましたが伸びず、4番手の外を回っていた最低人気(233対10)のパ・ド・ドゥー Pas de Deux が一気に前を捉え、これも後方から追い込む2番人気(41対10)のアンパッサブル Impassable に4分の3馬身差を付ける波乱。短首差でこれまた後方差しの3番人気(6対1)シー・フロント Sea Front が3着に入り、テリトリーズは5着敗退。

勝ったパ・ド・ドゥーは如何にもフランス馬名ですが、実はドイツから遠征してきた6歳せん馬で、ヤスミン・アルメンラーダー Yasmin Almenrader という方が管理し、アントワーヌ・クティエ Antoine Coutier が騎乗していました。過去フランスに何度も遠征していましたが、フランスのG戦は初体験。
ドイツでは1600メートルと2000メートルのGⅢ戦に勝っており、前走はドイツで2100メートルのリステッド戦で7頭立ての7着に殿負けしています。勝因を探すより、大本命の敗因を探る方が結果を検証するカギになりそう。

そしてこの日の第5レースとして行われたのが、通称仏オークスのディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)。枠順を紹介した16頭全てが出走してきましたが、最終的には仏1000ギニー馬のラ・クレソニエール La Cressonniere が14対5の1番人気に上がっていました。レース前にブックメーカーが押したオブライエン/ムーアのバリードイル Ballydoyle は重馬場下手と言う評判もあって61対10の4番人気に評価を下げています。
ブービー人気でバリードイルのペースメーカー役でもあるクールモア Coolmore が逃げましたが、アクシデントはゴール前300メートルで起きます。中団で団子状態になっていた馬たちの中で、内に入っていた8番人気(17対1)でウイリアム・ビュイック騎乗のハイランズ・クィーン Highlands Queen が急に左に斜行、連鎖反応の結果、7番人気(12対1)アルマンド Armande のピエール=シャルル・ブードーが落馬。14番人気(75対1)のティエラ・デル・フュエゴ Tierra del Fuego も競争を中止してしまいます。
最初は中団を進んでいたラ・クレソニエールは徐々に順位を下げて後方に下がり、外を回っていたためアクシデントには巻き込まれず、大外から最後は内に切れ込みながらも、後方から追い上げた11番人気(26対1)のレフト・ハンド Left Hand に半馬身差を付けて人気に応えました。1馬身4分の1差で3番人気(6対1)のヴォルタ Volta が3着に入り、以下12番人気(53対1)のアザエリア Azaelia が4着、逃げたクールモアが5着。バリードイルはスタートで他馬にぶつけられる不利があって後方から、それでも6着に追い上げていました。英国から参戦した2番人気(54対10)のスイス・レンジ Swiss Range は8着。

落馬の原因となった進路妨害、ハイランズ・クィーンは8着で入線しましたが、最下位に降着となり、騎乗していたウイリアム・ビュイック騎手には15日間の騎乗停止処分が課せられました。これに対しビュイックは裁決委員に激しく抗議、これに対しても更に15日、合計30日間の騎乗停止が申し渡されました。ビュイック側は異議申し立てをする可能性もあるとのこと。この顛末、歌劇「こうもり」のアイゼンシュタインを思い出してしまいました。

仏1000ギニーとの二冠を達成したラ・クレソニエールは、これで5戦5勝。凱旋門賞のオッズは12対1となりました。騎乗したクリスチャン・デムーロ騎手は仏オークス初制覇。
管理するジャン=クロード・ルジェ師は三日前にケマー Qemah でロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークス(GⅠ)を制したばかり。今年は仏ダービーもアルマンザー Almanzor で勝ち、同年に仏ダービー/オークス制覇。このこと自体は珍しくありませんが、ルジェ師はこの偉業を2009年にも達成しており、ダブルを2度も成し遂げたのはルジェ師が史上初。2009年はダービーがル・アーヴル Le Havre (ラ・クレソニエールの父)、オークスはスタチェリータ Stacelita でした。
また仏オークスはルジェ師にとって4勝目。2009年のスタチェリータを皮切りに、2012年にヴァリラ Valyra 、2014年にはアヴニール・セルタン Avenir Certain で制覇しています。

 

 

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