ブリーダーズ・カップに向けてトライアル続々

これから10月1日土曜日のアメリカ競馬レポートです。1か月後に迫ったブリーダーズ・カップに向け、優先出走権を掛けたGⅠ戦が続々。
ところで日曜日に中山競馬場で行われるスプリンターズ・ステークスも、勝馬にはBCスプリントへの優先出走権が付与される、って知ってましたか? 折角のチャンスですから勝馬には是非チャレンジしてもらいたいものです。宝塚記念のように無視し続けて対象から外されるのじゃみっともないですからね。

さて土曜日はベルモント・パーク競馬場から行きましょう。G戦は5鞍、GⅠは3鞍、BC対象は2鞍です。最初のジョー・ヒルシュ・ターフ・クラシック Joe Hirsh Turf Classic (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)はBC対象で、もちろん勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。この日は生憎の雨、馬場発表は yielding でしたが、実際は heavy という印象でした。当初から4頭立てと少なく、アメリカの芝馬では敵無しの感あるフリントシャー Flintshire が1対5の圧倒的1番人気。
レースは1番枠から出た3番人気(9対1)のエクトー Ectot が逃げ、フリントシャーは最後方4番手追走。終始1馬身ほどのリードで逃げたエクトー、第3コーナーで2番手まで押し上げたフリントシャーに付け入る余裕を与えず、そのまま大本命に5馬身差を付けて逃げ切ってしまいました。3番手を進んだ4番人気(11対1)のトゥワイライト・エクリプス Twilight Eclipse が1馬身4分の3差で3着。
勝馬のオーナー、アル・シャカブ・レーシングは、この日英仏のG戦に加えてアメリカでもG戦勝ちと大当たりでした。トッド・プレッチャー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のエクトーは、2歳時にフランスのクリテリウム・インターナショナルを制したGⅠ馬。2014年にニエル賞(GⅡ)に勝って以来の勝ち星で、アメリカでは3戦目での初勝利となりました。アメリカ・デビューのサラトガ一般ステークス(ルアー・ステークス)で4着し、前走やはりサラトガのアローワンス戦で2着。権利を得て、もちろんBCターフに挑みます。明らかに馬場が敗因のフリントシャーも、次は当然BCターフ。

続いてギャラント・ブルーム・ハンデキャップ Gallant Bloom H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。ダートコースは muddy と泥田状態で、1頭が取り消し6頭立て。前走バレリーナ・ステークス(GⅠ)は5着敗退に終わりましたが、今期既にG戦に2勝しているポールアズシルヴァーライニング Paulassilverlining が9対5の1番人気。
逃げる5番人気(11対1)モマミーアマリア Momameamaria の3番手を追走したポールアズシルヴァーライニング、第4コーナーで2番手に上がると外に出し、4番手追走から内を衝いた4番人気(4対1)のクェゾン Quezon に4分の3差を付けて人気に応えました。後方2番手から追い込んだ3番人気(7対2)のウェイヴェル・アヴェニュー Wavell Avenue が1馬身半差で3着。
ミシェル・ネヴィン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のポールアズシルヴァーライニングは、ヴァグランシー・ハンデ(GⅢ)、ディスタッフ・ハンデ(GⅢ)に次ぐ今期3つ目のG戦勝利。このレースはBC対象ではありませんが、次走はBCフィリー・アンド・メア・スプリントを目指すとのことでした。

ベルモントの三つ目は2歳の芝戦、ピルグリム・ステークス Pilgrim S (芝GⅢ、2歳、8.5ハロン)。馬場が悪いこともあって2頭が取り消し9頭立て。前走の勝ち方が最も印象的だったオスカー・パフォーマンス Oscar Performance が8対5の1番人気。ところがスタートを嫌った馬が出走除外となり、更に1頭が取り消しての8頭立て。
そのオスカー・パフォーマンスが重馬場を意識したこともあってスタートからの逃げ。直線も独走に持ち込むと、漸く後方3番手から追い込む3番人気(6対1)のジェイ・エス・チョイス J. S.Chice に6馬身差を付ける圧勝でした。4分の3馬身差で、最後方から追い込んだ4番人気(7対1)のキッテンズ・キャット Kitten’s Cat が3着。
ブライアン・リンチ厩舎、ホセ・オルティス騎乗のオスカー・パフォーマンスは、デビュー戦こそ6着だったものの、2戦目となる前走8月20日のサラトガ(8.5ハロン)で2着以下に10馬身4分の1差を付けて初勝利。これで3戦2勝となり、もちろんG戦は初勝利です。

次いで短距離GⅠのヴォスバー・ステークス Vosburgh S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。勝馬にはBCスプリントへの優先出走権が付与されるので、日本のスプリンターズ・ステークスと並ぶ注目の一戦です。馬場が悪く、出れば本命のエー・ピー・インディアン A.P.Indian が取り消したため、混戦の7頭立て。ドバイのゴールデン・シャヒーンで2着惜敗以来となるエックス・ワイ・ジェット X Y Jet が6対5の1番人気。
そのエックス・ワイ・ジェットが逃げましたが、馬場か休養明けか、後方2番手から大外を追い込んだ3番人気(4対1)のジョーキング Joking に並ばれると後退する一方。ジョーキングが後方3番手から連れて追い込んだ4番人気(7対1)のストールウォーキン・デュード Stallwalkin’ Dude に1馬身差を付ける波乱となりました。更に1馬身差で3番手を進んだ同じ4番人気(7対1)のウィークエンド・ハイドアウェイ Weekend Hideaway が3着。
チャールトン・ベイカー厩舎、マニュエル・フランコ騎乗のジョーキングは、これがGⅠ戦初勝利となる7歳せん馬。今期は3連勝でトゥルー・ノース・ステークス(GⅡ)に勝った後、3か月半の休養明けでの快勝でした。同じ休み明けでも本命馬とは明暗を分ける結果になっています。

ベルモントの最後はベルデイム・ステークス Beldame S (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。GⅠ戦ながらBCの対象にはなっていません。7頭が出走し、顕実の見本のようなフォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled が3対5の1番人気。
先ず6番人気(21対1)のパオラ・クィーン Paola Queen が逃げ、前半は5番手に控えていたフォレヴァー・アンブライドルドが大外を通って第4コーナーで先頭に立つと、3半手から伸びた5番人気(14対1)のタイガー・ライド Tiger Ride に2馬身4分の1差を付けて格の違いを見せ付けました。4番手を進んだ4番人気(9対1)のペンウィズ Penwith が更に2馬身4分の3差で3着。
ダラス・スチュアート厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のフォレヴァー・アンブライドルドは、1月のヒューストン・レディーズ・クラシック(GⅢ)と4月のアップル・ブロッサム・ステークス(GⅠ)を連勝し、6月にはベルモントのオグデン・フィップス(GⅠ)で2着、8月のサラトガでもパーソナル・エンサイン(GⅠ)で3着し、今期5戦は何れも掲示板。優先的に権利は得ずとも、BCディスタッフに向かうことに間違いはありません。

次はチャーチル・ダウンズ競馬場のアック・アック・ステークス Ack Ack S (GⅢ、3歳上、8ハロン)を。wet fast という馬場に6頭が出走し、去年の古馬牡馬チャンピオン・スプリンターのランハッピー Runhappy が1対5の圧倒的1番人気。今年は短距離から更にマイラーのチャンピオンを目指してここをBCへの試走に選んできました。
そのランハッピーが逃げ切る構えでハナに立ちましたが、前半は後方2番手に待機した2番人気(9対2)のトムズ・レディー Tom’s Ready が一気に追い上げ、同じく4番手から伸びた3番人気(6対1)のアイアン・フィスト Iron Fist に半馬身差を付けての差し切り勝ち。3番手を進んだ4番人気(12対1)のスキアヴァレルリ Schiavarelli が1馬身差で3着に入り、ランハッピーは更に1馬身差の4着に終わり、1マイル克服成らず。
ベルモントのベルデイムも制したダラス・スチュアート厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のトムズ・レディーは、7ハロンのウッディー・スティーヴンズ・ステークス(GⅡ)に勝っている3歳馬で、今年のケンタッキー・ダービーは12着でした。前走キングズ・ビショップ(GⅠ)9着からの巻き返しです。

そして昨日は、サンタ・アニタ競馬場でもGⅠ戦5連発の豪華版でした。全てが勝馬にBCへの出走権が与えられる、正にトライアル祭りでもあります。レース順に行くと、先ずフロントランナー・ステークス FrontRunner S (GⅠ、2歳、8.5ハロン)。BCジュヴェナイルの対象レースで、 fast の馬場に7頭立て。デル・マーのフューチュリティーを制したクリムト Klimt が当然ながら1対5の圧倒的1番人気。
レースは3番人気(11対1)のゴームリー Gormley が飛び出し、クリムトは最後方から。しかし逃げ馬との差が余りにも付き過ぎたこともあり、クリムトが懸命に逃げ馬を追いましたが、結局はゴームリーがクリムトに3馬身差を付けて逃げ切ってしまいました。4馬身半差で4番手を進んだ2番人気(7対2)のストレート・ファイア Straight Fire が3着。
ジョン・シレフス厩舎、これがこのレース4勝目というヴィクター・エスピノザ騎乗のゴームリーは、9月4日にデル・マーでデビュー勝ち(6.5ハロン、2着に4馬身4分の1差)したばかり。新馬からいきなりのGⅠ挑戦で2連勝となりました。フロントランナーの勝馬はここ2年、アメリカン・フェイロー American Pharoah とナイクィスト Nyquist と何れも翌年のダービーを制しています。ゴームリーがこれに続くのか、クリムトが巻き返すのか、BCに注目しましょう。

2つ目のオウサム・アゲン・ステークス Awesome Again S (GⅠ、3歳上、9ハロン)は、もちろんBCクラシックが対象。2頭が取り消して5頭立てとなり、スタートが切られる前からカリフォルニア・クローム California Chrome とドルトムント Dortmund のマッチレースの様相。前者が2対5の1番人気、後者は8対5の2番人気で、残る3頭は全て25対1という脇役にすぎません。
当然ながらレースもシナリオ通り。逃げるカリフォルニア・クロームをドルトムントが半馬身差でマークする展開で、3番手以下は10馬身以上の差が付けられていました。結局そのままカリフォルニア・クロームがドルトムントに2馬身4分の1差を付けて逃げ切り、脇役の中から3番手を進んだウイン・ザ・スペース Win the Space が差を詰めて4馬身半差の3着。レースとしては全く面白味のないものでした。
アート・シャーマン厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のカリフォルニア・クロームについては改めて付け加えることもないでしょう。今年のBCクラシックの中心馬で、3歳馬が何処まで肉薄できるかが見所と言えましょうか。もしカリフォルニア・クロームがBCクラシックに勝てば、パシフィック・クラシック、オウサム・アゲンとの三冠達成ということになり、100万ドルのボーナスが支給されることにもなっています。

続いてはBCフィリー・アンド・メア・ターフのトライアルとなるロデオ・ドライヴ・ステークス Rodeo Drive S (芝GⅠ、3歳上牝、10ハロン)。firm の芝コースに2頭が取り消して12頭立て。クラシックとは一転してアメリカ代表は例年同様混戦模様です。GⅢ勝馬でビヴァリー・ディー・ステークス(芝GⅠ)で3着しているジペッサ Zipessa が2対1の1番人気。
2番人気(5対1)のアヴェンジ Avenge がポンと飛び出し、スローに落としての絶妙な逃げ。後続馬も懸命に差を詰めようとしましたが、結局は2番手を追走した本命ジペッサに4分の3差を保ったままの逃げ切り勝ち。3着も3番手を追走した6番人気(10対1)のフレンジファイド Frenzified がそのまま1馬身4分の1差で流れ込み、典型的な行った行ったの競馬になってしまいました。
リチャード・マンデラ厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のアヴェンジは、前走ジョン・C・メイビー・ステークス(芝GⅡ)でG戦初勝利を記録した4歳馬で、その前のアローワンス戦から数えて3連勝。当然ながらBCを目指すことになるでしょうが、巧くスローの逃げに持ち込めるかがカギになりそう。

そしてゼニヤッタ・ステークス Zenyatta S (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。BCディスタッフへの優先出走権が掛かりますが、僅か5頭立てとなったのは、当ブログの主役でもあるビホールダー Beholder の4連覇が掛かっているから。もちろん2対5の圧倒的1番人気に支持されています。しかし前回、クレメント・L・ヒルシュ(GⅠ)での対決でビホールダーを半馬身差で破ったステラー・ウインド Stellar Wind が今回も立ちはだかり、こちらは2対1で2番人気。
いつものようにハナを切ったビホールダー、今回もステラー・ウインドが執拗に絡み、第3コーナーからは完全に2頭のマッチレース。前回の勝利で一皮剝けたのか、今回もステラー・ウインドがビホールダーを首差抑えて前回のビデオ・テープを見るような結果に。3着は何と、11馬身4分の3差が付いて、4番手を進んだ3番人気(9対1)でアルゼンチン産馬のヴィル・ドリ Vale Dori が入りました。
ジョン・サドラー厩舎、この日ハットトリックとなるヴィクター・エスピノザ騎乗のステラー・ウインドは、7月のクレメント・L・ヒルシュ、去年のサンタ・アニタ・オークスに続く3つ目のGⅠ制覇。ディスタッフではなくクラシックに向かうのではないかと噂されているビホールダーでしたが連敗では黙っていないでしょう。ディスタッフで2強の3度目の対決が見られそうです。

やっと辿り着いた土曜日の最後は、シャンデリア・ステークス Chandelier S (GⅠ、2歳牝、8.5ハロン)。フロントランナーの牝馬版で、BCジュヴェナイル・フィリーズが対象です。1頭が取り消して11頭立て、8月デル・マーのデビュー戦を5馬身差で圧勝したザッパーカット Zapperkat が5対2の1番人気。
レースは1番枠から出た6番人気(9対1)のウイズ・オナーズ With Honors が逃げ、ザッパーカットは中団から早めに4番手進出。しかし2番手を追走した4番人気(7対1)のノーティッド・アンド・クオーティッド Noted and Quoted が第4コーナーで外から並び掛けると、粘るウイズ・オナーズに半馬身差を付けて優勝。ザッパーカットも追い上げましたが、更に3馬身4分の3差の3着に終わりました。
これがこのレース10勝目となるボブ・バファート厩舎、同じく4勝目のラファエル・べハラノ騎乗のノーティッド・アンド・クオーティッドは、前走デル・マー・デビュタント(GⅠ)では4着に敗れていた馬。8月7日、2戦目のデル・マーで2着に9馬身半差を付けて初勝利を挙げ、次いで挑んだデビュタントが4着。これで4戦2勝、ステークス初勝利がGⅠ制覇となります。

 

 

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