「ランスへの旅」

今日はランスに行ってきました。上野経由ですがね・・・。

そう、藤原歌劇団公演、ロッシーニの歌劇「ランスへの旅」です。素晴らしかった!!
ロッシーニ自らがたった4回上演しただけで封印してしまったオペラの再発見と復活上演は、度々話題になってきました。
アバドとウィーン国立歌劇場の来日公演は大いに騒がれたし、2000年には日本ロッシーニ協会が日本人歌手で初演し、それは再演もされていました。
残念ながら私はそのどれをも聴き逃してしまったので、今回の藤原歌劇団による公演を心待ちにしていたわけです。
公演監督の岡山廣幸氏がプログラムに書かれている通り、ウィーンの豪華メンバーによる上演は、この作品に対して誤った思い込みを植え付けてしまったようです。このオペラは豪華キャストを揃えなければいけないという・・・。

しかしそうではない、ということを看破したのは、今回の公演を指揮したアルベルト・ゼッダ氏でした。
氏の書かれた一文が、数日前の日経新聞にも掲載され、期待はいやがうえにも高まっていたのです。
開幕前に解説があるというので早めに出掛けると、今年ペーザロで同じエミリオ・サージ演出を観てきたばかりという朝岡聡氏による、相変わらずの達者なトーク。
このコンサート・ソムリエ氏によれば、あまり筋書きの細かい点は気にせずに歌の素晴らしさを堪能してください、とのこと。何でも最後にはシャルル十世も登場するとか・・・。エッ?

舞台は最初から幕が開いており、海岸リゾート地にあるような白いデッキチェアが10脚ほど並べられているだけのシンプルなもの。
ストーリー自体が劇的に展開するわけでもなく、演出もこれといって主義主張があるわけでもないので、これで充分楽しめました。
通常は合唱団が登場してホテルの従業員を演ずるのですが、今回は主役の面々がこれも兼ねてしまうという、実に経済的な公演です。
あれ、さっきの人が別の役で出てる、などと野暮なことは言わない、言わない。
音楽は、これこそオペラの中のオペラというべきもの。私はロッシーニこそ最高のオペラ作曲家だと考えています。

400年のオペラの歴史の中で、ロッシーニの時代ほど「知」と「情」のバランスが見事に釣り合っていたことはありません。ヴェルディやプッチーニも素晴らしいオペラを書きましたが、私には「情」が強すぎるように感じられるのです。
「ランスへの旅」は、そのロッシーニの最高傑作です。今回、それを確信しました。登場人物は全部で18人ですが、夫々が「歌」の技量を磨き上げなければ歌い切れないもの。
かといって誰が主役というものでもない。敢えて主役は、と言えば、ロッシーニその人でしょうか。
Viva! Rossini。それしかないでしょう。

歌手の一人一人を挙げれば限がありませんが、コリンナの砂川涼子、リーベンスコフ伯爵の五郎部俊朗、ドン・プロフォンドの柴山昌宣、コルテーゼ夫人の野田ヒロ子などが心に残りました。もちろん他の14人も夫々に楽しく、素晴らしかった。

作品の中では、矢張り第7番に相当する14重唱が圧巻でしたね。絶望の中で13人が落胆の気持ちを歌う中、コルテーゼ夫人がパリからの朗報を伝えて一気に気持ちが盛り上がり、14重唱へ・・・。
オペラの常套手段にキチンと則り、ロッシーニ特有のクレッシェンドが沸き立つ中での全員の着替え。
見えそうで見えない楽しい場面で第1部の幕が降りるのですが(実際には緞帳は使いません)、ここまでくると、聴衆は完全にロッシーニの虜となってしまうのでした。
で、シャルル十世はどうだったの?って。
出ましたよ、もちろん。あとは言わない。

 

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