ケンタッキー・ダービーへの道(3)

ヨーロッパに続いて、4月8日のアメリカ競馬を振り返ります。恐らくダービー1か月前の土曜日はアメリカ競馬1年を通しても最も数多くのG戦、クラシック・トライアルが行われる時期で、当ブログの最大繁忙期でもあります。
今年は3つの競馬場で合計14鞍ものG戦が組まれていましたが、1日遅れのレポート、東から順に見ていきましょう。ということで、ここはニューヨーク州の巻。

アケダクト競馬場のG戦は5鞍で、やはり注目はダービー、オークスのトライアルでしょう。その前に行われた最初のG戦は同じ3歳馬限定戦でも短距離のベイ・ショア・ステークス Bay Shore S (GⅢ、3歳、7ハロン)。この日のG戦は全てダートのメインコースで、馬場は終日 fast 。6頭が出走し、去年のフューチュリティー・ステークス(GⅢ)の勝馬でBCジュヴェナイルは11頭立て10着だったセオリー Theory がイーヴンの1番人気。これがシーズン初戦です。
レースは4番人気(15対1)イーヴン・サンダー Even Thunder の逃げで始まりましたが、後方2番に待機していた2番人気(7対5)のロング・ハウル・ベイ Long Haul Bay が直線で一気に外から先頭に立ち、粘るイーヴン・サンダーに3馬身4分の1差を付けて鮮やかに差し切りました。最後方から追い込んだ3番人気(8対1)のユーアー・トゥー・ブレイム You’re to Blame が首差で3着に入り、セオリーは休み明けで気が乗らなかったか4着敗退。
チャド・ブラウン厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のロング・ハウル・ベイは、2月18日にアケダクトでデビュー勝ちしたばかり。2戦2勝でもちろんG戦は初勝利です。クラシックというよりは短距離からマイル路線の馬でしょう。

続いてはエクセルシオ・ステークス Excelsior S (GⅢ、4歳上、10ハロン)。7頭が出走し、2月にアケダクトで初めてステークスに勝ったセンド・イット・イン Sent It In がイーヴンの1番人気。
5番人気(9対1)でこれがアメリカ・デビューとなるチリからやって来たトゥー・ブルータス Tu Brutus が逃げ、センド・イット・インは3番手追走。直線、トゥー・ブルータスが懸命に粘って逃げ切るかに見えましたが、直線ジリジリ差を詰めた本命馬がゴール直前、半馬身抜け出して人気に応えました。3着以下は大きく離され、4番手を進んだ2番人気(3対1)のドーユーノウサムシング Doyouknowsomething が14馬身差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のセンド・イット・インは、これがG戦初勝利となる5歳せん馬。勝鞍は9勝目ですが、ステークスは上記今年2月の一般ステークス(ヘインズフィールド・ステークス)に次ぐ2勝目。前走はやはり一般ステークス(スタイミー・ステークス)の3着でした。

この日三つ目のG戦が、短距離路線のGⅠ戦となるカーター・ハンデキャップ Carter H (GⅠ、4歳上、7ハロン)。春の短距離王者決定戦の一つで9頭が出走、前走ガルフストリーム・パーク・スプリント・ステークス(GⅢ)を制したユニファイド Unified が4対5の1番人気。去年のベイ・ショア勝馬でもあります。
ダッシュ良く飛び出したのは、最低人気(54対1)まで評価を下げていたグリーン・グラット Green Gratto 、ユニファイドはこれを2番手で追走します。しかし前走とは見違える動きで逃げたグリーン・グラット、最後はユニファイドに外から首差まで詰め寄られましたが、ギリギリ逃げ切ってしまいました。5番手から追い上げた2番人気(5対2)のトミー・マチョ Tommy Macho が前2頭の間を割ろうとしましたが、巧く前が開かず1馬身4分の1差の3着。ルイス・サエズ騎手が異議を申し立てましたが、審議の結果却下されています。
これがGⅠ初制覇となるガストン・グラント厩舎、クリストファー・デカルロ騎乗のグリーン・グラットも、もちろんGⅠ戦は初勝利となる7歳牡馬。去年のカーターは8着でしたが、前々走1月のトボガン・ステークス(GⅢ)を含め、G戦は3勝目となります。前走3月のトム・フール・ハンデ(GⅢ)は7着と凡走したため人気を下げていましたが、これは鼻出血があったためと敗因はハッキリしていました。人気の無さ過ぎがマンマの逃げ切り勝ちに繋がったと言えそうです。

そしてダービー100ポイントのトライアル戦、ウッド・メモリアル・ステークス Wood Memorial S (GⅡ、3歳、9ハロン)。去年まではGⅠ戦でしたが、次にレポートするキーンランドのブルー・グラスと共に今年からGⅡに降格されてしまいました。それでも東海岸の重要なダービー・トライアルであることに変わりはありません。今年は8頭が参戦し、2連勝でステークスに初挑戦する新星バタリオン・ランナー Battalion Runner が2対1で1番人気。
そのバタリオン・ランナーがスタートから飛ばして逃げ切る構えを見せましたが、2番手に付けた3番人気(7対2)のアイリッシュ・ウォー・クライ Irish War Cry が第3コーナーで本命馬に馬体を合わせ、直線では外から抜き去ると、バタリオン・ランナーに3馬身半差を付けて堂々と100ポイントを獲得しました。同じく3馬身半差で、4番手を進んだ2番人気(2対1)のクラウド・コンピューティング Cloud Computing が3着。
グレアム・モーション厩舎、一昨年7月の落馬から復帰して以来最大の勝利となったラジーヴ・マラー騎乗のアイリッシュ・ウォー・クライは、2月4日のホーリー・ブル・ステークス(GⅡ)を無敗で制した時に詳しく紹介したクラシック候補。そのあと3月4日のファウンテン・オブ・ユース・ステークス(GⅡ)で不可解な7着と初黒星を喫して評価を落としましたが、この圧勝で名誉挽回した形です。ニュー・ジャージー産馬としては3頭目となる(1915年リグレット Regret 、1934年カヴァルケード Cavalcade)ダービー制覇が見えてきました。

土曜アケダクトの最後は、ケンタッキー・オークスの100ポイント戦となるガゼル・ステークス Gazelle S (GⅡ、3歳牝、9ハロン)。9頭が出走し、目下4連勝中のミス・スカイ・ウォリアー Miss Sky Warrior が8対5の1番人気。
スタートから第1コーナーまではややゴチャ着いた展開となりましたが、向正面では本命馬がすんなりとハナに立っての逃げ。ここでは格の違いを見せ付けたミス・スカイ・ウォリアー、直線でも持ったまま、キャンターに近い楽勝で2着以下に13馬身の大差を付けていました。2番手を追走した4番人気(7対1)のロックダウン Lockdown が2着、3番手を進んだ5番人気(12対1)のフル・ハウス Full House が1馬身4分の3差で3着。フル・ハウスのラジーヴ・マラー騎手が第1コーナーの位置取りについて勝馬に異議を申し立てましたが、結果を左右するような問題とはならず、着順通りで確定しています。
ケリー・ブリーン厩舎、パコ・ロペス騎乗のミス・スカイ・ウォリアーについては改めて紹介することも無いでしょう。去年秋のテンプテッド(GⅢ)とドモワゼル(GⅡ)、今年初戦のダヴォナ・デイル(GⅡ)と、G戦も4連勝で6戦5勝。東海岸を代表するオークス候補は間違いない所です。

 

 

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