巨匠ハイティンクのプロムス50年
前日のシュトゥットガルト放送交響楽団、最後の演奏会に続いて客席が沸きに沸いたコンサートが続きます。7月29日に行われたのは、ハイティンクがプロムスに登場して半世紀を記念する大曲の演奏会でした。
7月29日 ≪Prom 18≫
マーラー/交響曲第3番
ロンドン交響楽団 London Symphony Orchestra
指揮/ベルナルド・ハイティンク Bernard Haitink
メゾ・ソプラノ/セーラ・コナリー Sarah Connolly
合唱/ロンドン・シンフォニー・コーラス女声合唱 London Symphony Chorus (women’s voices)
少年合唱/エルサム・カレッジ少年合唱団 Eltham College Boys’ Choir
50年前のハイティンクと言えば、前任者のベイヌムが亡くなってコンセルトヘボウの首席指揮者に抜擢されて未だ間もないころ。コンセルトヘボウの初来日も、ヨッフムというヴェテランの補佐役を伴っての来日でした。
確か2回目の来日公演もヨッフムと二人で日本を廻ったと記憶しますが、私が生身のハイティンクに遭遇したのは、彼が初めて単独でコンセルトヘボウを率いて来日した時だったと思います。
思い出話で恐縮ですが、私は当時仕事に疲れ果ててスピンアウトし、風来坊生活を送っていた頃。親の脛齧りではありませんでしたからチケットはチャンと購入し、暇なので早目に上野に出掛けましたっけ。
時間があるので公園でも散策しようと、今や世界遺産に登録された建物の前に差し掛かった時、向うから歩いてきたのが何とハイティンク。多分40年ほど前の出来事ですからマエストロも若かったでしょうが、こちらも思わぬことに固まってしまったことを覚えています。この時聴いたのはベートーヴェンの8番と、マーラーの第4交響曲だったはず。
今回は同じマーラーでも、最も長大な第3番。ハイティンクは昔から「バカ」(失礼!)の一文字が付く位に真面目な指揮者で、これは当時も現在も変わりません。私には全曲聴き通すにはかなり辛い音楽ですが、それでも聴き終えれば高山を征服したような達成感に満たされます。
メゾ・ソプラノのコナリーは、グラインドボーンのジュリオ・チェーザレで初めて聴いて感銘を受けた歌手(シーザー役)。同じ公演でクレオパトラを歌ったデ・ニースには先日のプロムスのロジーナで再開できましたが、今回はシーザー役との邂逅で懐かしさも一入でした。
マーラーに付いては付け加えることも無いでしょう。いつもは楽章間の拍手が煩わしいプロムスの聴衆ですが、この日はシーンと静まり返っていました。巨匠への敬意でしょうか。
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