ケンタッキー・オークスはキャスリン・ソフィアが距離克服してV

愈々今年もチャーチル・ダウンズの競馬フェスティヴァルがやってきました。金曜日と土曜日の二日間で行われるG戦は13鞍。内GⅠ戦は5鞍で、ここ数年でグレードを昇格させて5月最初の週末を盛り上げています。

5月6日の金曜日はメインがケンタッキー・オークス。今年は大本命と思われていた馬が事前に取り消したため、やや興味が殺がれた印象もあります。ここではレース順に振り返って行きましょう。
チャーチル・ダウンズ競馬場のダート・コースは Fast 、芝コースも firm と天候にも恵まれての開催でした。レース画像には最終オッズが表示されないので、一部については事前のオッズを交えた人気を紹介しますので悪しからず。

最初に行われたのが第6レースのラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。Gシリーズ第一弾からいきなりGⅠですが、一昨年からGⅠに格上げされたもの。1頭が取り消しての6頭立て、GⅠ馬が3頭揃う豪華版でしたが、マディソン、デラウエア、パーソナル・エンサインとGⅠ3勝のシーア・ドラマ Sheer Drama が4対5の1番人気。
4番人気(10対1)のGⅠ(シャンデリア・ステークス)馬アンジェラ・ルネー Angela Renee が逃げましたが、2番手でマークしていた2番人気(2対1)のカーラライナ Curalina が逃げ馬を楽に捉えると直線は独走、最後方から内ラチ沿いに伸びた最低人気(20対1)のエンゲイジングリー Engaginglee に7馬身半の大差を付ける圧勝劇でケリを付けました。4番手を進んだシーア・ドラマも一旦は2番手に上がる場面があったものの、最後は伏兵に頭差交わされての3着。
このレース3勝目のトッド・プレッチャー厩舎、2勝目のジョン・ヴェラスケス騎乗のカーラライナは、去年のエイコーン・ステークス、コーチング・クラブ・アメリカン・オークスに続いてGⅠ戦は3勝目。BCディスタッフ3着以来の休み明けでしたが、見事にGⅠ馬3強対決を制しました。GⅠ戦ではベルデイム2着、アラバマ3着と確実に入着しており、通算成績も9戦5勝2着2回3着2回と、4着以下に落ちたことは一度もありません。もちろん目標はBCディスタッフ雪辱でしょう。

第7レースのエイト・ベルズ・ステークス Eight Belles S (GⅡ、3歳牝、7ハロン)は、今年からGⅡに昇格しました。オークスより2ハロン距離が短く、短距離適性のある馬とオークス断念組の対戦でもあります。8頭が出走し、オークスに行っても勝負になると思われたカリーナ・ミア Carina Mia が3対5の断然1番人気。
最低人気(29対1)のマルキー・ミス Marquee Miss が逃げ、カリーナ・ミアは後方3番手に待機。3番手を追走していたブービー人気(20対1)のブリップン・ナ・バイ Blip n’Th Bye が逃げ馬に並び掛けた所に本命馬が外から纏めて急襲、直線も一人旅の走りでブリップン・ナ・バイに6馬身差を付ける大楽勝で期待に応えました。1馬身4分の3差で、後方2番手から追い込んだ2番人気(4対1)のニックネイム Nickname が3着。
ウイリアム・モット厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のカリーナ・ミアは、去年11月に同じチャーチル・ダウンズでゴールデン・ロッド・ステークス(GⅡ)に勝っていた馬。4月の3歳デビュー戦アシュランド・ステークス(GⅠ)では4着に敗れ、オークスを回避してこちらに回る決断をしていました。アシュランドで先着した3頭は全てオークスに駒を進めましたから、ここは実績から見ても固い本命だったと言えそうです。(実際、アシュランド3着馬がオークスを制しました)

第8レースは最初の芝コースG戦で、短距離のトゥイン・スパイアーズ・ターフ・スプリント Twin Spires Turf Sprint (芝GⅢ、3歳上、5ハロン)。去年は4歳上でしたが今年は3歳馬にも開放、とは言っても3歳の参戦はありません。1頭が取り消して12頭立て。一昨年のBCジュヴェナイル・ターフの勝馬フーテナニー Hootenanny が、僅かの差で去年の勝馬パワー・アラート Power Alert を抑えて1番人気だったようです。
ダッシュ良く飛び出したのは8対1(恐らく6番人気でしょう)のロケット・ヒート Rocket Heat 、そのまま後続を寄せ付けず、5番手から追い込む10対1(7番人気か)のアルスヴィッド Alsvid に2馬身差を付ける逃げ切り勝ちです。1馬身半差で僅差2番人気(7対2)のパワー・アラートが7番手から追い上げて3着。フーテナニーは6番手追走も8着と、去年の様な見せ場無く敗退。
これがG戦そのものが初勝利となるヴァン・ベルヴォアー厩舎、チャーチル・ダウンズでは初勝利となるフラヴィアン・プラット騎乗のロケット・ヒートは、去年11月にデル・マーのアローワンス戦に勝って以来の勝星で、もちろんG戦は初勝利。これで17戦6勝となる4歳せん馬で、芝コースでは10戦4勝となるそうです。

続いて第9レースに組まれたアリシェバ・ステークス Alysheba S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。2頭の取り消しがあって8頭立て。去年夏のチャーチル・ダウンズでスティーヴン・フォスター・ハンデ(GⅠ)に勝ったノーブル・バード Noble Bird が、それ以来の勝ち星を目指して2対1の1番人気。
3番人気(4対1)のキャット・バーグラー Cat Burgler が逃げ、ノーブル・バードは後方2番手からの追い込み策。しかし伸びたのは前半4番手を進んだ7番人気(13対1)の伏兵マジェスティック・ハーバー Majestic Harbor で、逃げ馬、2番手追走の4番人気(6対1)マジェスティック・アフェアー Majestic Affair を外から捻じ伏せてのサプライズでした。後方3番手から追い込んだ2番人気(5対2)のイーグル Eagle が2馬身半差で2着、首差でマジェスティック・アフェアーが3着に粘り、ノーブル・バードは最下位と惨敗に終わっています。
ポール・マクジー厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のマジェスティック・ハーバーは、2014年にサンタ・アニタ・ゴールド・カップ(GⅠ)に勝っていた8歳牡馬。今年2月にはマインシャフト・ハンデ(GⅢ)でイーグルを破って優勝しており、古豪健在なりという印象です。前走3月のニュー・オーリーンズ・ハンデでは5着でした。

オークスの前に行われたのがエッジウッド・ステークス Edgewood S (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。去年のオークス・レポートでは2015年からGⅢに格上げ、と書きましたが、その後の調べでより詳しいことが判りました。レースの創設は1983年、1986年と1990年は施行されておらず、今年が32回目を数えます。GⅢに格上げされたのは去年からですが、それまでもGⅠ馬(多くは後で勝ったものだが)も数多く出ており、G戦に相応しい歴史があります。今年は1頭が取り消して12頭立て。去年のBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフを制したキャッチ・ア・グリンプス Catch a Glimpse の実績が抜けており3対2の1番人気。
最低人気(40対1)ボーン・トゥー・ビー・ウイナー Born to Be Winner の2番手を追走したキャッチ・ア・グリンプス、第3コーナーで先頭に立つと、6番手から追い込むブービー人気(31対1)オーンティー・ジョイ Auntie Joy に4分の3馬身差を付けて人気に応えました。更に4分の3馬身差で最後方から伸びた2番人気(9対2)のハーモナイズ Harmonize が3着。
マーク・カッセ厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のキャッチ・ア・グリンプスは、これまで当ブログで何度も紹介しているように2歳馬ながら去年のカナダの年度代表馬に選出された馬。これで6連勝、アメリカのG戦も4連勝で、3歳牝馬の芝部門ではアメリカ大陸最強馬でしょう。今期もG戦はヒアカムズザブライド・ステークス(芝GⅢ)、アパラチアン・ステークス(芝GⅢ)に続いて3勝目。

そして金曜日の最後、第11レースが今年第142回目となるケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)です。冒頭にも書いたように、今年のオークスは冬場も、本番1か月前の段階でもソングバード Songbird が1強と言う状態でした。ところが4月17日になって突然ソングバードが発熱し、調教過程に狂いが生じたということで回避するというニュースが飛び込んできました。これによって俄然混戦となり、本来ならエイト・ベルズに回る予定だった馬も含めて15頭が登録してきます。当日になって1頭が取り消し、最終的には14頭立て。去年のスピナウェイ・ステークス(GⅠ)勝馬でBCジュヴェナイル2着、トライアルのアシュランド・ステークス(GⅠ)でも2着したレーチェルズ・ヴァレンティーナ Rachel’s Valentina が押し出されるように5対2の1番人気に支持されていました。
レースは8番人気(23対1)のテラ・プロメッサ Terra Promessa (GⅢ戦2勝馬)の逃げで始まり、レーチェルズ・ヴァレンティーナは2番手を追走。これを3・4番手で追った2頭が加わり、4頭が雁行するように直線に向くと、4番手から外を追い上げた2番人気(9対2)のキャスリン・ソフィア Cathryn Sophia が一気に抜け出し、混戦の2着争いに2馬身4分の3差を付けてクラシック制覇を達成しました。5頭が雪崩れ込んだ2着争いは、10番手辺りから猛然追い上げた4番人気(6対1)のランド・オーヴァー・シー Land Over Sea (フェア・グラウンズ・オークス勝馬)が首差でもぎ取り、頭差で3番手を粘った3番人気(5対1)のルイス・ベイ Lewis Bay (ガゼル・ステークス勝馬)が3着。ガルフストリーム・パークス・オークスのゴー・マギー・ゴー Go Maggie Go が4着、11番人気(37対1)のモー・ダムール Mo d’Amour が5着に入り、レーチェルズ・ヴァレンティーナは6着に沈んでいます。
キャスリン・ソフィアを管理するジョン・サーヴィス師は今年57歳。ケンタッキー・オークスに管理馬を出走させたのは今回が初めてで、ケンタッキー・ダービーも2004年に唯一度のチャンスをスマーティー・ジョーンズ Smarty Jones でモノにした方。何とケンタッキーのダービー・オークスは100%の勝率という驚異的な記録を創り出しました。キャスリン・ソフィアは前走アシュランド・ステークスでも同じような競馬をしましたが、最後はバテて3着止まり。それまでフォワード・ギャル、ダヴォナ・デールと無敗で来たために、2ハロン伸びる距離が課題とされていたのです。本来ソングバードが出てくればオークスを回避し、エイト・ベルズに回る予定だったものが急遽オークスに挑戦しての快挙。そのエイト・ベルズは、既報の通りアシュランド4着のカリーナ・ミアが制したのですから、今年のアシュランドはレヴェルが高かったということになるでしょう。因みにアシュランドを勝ったウィープ・ノー・モア Weep No More は5番人気で7着、2着だったレーチェルズ・ヴァレンティーナが1番人気でした。

金曜日は他の競馬場でもG戦が組まれていましたが、サンタ・アニタ競馬場のアメリカン・ステークス American S (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)は雨のために泥んこ馬場のダート・コースに変更。これによりG戦は剥奪されました。
結果だけ記すと、3頭が取り消して6頭立てとなり、5歳馬のホーム・ラン・キッテン Home Run Kitten が勝って8連敗に終止符を打っています。

そしてもう一つがローン・スター・パーク競馬場のテキサス・マイル・ステークス Texas Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。これまた去年はG戦を剥奪された一戦で、今年は fast の馬場に1頭が取り消し、9頭立てで無事にG戦を全うしました。去年のオクラホマ・ダービー(GⅢ)馬ショットガン・カウボーイ Shotgun Kowboy が3対1の1番人気。
3頭並んだ2番人気(7対2)の一角ブルー・トーン Blue Tone が逃げ、ショットガン・カウボーイはこれに並び掛けるように2番でマーク。第4コーナーで早くも逃げ馬を捉えたショットガン・カウボーイが後続を引き離しに掛かりましたが、前半4番手を進んだ5番人気(6対1)のグレート・マインズ Grat Minds が本命馬の外から襲い掛かり、最後は半馬身抜け出しての優勝。3着は5馬身の大差が付いて2番人気の一角、3番手を追走していたカーヴ Carve が入りました。
アルバート・ストール厩舎、C・J・マクマホン騎乗のグレート・マインズは、これがG戦初勝利となる5歳せん馬。今期は一般ステークス(ボルガータ・ステークス)にも勝っており、通算成績は19戦5勝となります。

 

 

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