ヘッド/グィヨン/ウェルザイマー家のGⅠダブル

アイルランドのGⅠ戦2鞍に続き、今度はフランスのGⅠ戦2鞍に行きましょう。5月24日にロンシャン競馬場の good の馬場で行われたG戦3鞍、こちらはレース順に取り上げていきましょう。

最初はサン=タラリ賞 Prix Saint-Alary (GⅠ、3歳牝、2000メートル)、もちろん仏オークスへの最も信頼されるトライアルです。9頭が出走し、前走ペネロープ賞(GⅢ)に勝って2戦2勝のクィーンズ・ジェウェル Queen’s Jewel が4対5の断然1番人気。
そのクィーンズ・ジェウェル、スタートで出遅れましたが鞍上マクシム・グィヨンは慌てず騒がず、落ち着いて中団まで順位を上げます。2番人気(43対10)のヴァラナ Varana が逃げましたが、本命馬が仕掛けたのはフォルス・スタートに入ってから。馬5頭分の外を回って残り2ハロンで先頭に立つと、最後方から追い上げる6番人気(165対10)のウィキーラ Wekeela に3馬身差を付ける圧勝。更に6馬身の大差が付いて、3着には3番人気(74対10)のオロルダ Olorda が入りました。

フレディー・ヘッド厩舎、ウエルザイマー兄弟が所有するクィーンズ・ジェウェルは、これで3戦無傷のまま仏オークスに向かいます。勝時計の2分0秒87はレース・レコード、相手関係次第でしょうが、かなり固いオークス本命という存在でしょうか。

GⅠ2連発の2つ目はイスパハン賞 Prix d’Ispahan (GⅠ、4歳上、1850メートル)。当初5頭立てでしたが、ポリアンナ Pollyana が取り消して4頭立て。今期デビューのガネー賞(GⅠ)でアル・カジーム Al Kazeem を破って優勝した9歳の古豪シリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles と、4歳秋になって才能が開花したソロウ Solow の一騎打ちとなり、後者が3対5の1番人気、前者は17対10で2番人気。
レースは3番人気(74対10)のガイロ・チョップ Gailo Chop が逃げ、シリュスが2番手、ソロウは3番手追走。最後は2頭の叩き合いになると期待されましたが、何故かシリュス・デ・ゼーグルはズルズルと下がってクリストフ・スミオンは追うのを止めてしまいます。一方のソロウは快調に抜け出すと、逃げるガイロ・チョップを1馬身半差捉えて人気に応えました。2馬身差で最後方を進んだ4番人気(124対10)のスパークリング・ビーム Sparkling Beam が3着に上がり、更に2馬身でシリュス・デ・ゼーグル。
レース後、スミオン騎手の報告では、シリュスはレース途中で右後脚の蹄鉄が破損したとのことで、大事を取って競争を中止するような形になった由。バランド=バルブ調教師も“言い訳をするわけではないが、蹄鉄の破損は事実”とアクシデントを認めています。

勝ったソロウは、サン=タラリ賞に続いてフレディー・ヘッド厩舎、マクシム・グィヨン騎乗、ウェルザイマー兄弟の持ち馬。去年のこの日にはヴィコンテッス=ヴィジエ賞で敗退していましたが、1マイルの距離を中心とする路線に方向転換してからは、何と6連勝。凱旋門賞ウィークのダニエル・ウイルデンシュタイン賞(GⅡ)に勝ってシーズンを終え、今期は3月にシャンティーのタペタ・コース(一般戦)からドバイのGⅠ(ドバイ・ターフ、ザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby を破る)と連勝してGⅠ戦にも連勝となる5歳せん馬です。
この後は、せん馬にも出走権のあるロイヤル・アスコットのクィーン・アン・ステークスでGⅠ戦3連勝を目指します。オッズは6対4に上がり、現時点の1番人気。

ロンシャンの最後は、長距離のヴィコンテッス=ヴィジエ賞 Prix Vicomtesse Vigier (GⅡ、4歳上、3100メートル)。これまたロイヤル・アスコットの大一番、ゴールド・カップを目指す馬にとっては絶好のトライアルでもあります。
英国から参戦する予定だったボッティ厩舎のタック・ド・ボアストロン Tac de Boistron が馬場が固過ぎる(日本でいう稍重にも拘わらず)という理由で取り消し、6頭立て。入れ替わって9対5の1番人気に支持されたのは、前走ロンシャンで2400メートルのリステッド戦に勝っているグレアリング Glaring でした。

しかし主導権を握ったのは2番人気(2対1)のバサイロン Bathyrhon 、後続を尻目に堂々の逃げ切り勝ちです。2番手を追走していたグレアリングと3番人気(33対10)のミル・エ・ミル Mille et Mille はそのまま同時に流れ込み、勝馬から2馬身半差の2着同着でした。
ピア・ブランド夫人が管理するバサイロンは、この日GⅠを連勝したグィヨン騎乗で、同ジョッキーはG戦総なめのハットトリック完成です。元々バサイロンは去年グラディアトゥール賞(GⅢ)に勝ち、カドラン賞(GⅠ)も2着していた5歳のゴールド・カップ候補。今期はメイダンの3200メートル戦で試走し、7着に終わって人気を落としていました。アスコットの名物レースを制するのが夢のブランド女師にとっては、オッズが10対1に上がる絶好のチャンスが訪れたようです。

 

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