ソングバード、圧巻の復活
今週のアメリカ競馬はニューヨーク、ケンタッキー、カリフォルニア3州で7鞍のG戦。メインはチャーチル・ダウンズのイヴニング開催で、記事更新が遅れたのはそのためです、悪しからず。
最初はベルモント・パーク競馬場のポーカー・ハンデキャップ Poker H (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。firm の馬場に6頭が出走し、久し振りの実戦ながらGⅠ馬のオビアスリー Obviously が2対1の1番人気。
スタートからハナに立ったオビアスリー、そのまま後続に影を踏ませず、4番手から追い込んだ4番人気(5対1)のフォース・ザ・パス Force the Pass に3馬身4分の3差を付ける逃げ切り勝ちです。大きく離された後方2番手から同じ5対1のオファリング・プラン Offering Plan が追い込んで1馬身4分の3差の3着。勝時計1分31秒65は、これまでの記録を2秒も上回るコースレコードです。
フィリップ・ダマト厩舎、今回が同馬と初コンビのホセ・レズカノ騎乗のオビアスリーは、これがG戦8勝目となる8歳せん馬。2014年と2015年に夫々ハリウッド、サンタ・アニタで行われたシューメーカー・マイル(芝GⅠ)を連覇しており、今期はサン・ガブリエル(芝GⅡ)とアルカディア・ステークス(芝GⅡ)で何れも2着。前走アルカディアから4か月の休養明けでした。
今日はケンタッキーより先にサンタ・アニタ競馬場のサマータイム・オークス Summertime Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)を紹介しましょう。チャンピオン3歳牝馬ソングバード Songbird の復帰戦として注目されましたが、fast の馬場に2頭の取り消しがあって5頭立て。辛うじて相手と思われていた馬も取り消してしまったこともあり、ソングバードは1対9と単勝馬券としては全く妙味の無い一本被りの大本命。
2番人気(7対1)のベラメンタリー Bellamentary にハナを譲り、生涯で初めて2番手に控えたソングバード、終始半馬身差で逃げ馬を追走していましたが、第3コーナー手前では待ち切れないばかりに先頭に立ち、後は殆どキャンターでベラメンタリーに6馬身半差の圧勝劇。ハナ差で後方2番手から最低人気(30対1)のケイ・ケイ Kay Kay が3着に上がっていました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のソングバードについては説明不要でしょう。既にGⅠ戦はデル・マー・デビュタント、シャンデリア、BCジュヴェナイル・フィリーズ、サンタ・アニタ・オークスと4勝。発熱で大事を取ってケンタッキー・オークスをパスしましたが、何がオークスを勝っても最強3歳牝馬はソングバードで間違いナシ。G戦も7勝目で、8戦8勝と無敗記録を更新しています。
現地時間の夜に開催されるチャーチル・ダウンズ競馬場からはGⅠ戦を含むG戦5鞍。最初のマット・ウイン・ステークス Matt Winn S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)は fast の馬場に1頭が取り消して6頭立て。出走馬中唯一のG戦勝馬ガン・ランナー Gun Runner が1対9のガチガチ1番人気に支持されていました。
スタートから主導権を取った大本命、第3コーナーでは2番手を進んだ4番人気(16対1)のグレイ・スカイ Gray Sky に並び掛けられる場面もありましたが余裕綽々、直線では同馬を5馬身4分の1差引き離し、オッズに相応しい堂々の逃げ切り勝ち。半馬身差で3番手を追走した2番人気(9対1)のテキサス・クローム Texas Chrome が3着と、何とも見所の少ないレースでしたが、勝時計の1分41秒12はステークス・レコードです。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のガン・ランナーは2月にリズン・スター・ステークス(GⅡ)、3月にルイジアナ・ダービー(GⅡ)と連勝し、ケンタッキー・ダービーでも3着。残る二冠はパスし、ここでは格が違っていました。
続いては現地時間で夜8時半スタートのフレール・ド・リ・ハンデキャップ Fleur de Lis H (GⅡ、3歳上牝、9ハロン)。BCディスタッフの出走権利が掛かった一戦で、6頭立て。一昨年の最強3歳牝馬アンタパブル Untapable がここでは3対5の1番人気。前走チャーチル・ダウンズでディスタッフ・ハンデ(GⅡ)を制したアー・チョコレート Ahh Chocolate が5対2の2番人気で続き、固いレースでしょう。
最低人気(16対1)のビッグ・ブック Big Book が逃げましたが、2番手を追走したアー・チョコレートと3番手のアンタパブルが並んで直線。しかし以外にも人気2頭は共に交わされ、4番手追走から外を追い込んだ3番人気(6対1)のペイド・アップ・サブスクライバ― Paid Up Subsciber が、後方2番手から追い込むブルックリンズウェイ Brooklynsway に3馬身差を付けるサプライズ。2馬身差で最高から最低人気(16対1)で並んだエンゲイジングリー Engaginglee が3着に食い込み、アンタパブルは4着、アー・チョコレートも5着に敗れる大波乱でした。荒れる少頭数の見本のような結果でしょう。
アルバート・ストール厩舎、リカルド・サンタナ騎乗のペイド・アップ・スクライバーは、これがG戦初勝利となる4歳馬で、通算成績は8戦4勝。チャーチルの1マイル・アローワンス戦に勝っての参戦で、この競馬場では3戦3勝。以前に出走したG戦では、去年サラトガのプライオレス・ステークス(GⅡ)が4着、10月キーンランドのレイヴン・ラン・ステークス(GⅡ)でも9着と敗退していました。
チャーチル3つ目のG戦は、芝コースのワイズ・ダン・ステークス Wise Dan S (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。去年までファイアクラッカー・ステークス Firecracker S (8ハロン)として知られてきたレースで、距離が8.5ハロンに延長されての改名。レース名のワイズ・ダンは、2011年と2013年にファイアクラッカーを制覇しています。firm の馬場に1頭が取り消して10頭立て。最終的なオッズは不明ですが、去年のアーリントン・ミリオン(芝GⅠ)を制した堅実なザ・ピッツァ・マン The Pizza Man が7対5の1番人気。
レースは外枠から発走した10対1のアルゼンチン産馬カサクィ Kasaqui が逃げ、ザ・ピッツァ・マンは最後方。4番手辺りを追走していた7対1のプルーヴェン Pleuven が直線で外から伸び、内ラチ沿いに粘るカサクィを4分の3馬身捉えて優勝。1馬身半差で5番手を進んだ5対1のサッチャー・ストリート Thatcher Street が3着に入り、ザ・ピッツァ・マンも良く追い上げたものの4分の3差で4着まで。
フィリップ・シムズ厩舎、チャニング・ヒル騎乗のせん馬プルーヴェンは、2歳時にフランスで7ハロンのリステッド戦に勝ったことはあるものの、G戦は初勝利。その2歳時にアメリカでダニア・ビーチ・ステークス(芝GⅢ)で3着していました。5歳の今期は前走5月にチャールズで芝の一般ステークス(オープニング・ヴァーズ・ステークス、8ハロン)で2着しています。去年冬にガルフストリームでアローワンス戦に勝った後、今年7月キーンランドのアローワンス戦5着まで休養し、前走が休み明け2戦目でした。
夜の9時40分、照明に照らされてスタートしたGⅠ戦のスティーヴン・フォスター・ハンデキャップ Stephen Foster H (GⅠ、3歳上、9ハロン)は、勝馬にBCクラシックへの出走権が与えられるレース。7頭が出走し、去年のクラーク・ハンデ(GⅠ)を制したエフィネックス Effinex が3対5の断然1番人気。
4番人気(9対1)のブレイドスター Bradester が絶妙のペース逃げ、4番手を進むエフィネックスの末脚を封じ、更に離れた最後方から追い込む2番人気(9対2)のイーグル Eagle を半馬身抑えて鮮やかな逃げ切り勝ち。首差で2番手を追走した3番人気(6対1)のマジェスティック・ハーバー Majestic Harbor が3着に入り、エフィネックスは6着に沈んでしまいました。
エディー・ケナリー厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のブレイドスターは、これがG戦5勝目となる6歳牡馬ですが、GⅠ戦は初勝利。20世紀初頭から南米で育まれてきた牝系の出で、通算成績も23戦9勝となります。去年はサルヴァトーレ・マイル(GⅢ、1マイル)、モンマス・カップ・ステークス(GⅡ、8.5ハロン)にも勝っていましたが、9ハロンで勝ったのもこれが初めてのことになります。
土曜日の最後、リグレット・ステークス Regret S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)は簡単に。1頭が取り消して10頭立て。
3対1のオーンティー・ジョイ Auntie Joy がスタートからゴールまでの逃げ切り勝ち。1馬身4分の1差で6番手から伸びた5対1のノーブル・ビューティー Noble Beauty が2着に追い込み、3番手を進んだ2対1のトライ・ユア・ラック Try Your Luck が首差で3着。
ブレンダン・ウォルシュ厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のオーンティー・ジョイは、これで6戦3勝。G戦は初勝利で、今期同じチャーチルでエッジウッド・ステークス(芝GⅢ、8.5ハロン)で2着していました。
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