ケンタッキー・オークスの本命は、この馬

3月第1週のアメリカ競馬はニューヨーク、フロリダ、カリフォルニアの3州で合計10鞍のG戦。特にフロリダのガルフストリームでは8鞍のG戦が組まれ、中でもダービーへの重要なステップとなるファウンテン・オブ・ユース・ステークスがメインとなります。

そのフロリダに先立って、最初はニューヨークのアケダクト競馬場で行われたガッサム・ステークス Gotham S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)を取り上げましょう。ダービーへ向けて50ポイントのトライアル、東海岸のダービー候補決定戦でもあります。fast の馬場に3頭が取り消して7頭立て。今年に入ってアケダクトのトライアル、ジェローム・ステークス(GⅢ)とウィザーズ・ステークス(GⅢ)を連勝したエル・アリーブ El Areeb が当然ながら2対5の断然1番人気。
本命エル・アリーブ、スタートからハナに立っての逃げ作戦でしたが、今回は5番人気(13対1)トゥルー・ティンバー True Timber に絡まれてやや苦しい展開。これが堪えたか、先頭で直線に入りながらも4番手を進んだ2番人気(6対1)のジェイ・ボーイズ・エコー J Boys Echo に外から並ばれると手応え無く後退。そのままジェイ・ボーイズ・エコーが、3番手を追走していた3番人気(7対1)のクラウド・コンピューティング Cloud Computing に3馬身半差を付ける快勝。エル・アリーブは更に7馬身半もの大差を付けられる3着に沈んでしまいました。
デール・ロマンス厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のジェイ・ボーイズ・エコーは、去年2戦目にキーンランドで初勝利を挙げ、11月のデルタ・ダウンズ・ジャックポット・ステークス(GⅢ)は4着に終わっていた馬。前走2月のウィザーズ・ステークスではエル・アリーブの3着に食い込み、今回の逆転劇に繋げました。次は4月8日のウッド・メモリアルか、同日のブルー・グラス・ステークスを叩いてケンタッキーに向かう予定です。ところでウッド・メモリアルとブルー・グラス、長年GⅠ戦のトライアルとして知られてきましたが、今年は共にGⅡ戦に降格することが決定しました。

そして1日G戦8鞍のガルフストリーム・パーク競馬場に行きましょう。レース順に解雇して、先ずはヒアカムズザブライド・ステークス Herecomesthebride S (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。3歳戦ですが firm の芝コース、7頭が出走し、前走BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフで2着したコーステッド Coasted が6対5の1番人気。
6番人気(30対1)の伏兵コンクエスト・ハードキャンディー Conquest Hardcandy が逃げ、コーステッドはレース半ばで4番手に押し上げます。ここから進出を開始した本命馬、第4コーナーで先頭に立ち直線に入りましたが、離れず最後方に待機していた2番人気(9対5)のドリーム・ダンシング Dream Dancing が直線では本命馬の内を衝き、最後は首差捉えての鮮やかな差し切り勝ち。4分の3馬身差で、後方2番手から伸びた5番人気(11対1)のパーティー・ボート Party Boat が3着に食い込んでいます。
このレース2連覇となるマーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のドリーム・ダンシングは去年8月、2戦目で初勝利。その後ダート・コースのG戦に3度挑戦しましたが、4着が最高でした。今期初戦、ここガルフストリームの芝アローワンス戦に勝っており、これで2連勝でG戦初勝利となります。

次はフレッド・W・フーバー・ハンデキャップ Fred W. Hooper H (GⅢ、4歳上、8ハロン)。去年は2月第1週に行われていましたが、今年は1か月遅れての施行。fast の馬場に8頭が参戦し、一昨年のシャンペン・ステークス(GⅠ)の覇者で未だこれが8戦目というグリーンポイントクルセーダー Greenpointcrusader が2対1の1番人気。
5番人気(11対1)のミスター・ジョーダン Mr. Jordan と2番人気(3対1)のバード・ソング Bird Song が激しく先頭を争いましたが、第3コーナーで主導権を奪ったバード・ソングが、3番手を追走した4番人気(7対2)のレルム Realm に1馬身4分の1差を付けての事実上の逃げ切り勝ち。4分の3馬身差で4番手に付けていた6番人気(11対1)のテイル・オブ・サヴァル Tale of S’avall が3着に入り、人気のグリーンポイントクルセイダーは5番手の儘、7着惨敗に終わりました。
イアン・ウイルケス厩舎、ヒアカムズザブライドに続いてG戦連勝となるジュリアン・ルパルー騎乗のバード・ソングは、前走ガルフストリームでハルズ・ホープ・ステークス(GⅢ)で2着だった4歳牡馬。前々走は11月のチャーチル・ダウンズのアローワンス戦に勝っており、去年8月にはサラトガでGⅠ戦(キングズ・ビショップ・ステークス)に挑戦(8着)したこともありました。これがG戦初勝利。

続いては古馬牝馬の芝戦、ザ・ヴェリー・ワン・ステークス The Very One S (芝GⅢ、4歳上牝、9.5ハロン)。2頭の取り消しがあって6頭立てとなり、前走1月28日のラ・プレヴォヤンテ・ハンデ(芝GⅢ)を1番人気で制したサフューズド Suffused が4対5の1番人気。
去年の勝馬で2番人気(8対5)のオロルダ Olorda が連覇を狙って逃げましたが、最後方で待機したサフューズドが第4コーナーで外から先頭に立つと、2番手を粘る最低人気(23対1)のクワイエット・キッテン Quiet Kitten に5馬身の大差を付ける圧勝で人気に応えました。4分の3馬身差で3番手追走の5番人気(21対1)ペイジ Paige が3着に入り、逃げたオロルダは最下位に敗退し、連覇成らず。
ウイリアム・モット厩舎、ホセ・オルティス騎乗のサフューズドは、前走で紹介したように、英国で3勝した後にアメリカに転じた5歳馬。去年のサラトガでグレン・フォールズ・ステークス(芝GⅢ)に勝ったのに加え、これがアメリカのG戦3勝目となりました。

次も芝戦、3歳馬によるパーム・ビーチ・ステークス Palm Beach S (芝GⅢ、3歳、8.5ハロン)は、ヒアカムズザブライドの牡馬版に相当します。9頭が出走し、前走BCジュヴェナイル・ターフで4着の実績があるタイカンデローガ Ticonderoga が5対2の1番人気。
7番人気(24対1)のセイリング・ホーム Sailing Home が逃げましたが、あわてず騒がず後方2番手の内を追走していたタイカンデローガ、直線では内から外に持ち出すと、前を一気に捉え、2番手から抜けた4番人気(5対1)のキッテンズ・キャット Kitten’s Cat に1馬身差を付ける横綱相撲で期待に応えました。更に1馬身差で最後方から追い込んだ2番人気(5対2)のスナップ・デシジョン Snap Decision が3着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のタイカンデローガは去年9月、2戦目のベルモントで初勝利。10月にはキーンランドのバーボン・ステークス(芝GⅢ)で2着し、BCにチャレンジ。今期初戦でG戦を初制覇し、目標はベルモント・ダービー(芝GⅠ)になるでしょう。ところでタイカンデローガも、ヒアカムズザブライドのドリーム・ダンシングも、共に父はタピット Tapit 。如何にも芝向きの血統ではあります。

そして、この日の準メインとも呼ぶべきダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S (GⅡ、3歳牝、8ハロン)。オークスに向けた重要な50ポイントレースで、何と14頭の参戦を見ました。順調に2歳G戦を勝ち進んできたミス・スカイ・ウォリアー Miss Sky Warrior が2対1の1番人気。
ハナ争いが激しくなりましたが、向正面では7番人気(19対1)のジョーダンズ・ヘニー Jordan’s Henny が先頭。これを3番手でジックリ見ていた本命馬、直線で着実に逃げ馬を捉えると、粘るジョーダンズ・ヘニーに半馬身差を付けてシーズン初戦を快勝しました。5番手から追い込んだ5番人気(9対1)のサマー・ラック Summer Luck が首差の3着。
ケリー・ブリーン厩舎、パコ・ロペス騎乗のミス・スカイ・ウォリアーは、これで4連勝。デビューのベルモントこそ4着でしたが、パークスで初勝利を挙げると、アケダクトでテンプテッド・ステークス(GⅢ)、ドモワゼル・ステークス(GⅡ)と連勝。これでG戦も3連勝となり、ケンタッキー・オークスの有力候補の1頭であることは間違いないでしょう。

この後は古馬の芝戦が2つ続き、先ずカナディアン・ターフ・ステークス Canadian Turf S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。9頭が出走し、ここは去年の勝馬でその後も好調をキープしているハート・トゥー・ハート Heart to Heart が6対5の1番人気。
スタートからハナを主張したハート・トゥー・ハート、そのまま6番手から追い上げる6番人気(12対1)のボンデュラント Bondurant に4分の3馬身差を付けて人気に応えると同時に、2連覇を達成しました。更に4分の3馬身差で、3番手追走の4番人気(6対1)コンケスト・パンセーラ Conquest Panthera が3着。
ブライアン・リンチ厩舎、又してもジュリアン・ルパルー騎乗(この日3つ目のG戦)のハート・トゥー・ハートは、前走1月のフォート・ラウダーデール・ステークス(芝GⅡ)こそ4着に終わりましたが、去年ベルモントでのニッカーボッカー・ステークス(芝GⅢ)と去年のフォート・ラウダーデールを含めてG戦8勝となる6歳馬。未だ未だGⅠ獲りの可能性もあるヴェテラン芝馬と言えるでしょう。

メインの一つ前に行われたのが、マック・ダイアルミダ・ステークス Mac Diarmida S (芝GⅡ、4歳上、11ハロン)。こちらは長距離戦で、1頭が取り消しての11頭立て。ドイツ出身で、去年のマンノウォー・ステークス(GⅠ)を制したウエイク・フォレスト Wake Forest が2対1の1番人気。
レースは10番人気(25対1)の伏兵リポーティング・スター Reporting Star が逃げ、良く粘って直線を先頭で迎えて場内を沸かせましたが、6番手辺りを追走していた本命ウェイク・フォレストが大外から猛然と追い上げ、連れて伸びた馬と4頭がゴール前で横一線となる大接戦。写真判定の結果、ウェイク・フォレストが中団から伸びた6番人気(9対1)のパターソン・クロス Patterson Cross を頭差抑えての1着。粘ったリポーティング・スターが首差の3着でした。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のウェイク・フォレストは、ドイツではGⅢ戦2勝を含む4勝、フランスでも一般戦に2勝しており、アメリカでのG戦は2勝目となる7歳のヴェテラン。マンノウォー以降は5戦して未勝利でしたが、前走11月アケダクトのレッド・スミス・ハンデ(芝GⅢ)では3着しており、今期は幸先良いスタートを切ったと言えるでしょう。

そして愈々、フロリダ・ダービーの前哨戦となるファウンテン・オブ・ユース・ステークス Fountain of Youth S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。1頭が取り消して10頭立て。前走ホーリー・ブル・ステークス(GⅡ)を制したアイリッシュ・ウォー・クライ Irish War Cry がイーヴンの1番人気に支持されていました。
先手を取ったアイリッシュ・ウォー・クライでしたが、2番手に付けた4番人気(6対1)のスリー・ルールズ Three Rules が仕掛けて向正面で先頭。そのまま直線に入りましたが、7番手を追走していた3番人気(4対1)のガンナヴェーラ Gunnevera が3番手に押し上げて直線に向くと、大外から一気の末脚を爆発させ、6番手から伸びた2番人気(3対1)のプラクティカル・ジョーク practical Joke に何と5馬身4分の3差を付ける圧勝を演じました。半馬身差でスリー・ルールズが3着に粘り、アイリッシュ・ウォー・クライは7着大敗に終わっています。3歳牡馬戦線は混戦が続いていると見るべきでしょうか。
アントニオ・サノ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のガンナヴェーラは、前走ホーリー・ブルの2着馬。前々走デルタ・ダウンズのジャックポット・ステークス(GⅢ)、8月にはサラトガ・スペシャル・ステークス(GⅡ)にも勝っており、G戦は3勝目となる堂々たるダービー候補でもあります。

ということで3歳牡馬戦線は小波乱となった土曜日ですが、最後はサンタ・アニタ競馬場のオークス路線を占うサンタ・イザベル・ステークス Santa Ysabel S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して6頭立てとなり、西海岸のオークス候補筆頭ユニーク・ベラ Unique Bella が1対9の圧倒的1番人気。
その大本命、スタートこそスローでしたが、第1コーナーを回って果敢に先頭に立つと、そのまま後方2番手から追い込むGⅠ馬(スターレット・ステークス)で2番人気(5対1)のエーベル・タスマン Abel Tasman に2馬身4分の1差を付けて逃げ切り、見事人気に応えました。3番手追走から3着に入った3番人気(25対1)のスプーキー・ウッズ Spooky Woods は8馬身の大差が付けられていましたから、これは順当にオークス候補が実力を証明したレースと言えるでしょう。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のユニーク・ベラは、これで4連勝。今期は1月にサンタ・イネズ(GⅡ)、2月のラス・ヴァージェネス(GⅡ)と距離を伸ばしながら連勝し、G戦は3連勝。この後のサンタ・アニタ・オークスを無事に通過すれば、今年のケンタッキー・オークスはこの馬が本命になるのは間違いない所。この日フロリダで連勝を伸ばしたミス・スカイ・ウォリアーとの一騎打ちが見所のオークスとなりそうです。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください