パリ祭のサプライズ
アイルランド編でもチョッと触れましたが、７月１４日はフランスの革命記念日、バスティーユ・デイで、かつては日本でも「パリ祭」として一般的にも知られていたものです。
銀座にシャンソンが響いた時代は遥か彼方に去ってしまいましたが、近年はパリ大賞典で盛り上がります、というようなことも勿論ありませんが。
パリ大賞典 Grand Prix de Paris (ＧⅠ、３歳牡牝、２４００メートル)は本来ロンシャン競馬場の名物レースですが、今年は改装中のためサン＝クルー競馬場が舞台。good to soft の馬場に１頭が取り消して８頭で争われました。
戦前のように英仏ダービー馬の対決と言う構図は最早見られませんが、今年も各国のダービーに出走したメンバーが揃い、ＧⅠ戦としてのレヴェルは維持されていたと思います。１７対１０の１番人気に推されたのは、仏ダービーこそ８着に終わったものの、オカール賞(ＧⅡ)を快勝したメークタール Mekhtaal 。これを英ダービー８着でグレフュール賞(ＧⅡ)勝馬のクロース・オブ・スターズ Cloth of Stars が１８対５の２番人気で追うという人気。
英ダービー(６着)、愛ダービー(４着)と続けて追加登録料を支払って善戦してきたレッド・ヴァードン Red Verdon が、今回も高額な追加登録料４万３２００ユーロを支払って参戦し、３番人気(６対１)を集めているのも注目です。日本円に換算すれば５００万円ほど。
アイルランドからオブライエン/ムーア・コンビで参戦したジョイント４番人気(７４対１０)のビーコン・ロック Beacon Rock が逃げましたが、これは力不足。メークタールは３番手を追走していましたが、内の２番手で待機した最低人気(１７９対１０)のモント・オーメル Mont Ormel が残り２ハロンで先頭に立つと、後方から追い込むレッド・ヴァードンに１馬身４分の１差を付ける大波乱となりました。５番手から伸びたクロース・オブ・スターズが首差の３着に追い込み、メークタールは更に１馬身差の４着まで。
大穴を開けたモント・オーメルは、ピア・ブランド夫人が管理し、クリスチャン・デムーロが騎乗。スウェーデン産まれのブランド夫人にとってはこれまでで最高のタイトル獲得となりました。ミルコの弟クリスチャンは今年、ラ・クレソニエール La Cressonniere でフランスの牝馬二冠騎手を達成したばかり、今年三つ目の仏ＧⅠタイトル奪取です。
陣営ですら勝つとまでは思わなかったモント・オーメル、Ｇ戦は今期初めにフォンテンブロー賞(ＧⅢ)６着があるのみで、前走はコンピエーニュ競馬場の不良馬場で２０００メートルのリステッド戦に勝ったばかり。いきなりのＧⅠ制覇で、凱旋門賞のオッズ３３対１が出されました。
血統を遡れば５代母リカラ Licara が仏ダービー馬アカマス Acamas 、サン＝クルー大賞典のアカラッド Akarad 、凱旋門賞のアキーダ Akiyda の姉妹に当たるというファミリーで、長くアガ・カーンの牝系から出たもの。同馬はアガ・カーンの所有ではなく、この牝系から出た久し振りのＧⅠ馬ということになります。流れから言っても凱旋門賞を目指すことになるでしょう。
一方三度の追加登録でもクラシックに勝てなかったレッド・ヴァードン、９月には最後のクラシックとなるセントレジャーで夢を目指すことになります。
この日はもう一鞍、モーリス・ド・ニエィユ賞 Prix Maurice de Nieuil (ＧⅡ、４歳上、２８００メートル)も行われました。これも本来ならロンシャン競馬場のカード。
６頭のステイヤーが出走し、去年のヴェルメイユ賞(ＧⅠ)でトレーヴ Treve の２着したカンダリーヤ Candarliya がイーヴンの１番人気。
５番人気(９対１)のワルツァータクト Walzertakt が逃げましたが、直ぐに２番人気(３１対１０)でアスコット・ゴールド・カップ４着に逃げ粘ったミル・エ・ミル Mille et Mille が交わしての逃げ切り策。残り２ハロンで２番手の外を追走していた３番人気(１１対２)のローンチド Launched が替って先頭に立ちましたが、４番手で追走したカンダリーヤが期待通りの末脚を発揮し、ローンチドに２馬身差を付けて見事人気に応えました。５番手から追い込んだ４番人気(６８対１０)のナウ・ウィー・キャン Now We Can が短首差の３着。
アガ・カーン所有、アラン・ド・ロワイヤー＝デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のカンダリーヤは、去年のロワイヤリュー賞(ＧⅡ)の勝馬で、今期はバルべヴィユ賞(ＧⅢ)２着、コリダ賞(ＧⅡ)３着と徐々に調子を上げ、３戦目で今季初勝利。ヨークシャー・オークスからヴェルメイユ賞へと歩を進め、結果次第では凱旋門賞というローテーションになると思われます。
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