ブリーダーズ・カップに続々名乗り

休暇中のアメリカ競馬、8月4日は3つの競馬場で4つのグレード戦が行われました。速報的な意味合いは無いので、一つ一つ実証していくことに・・・。

最初にマウンテニアー・カジノ競馬場の第43回ウエスト・ヴァージニア・ダービー West Virginia Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)を取り上げます。この競馬場のG戦はこれが唯一、詳しいことは去年の日記を参照して下さい。ダート・コースの馬場状態は fast 、1頭が発走除外となり、9頭立て。去年の2歳チャンピオンで、ケンタッキー・ダービー9着のハンセン Hansen が3対5の断然1番人気に推されていました。ダービー敗退のあとアイオワ・ダービーをぶっちぎっての参戦です。
ハンセンはいつものスタイルで逃げ切りを図りますが、今回は悪役に徹したように伏兵(37対1)のヒーロー・オブ・オーダー Hero of Order が執拗に競り掛けます。何とか絡む馬を振り切って直線半ばまで先頭を維持していましたが、流石に堪えたか3番手を進んだ2番人気(9対2)マチョ・マチョ Macho Macho の追い込みを凌ぎ切れず後退。後続2頭にも交わされて4着敗退です。半馬身差2着は内から伸びたバーボン・カレッジ Bourbon Courage 、更に半馬身でコールド・トゥー・サーヴ Called to Serve が3着。この日はハンセンの日ではなかったということでしょう。簡単に負ける相手とも思われません。
漁夫の利を得た感のあるマチョ・マチョですが、調教するスティーヴン・アスムッセン師はこのレース4勝目と最多勝利調教師。鞍上はコーリー・ナカタニ。G戦は初勝利ですが、6月16日チャーチル・ダウンズのマット・ウイン・ステークス(GⅢ)では3着、前走モンマス・パークの一般ステークス(ロング・ブランチ・ステークス)でも2着しての参戦でした。

続いてはサラトガ競馬場からGⅠの2連戦です。最初は3歳牝馬の短距離戦、プライオレス・ステークス Prioress S (GⅠ、3歳牝、6ハロン)。ここも馬場は fast 、出れば2番人気になるはずのジャマイカン・スモーク Jamaican Smoke が出走を取り消し、前走で初黒星を喫するまでは無敗の6連勝を記録したアガーヴェ・キス Agave Kiss が4対5の断然1番人気に支持されていました。
スピードに勝る本命馬、ここでも無理なくハナを切ってレースを支配しましたが、何故か最後の70ヤードで失速。替って3番手を進んだ2番人気(3対1)のジュディー・ザ・ビューティー Judy the Beauty が先頭に立った所、最後方から徐々に進出し、馬3頭分の外から追い込んだ3番人気(5対1)のエマズ・アンコール Emma’s Encore がハナ差で差し切っての優勝。アガーヴェ・キスは1馬身4分の3差遅れの連敗に終わりました。
エマズ・アンコールは、前走ヴィクトリー・ライド・ステークス(GⅢ)を39対1の大穴で勝ち、アガーヴェ・キス(5着)に初黒星を付けた馬。GⅠ初勝利で、前走がフロックではなかったことを証明して見せました。
同馬を管理するアレン・ジャーキンス調教師は今年80歳、2007年のパーソナル・エンサイン・ステークス以来のGⅠ勝利となりました。往年の賑わいが戻ってきた印象。鞍上はジュニア・アルヴァラード騎手、前日のオノラブル・ミス・ステークスに続くG戦優勝です。

続いてのGⅠはホイットニー・インヴィテーショナル Whitney Invitational (GⅠ、3歳上、9ハロン)、勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が与えられる重要なステップ・レースでもあります。9頭の強力なメンバーが揃い、スティーヴン・フォスター・ハンデ、サンタ・アニタ・ハンデと既にGⅠを2勝しているロン・ザ・クリーク Ron the Creek が120ポンドのトップ・ハンデながら5対2の1番人気。
レースは32対1の伏兵エンドースメント Endorsement が逃げ、6対1のトリックマイスター Trickmeister が2番手。3番手に上がってきた5番人気(7対1)のフォート・ラーンド Fort Larned が直線で鋭く抜け、一時は4馬身ほどのリード。安全圏を確認してペースを緩めたため着差は縮まりましたが、馬7頭分の大外を回って追い上げた本命ロン・ザ・クリークに1馬身4分の1差を付ける快勝です。頭差3着にロン・ザ・クリークと同じウイリアム・モット厩舎のフラット・アウト Flat Out が追い込んでモット師の2・3着。
イアン・ウイルケス厩舎のフォート・ラーンドは、前走6月30日プレーリー・メドウズのコーンハスカー・ハンデ(GⅢ)に続くG戦連勝でGⅠは初制覇。スティーヴン・フォスターではロン・ザ・クリークの8着に敗退していましたが、ここで雪辱を果たしました。騎乗したブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス・ジュニアは、これがサラトガでの初騎乗となるケンタッキーを本拠とするジョッキー。初騎乗でGⅠを獲る快挙達成です。
BCの登録料に加えてカリフォルニアへの遠征費1万ドルを獲得したフォート・ラーンド陣営、次走は9月1日のウッドワード・ステークス(GⅠ)が目標になるでしょう。

土曜日最後はデル・マー競馬場からクレメント・L.ヒルシュ・ステークス Clement L. Hirsch S (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)、これまたGⅠの最高格レース。サラトガのホイットニーと同じくBCへの優先出走権と遠征費用が与えられるレースで、こちらはレディーズ・クラシックが対象です。ポリトラック・コースは fast 、8頭立て。今年既にGⅠに勝っているインクルード・ミー・アウト Include Me Out が8対5の1番人気。チリのセントレジャー馬で、これがアメリカ・デビューとなるアマーニ Amani が2対1の2番人気で続きます。
レースは3番人気(5対2)スイッチ Switch が逃げ、直線へ。1番枠スタートから内を利して徐々に順位を上げてきた本命インクルード・ミー・アウトが、外から襲い掛かるように2番手で最後のコーナーを回り、外から追い込むスター・ビリング Star Billing を首差抑えて期待に応えました。1馬身半差3着には、最後方から進んだアマーニが食い込み、コースへの適性を証明。逃げたスイッチが4着。福永祐一が騎乗したクウェイントリー Quaintly は、ブービー人気(39対1)での5着。2枠スタートから終始内ラチ沿いを採り、後方2番手からの追い込みは好走の部類でしょう。
ロナルド・エリス厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のインクルード・ミー・アウトは、今春サンタ・アニタでラ・キャニャーダ・ステークス(GⅡ)とサンタ・マルガリータ・ハンデ(GⅠ)に連勝。前走ヴァニティー・ハンデ(GⅠ)を本命で2着してここに参戦してきました。サンタ・アニタでも実績があり、BC出走権を得たインクルード・ミー・アウト、今年のBCの有力候補の1頭に名乗りを上げました。

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