凱旋門フェスティヴァル初日のG戦5鞍
ご存知のように、今年の凱旋門賞ウイークはロンシャン競馬場が改築のため、シャンティー競馬場に舞台を移して開催されます。最も新しい情報では来年もシャンティーで行われる公算が大きいようで、ロンシャンの改築そのものは10月に間に合うようですが、その後のソフト面の対応がギリギリになるので、安全を見てもう1年延ばすのだとか。オーソリティーがOKを出せばその線で進むのでしょう。
さて例年は凱旋門賞を含むGⅠ戦7鞍が日曜日に、土曜日にはGⅡ戦が4鞍組まれてきましたが、今年はカドラン賞が土曜日に移り、10月1日には5鞍のG戦が行われました。レース順に紹介していきましょう。なお、馬場は good 、固くもなく柔らか過ぎず、馬にとっては走り易いコースだったと思われます。
最初に行われたショドネー賞 Prix Chaudenay (GⅡ、3歳、3000メートル)は、3歳限定の長距離戦。10月後半に予定されている仏セントレジャーのトライアルと見て良いでしょう。前走ニエル賞(GⅡ)ではマカヒキの3着に敗れたドーハ・ドリーム Doha Dream ですが、本来長距離に強い血統。ここでは9対10の1番人気に支持されていました。
4番人気(74対10)のマルメロ Marmelo が逃げ、長距離とあって最初はスローに落としていましたが、3ハロン地点からテンポを上げます。これを先行して追走していたドーハ・ドリーム、外から進出して残り300メートルで先頭に立つと、後方2番手から猛追する2番人気(21対10)のムーンシャイナー Moonshiner を短頭差抑えて人気に応えました。3着は8馬身の大差が付いてマルメロの逃げ残り。
勝ったドーハ・ドリームはアンドレ・ファーブル厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗。オーナーのアル・シャカブ・レーシングはこの日、シャラー Shalaah でアスコットのベングー・ステークス(GⅢ)に勝っており、海を隔ててのG戦ダブルとなりました。
ニエル賞の前はナントとヴィシーのリステッド戦に連勝しており、4月には「オルフェーヴル賞」にも勝った馬。3歳シーズン5勝目が、G戦初勝利となりました。
続くロワイヤリュー賞 Prix de Royallieu (GⅡ、3歳上牝、2400メートル)は、ロンシャン競馬場では2500メートルで行われていたもの。スタート地点の関係から100メートル短い設定に変更されました。出走馬は4歳馬1頭に対して3歳馬5頭の6頭、態々アイルランドからデルモット・ウェルド師が送り込んだ4歳馬のアルメラ Almela が13対10の1番人気。
微差2番人気(8対5)のザ・ジュリエット・ローズ The Juliet Rose が逃げ、これを3番手で追走したアルメラが3ハロン地点から競り掛けていきましたが、7ポンドの斤量差(馬齢)もあって前との差は詰まらず、結局はザ・ジュリエット・ローズがアルメラに3馬身差を付ける逃げ切り勝ち。更に4馬身差で後方から追い込んだ3番人気(48対10)のソットヴィル Sotteville が3着でした。
ニコラス・クレメント厩舎、ステファン・パスキエ騎乗のザ・ジュリエット・ローズは、ロヨーモン賞(GⅢ、2400メートル)に勝って仏オークスに挑戦した馬。オークスは距離が短いこともあって13着と奮いませんでしたが、その後はミネルヴァ賞(GⅢ)2着、ヴェルメイユ賞3着と着実に力を付けてきました。ロヨーモン賞の日記で秋から4歳にかけてが勝負と紹介しましたが、予定通り充実の秋を迎えていると言えそうです。
土曜日3つ目のG戦は、ドラー賞 Prix Dollar (GⅡ、3歳上、2000メートル)。ロンシャンでは1950メートルという微妙な距離で行われますが、シャンティーでは切りの良い2000メートルでの施行。9頭が出走し、仏2000ギニー5着、仏ダービー2着、そして前走ムーラン・ド・ロンシャン賞4着とGⅠ戦で堅実な成績を残している3歳馬ザラク Zarak が9対10の断然1番人気。
英国から遠征した7歳馬で3番人気(13対2)のヨーカー Yorker が逃げ、ザラクは後方3番手からの待機策。先行していた2番人気(59対10)のヘシェム Heshem が残り1ハロンで先頭に立ちましたが、4番手を進んだ4番人気(15対2)のポチョムキン Potemkin が追い込み、残り110ヤードでヘシェムを1馬身4分の3差捉える逆転劇。ザラクも最後で末脚を伸ばしましたが、首差届かず3着に終わっています。去年の勝馬で8番人気(30対1)に留まっていたフリー・ポート・ラックス Free Port Lux は9着惨敗。
勝ったポチョムキンは、ドイツでアンドレアス・ヴォーラー師が調教、エドゥアルド・ペドロザが騎乗した5歳馬。4歳の10月(2000メートル)と、今年5歳の6月(1800メートル)にドイツでGⅢ戦を連勝し、前走バーデンのGⅢ戦で2着、前々走はミュンヘンのGⅠ戦(バイエリッシュ・ツーフトレンネン)では3着していました。
そして、今年は土曜日に回ったカドラン賞 Prix du Cadran (GⅠ、4歳上、4100メートル)。ロンシャンでは4000メートルでしたが、今年はスタート地点の関係から更に100メートル伸びたマラソン・レースです。12頭と頭数も揃い、長距離では敵無しの4歳馬ヴァジラバド Vazirabad が6対5の1番人気。前々走サン=クルー大賞典では距離が短く7着に終わっていましたが、去年の仏セントレジャーの勝馬で、前走グラディアトゥール賞(GⅢ)もシッカリ制しての参戦。それでも4000メートル越えの長距離は初体験で、不安はこの点だけでしょうか。
先ず3番人気(17対5)のニアリー・コート Nearly Caught が逃げましたが、前半は中団に付けていた4番人気(11対1)で去年の勝馬ミル・エ・ミル Mille et Mille が、思い切ってレース半ばから先頭に躍り出て去年の再現を目論見ます。これを後方2番手で待機していた本命ヴァジラバドが一気に追い上げ、残り1ハロンで先頭。しかしこれを外から捉えたのが、中間地点では最後方まで下げていた2番人気(49対10)のクエスト・フォー・モア Quest For More 、残り50ヤードで本命馬を短首差交わしての鮮やかな差し切り勝ちでした。最初逃げていたニアリー・コートが巻き返し、5馬身差の3着。連覇を目指したミル・エ・ミルは5着に終わっています。
勝ったクエスト・フォー・モアは、英国のロジャー・チャールトン厩舎が送り込んだ6歳馬で、ジョージ・ベイカー騎乗。前々走ロンスデール・カップ(GⅡ)の勝馬で、前走ドンカスター・カップ(GⅡ)は2着でした。
このGⅠ戦初勝利により、アスコットのロング・ディスタンス・カップ(GⅡ)のオッズは、レース前の12対1から8対1に上がっています。
土曜日の最後はダニエル・ウイルデンシュタイン賞 Prix Daniel Wildenstein (GⅡ、3歳上、1600メートル)。7頭が出走し、仏2000ギニーと仏ダービーで何れも3着、前走ジャック・ル・マロワ賞は5着の3歳馬ディクトン Dicton の成績が上位で17対10の1番人気。
最低人気(19対1)のへロー・マイ・ラヴ Hello My Love が、掛かり気味なのを懸命に抑えての逃げ。同じく掛かり気味に先行した3番人気(18対5)のターリーフ Taareef が残り300メートルで先頭に立つと、逃げたへロー・マイ・ラヴに1馬身4分の3差を付けて優勝。これも先行した4番人気(9対2)のムーンライト・マジック Moonlight Magic が短首差で3着に入り、ディクトンは先行するも急速に脚を無くし、6着敗退に終わりました。
ジャン=クロード・ルジェ厩舎、イオリッツ・メンディザバル騎乗のターリーフは、前々走ダフニス賞(GⅢ)でG戦初勝利を挙げ、前走ギョーム・ドルナーノ賞(GⅡ)は4着だった3歳馬。
面白いのは今期初戦だったフォンテンブロー賞(GⅢ)で、この時は5番人気だったディクトンが4番人気のターリーフに首差で優勝。更に半馬身差で3着したのが、この時は6番人気だったアルマンザー Almanzor (どうやらアルマンゾルと読むのが一般的だそうです)。この辺りの詳細は4月21日の日記で詳しく紹介しています。
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