ケンタッキー・ダービーへの道(4)

アケダクトに続いては、ニューヨークとほぼ同時進行していたケンタッキー州のキーンランド競馬場から。こちらもG戦は5鞍でしたが、アケダクトとは対照的に大荒れの結果となりました。

最初のコモンウェルス・ステークス Commonwealth S (GⅢ、4歳上、7ハロン)は、fast の馬場に9頭立て。去年は6連勝してBCスプリントで3着したエー・ピー・インディアン A.P.Indian が9対5の1番人気。今期初戦のここから快進撃の再現が期待されます。
4番人気(6対1)のリムジン・リベラル Limousine Liberal が逃げ、エー・ピー・インディアンは5番手追走。第3コーナー手前からスパートした本命馬が外から先頭に立ちましたが、更に外から足を伸ばしてきたのが8番手で我慢していた2番人気(3対1)のオウサム・スルー Awesome Slew 、最後は本命馬に1馬身半差を付ける差し切り勝ちでした。逃げたリムジン・リベラルが粘って2馬身差の3着。去年の勝馬で3番人気(6対1)に支持されたエイミーズ・フラッター Ami’s Flatter は4着に終わり、連覇成らず。
マーク・カッセ厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のオウサム・スルーは、これがG戦2勝目となる4歳牡馬。去年8月にスマーティー・ジョーンズ・ステークス(GⅢ)に勝っており、ペンシルヴァニア・ダービー(GⅡ)で5着したこともあります。前走ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)2着からの勝利。

続いては芝コースのシェイカータウン・ステークス Shakertown S (芝GⅡ、3歳上、5.5ハロン)。今年から3歳上の条件に変わりましたが、3歳馬の出走はありません。9頭が出走し、人気が割れる中、前走フェア・グラウンズの一般ステークス(カーネル・パワー・ステークス)を制したホギー Hogy が3対1と僅かの差で1番人気。
5番人気(7対1)のジャスティン・スクエアード Justin Squared が逃げましたが、前半6番手に付けていた8番人気(18対1)の伏兵ホールディング・ゴールド Holding Gold が直線で馬群の中を衝いて抜け出し、4番手から伸びた3番人気(7対2)のグリーン・マスク Green Mask を首差で制する逆転劇。人気のホギーは5番手から追い込みましたが、1馬身半差及ばず3着まで。
コモンウェルスのオウサム・スルーと同じマーク・カッセ厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のコンビによるホールディング・ゴールドは、前走昨年10月のセレクト・ステークス(GⅢ)7着以来の実戦で、これが休み明けでの今期デビュー戦。去年8月にサラトガの一般ステークス(クイック・コール・ステークス)に勝ってはいましたが、ステークスは2勝目でG戦は初勝利となる4歳牡馬です。

キーンランドもここからはトップクラスのG戦が続き、先ずマジソン・ステークス Madison S (GⅠ、4歳上牝、7ハロン)は9頭立て。去年G戦に3勝し、BCフィリー・アンド・メア・スプリントでも3着している強豪ポールアズシルヴァーライニング Paulassilverlining が9対5の1番人気。
2番人気(3対1)のコンステレーション Costellation が逆転を狙って逃げましたが、直線ではやや外に膨れ気味になる所、4番手を追走したポールアズシルヴァーライニングが逃げ馬の内を掬うように伸び、最後は首差捉えて人気に応えました。6番手から追い上げた3番人気(9対2)のペイド・アップ・サブスクライバー Paid Up Subscriber が2馬身半差の3着に入り、この日のキーンランドでは唯一の順当な結果です。
チャド・ブラウン厩舎、ホセ・オルティス騎乗のポールアズシルヴァーライニングは、これがG戦5勝目となる5歳馬で、GⅠ戦は嬉しい初勝利。そもそもジャドモント・ファームが種馬として供用予定のアロゲート Arrogate に付ける繁殖牝馬に期待して6週間前に購入した1頭で、これで繁殖牝馬としての価値も絶大なものになること間違いなし。将来はアロゲートとの交配でGⅠ馬が輩出されることにも期待が高まります。

このあとの2戦は何れもクラシック・トライアルで、とんでもない結末が待っていました。先ずオークス100ポイント対象のアシュランド・ステークス Ashland S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)は、8頭が出走。1勝馬ながら前走ハネービー・ステークス(GⅢ)で1番人気で3着に終わったクレイボーン・ファームのイレート Elate が6対5の1番人気。
1番枠から出た6番人気(21対1)のサムデイ・スーン Someday Soon が逃げ、イレートは3番手追走。しかし第3コーナーに差し掛かる辺りで急速にスピードが落ちたイレートは、そのまま競走中止。他にスタートから加速が付かなかった1頭も競走を諦めてしまう波乱となり、2番手を追走していた7番人気(22対1)の伏兵セイラーズ・ヴァレンタイン Sailor’s Valentine が、後方2番手からエンジンが掛かった4番人気(5対1)のダディーズ・リル・ダーリング Daddys Lil Darling に半馬身差を付けて勝つ波乱。逃げたサムデイ・スーンも1馬身4分の1差で3着に粘りました。
エディー・ケナリー厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のセイラーズ・ヴァレンタインは、去年10月にキーンランドでデビュー勝ちして以来の勝鞍で、その間4連敗中でした。前走3月タンパ・ベイでのアローワンス戦は2着、G戦は初挑戦での快挙です。ラヌリー騎手はこのレース、去年に続く連覇で通算は3勝目。もちろんケンタッキー・オークスを目指しますが、あくまでも伏兵の1頭でしょうか。

最後はダービー100ポイントのトライアル、伝統のブルー・グラス・ステークス Blue Grass S (GⅡ、3歳、9ハロン)。去年までは長くGⅠ戦でしたが、ニューヨーク編でも触れたように、ウッド・メモリアル同様今年からGⅡに降格されたもの。それを反映したわけでもないでしょうが、出走馬は僅かに7頭で、GⅡに2連勝して4戦無敗のマクラッケン McCraken が8対5の1番人気。ここはガッチリと連勝を伸ばして本番に備えたいところ。
先ず5番人気(12対1)のワイルド・ショット Wild Shot が逃げ、マクラッケンは4番手から。これを2番手で追走していた6番人気(31対1)のアイラップ Irap が第3コーナーで思い切りよく先頭に立つと、内ラチ沿いギリギリに進路を取って粘り、5番手から懸命に追い上げる3番人気(7対2)のプラクティカル・ジョーク Practical Joke を4分の3差抑えて逃げ切ってしまいました。マクラッケンも必死で追い上げたものの、3馬身差を付けられての3着と散り、初黒星の波乱です。
ダグ・オネイル厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のアイラップは、何とレース前は未勝利馬。未勝利馬がブルー・グラスを制したのは、史上初の珍事だそうです。前走3月26日のサンランド・ダービー(GⅢ)では4着、2歳時3戦目でキャッシュコール・フューチュリティー(GⅠ)で2着した実績があるとは言え、これは予想すら出来なかったサプライズと言えそうです。今年の牡馬クラシック戦線は暗雲の中、と言えなくもない。

 

 

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