雨が全てのパリ大賞典

昨日の日曜日、フランスのロンシャン競馬場では最も権威あるクラシックとして知られてきたパリ大賞典が行われました。もう一鞍のG戦と共にレポートしましょう。

この日は生憎の雨、それも写真に写り込むほどの土砂降りで、これが結果に左右したことは言うまでもありません。馬場状態は最悪の very soft 。
先ずはモーリス・ド・ニエィユ賞 Prix Maurice de Nieuil (GⅡ、4歳上、2800メートル)から。9頭が出走し、前走ロイヤル・アスコットのゴールド・カップで4着した英国のブラウン・パンサー Brown Panther が17対10の1番人気。

レミュ・ドゥ・ラ・トゥール Remus de la Tour が強いペースで逃げ、勝負は後方対組の末脚比べに。ブラウン・パンサーもその1頭でしたが、1馬身半勝っていたのは2番人気(9対2)のテルービ Terrubi でした。ブラウン・パンサーとは首差で7番人気(166対10)のゴーイング・サムホェア Going Somewhere が3着。
パスカル・ベイリー厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のテルービは4歳の今期、サン=クルーのリステッド戦に勝ち、バルべヴィユ賞(GⅢ)2着、ヴィコンテス・ヴィジエ賞(GⅡ)3着と長距離戦を使われてきた重巧者。今回は雨を見方に付けてのG戦初勝利でした。

そしてパリ大賞典 Grand Prix de Paris (GⅠ、3歳牡牝、2400メートル)。かつては3000メートルの長距離戦でしたが、現在は事実上のフランス・ダービーとも言える2400メートルの一戦。英国から遠征した2頭を含め11頭が参戦してきました。
イギリスの競馬ファンは当然ながら仏ダービーを制したザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby を応援していましたが、人気は5対2で2番目。ダービー馬を抑えて9対10の1番人気に支持されたのは、その仏ダービー3着が明らかにアンラッキーだったと評価されていたプリンス・ジブラルタール Prince Gibraltar 。距離と馬場で逆転必至との予想でしょう。

レースは後ろから3番目という人気薄(62対1、9番人気)のガランテ Gallante が逃げ、プリンス・ジブラルタールは中団待機。一方ライアン・ムーア騎乗のザ・グレイ・ギャッツビーは、後方の内を回る苦しい展開。スタートした時点で、ムーア騎手は敗戦を覚悟したそうです。
直線、プリンス・ジブラルタールがスパートしてガランテを追い詰めましたが、最後は短首差届かず大波乱。2馬身半差でこれも236対10の伏兵テレテクスト Teletext が3着に入り、3番人気(109対10)のフリー・ポート・ラックス Free Port Lux が4着。もう1頭の英国参戦馬マルゾッコ Marzocco が5着に入り、ザ・グレイ・ギャッツビーは6着敗退。6着と言っても、直線に向いた時はそのまま最後方に終わる状況でしたが、前を次々に交わしての6着。問題は距離ではなく、雨が全てのグランプリだったと言えましょう。

大穴を開けたガランテは、アンドレ・ファーブル師が管理し、これが嬉しいGⅠ初勝利となるピエール・シャルル・ブードー騎乗。オーナーは彼のクールモアで、ブードー騎手は大オーナーの馬で金星を射止めたことに大喜びでした。2歳時はロンシャンのデビュー勝ちのみ。3歳になってノアイユ賞(GⅢ)、オカール賞(GⅡ)がいずれも3着、前走ロンシャンの条件戦で2勝目を挙げていました。ここまではG戦では能力的に一歩下と思われていただけに、やはり雨が全てだったと言われても仕方がない所。それでも凱旋門賞のオッズが出されましたが、ブックメーカーによって16対1から25対1と大きなバラつきがあります。
ザ・グレイ・ギャッツビーのケヴィン・ライアン師は、同馬を二度と不良馬場では走らせないと宣言。凱旋門賞には追加登録が必要ですが、最終判断はその後のレース内容、ロンシャンの馬場状態も考慮してからでも十分だという見解でした。

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