それでもガリレオ、それでもオブライエン
5月7日の日曜日はフランスの大統領選、いや違ったニューマーケットの1000ギニーが行われました。3歳牝馬の決選投票です。
この日のニューマーケット競馬場は、前日と同じ good to firm の馬場。クラシックの前にもG戦が一鞍行われましたが、先に1000ギニー・ステークス 1000 Guineas S (GⅠ、3歳牝、1マイル)からレポートしていきます。
これも事前に枠順を紹介したように、14頭立て。前日チャーチル Churchill で2000ギニーを制したオブライエン厩舎のエース格、ロードデンドロン Rhododendron が5対4の1番人気。もちろん主戦のライアン・ムーアもこの馬を選びました。
続いてはゴスデン厩舎のダバン Daban が続き、5対1で2番人気。実績的にはこの2頭が抜けている印象でしたが、フランケル Frankel 産駒という魅力も手伝ってフェア・イーヴァ Fair Eva が8対1の3番人気、そのあと9対1の4番人気にはチーム・オブライエンの2頭、ハイドランジア Hydrangea と、何故かウインター Winter が並んでいました。
一斉のスタート、枠順の小さい馬は徐々にスタンド側に寄せる流れの中、オブライエンのペースメーカーでもある(あわよくば逃げ切る構え)ハイドランジアが先頭に。7番人気(20対1)で息子ジョセフ・オブライエンが管理するイントリケイトリー Intricately も隣に並ぶように馬群を引っ張ります。
残り2ハロンで一杯になった逃げ馬を捉えたのが、スタンドから遠目(日本流にいえば内でしょうか)を先行していたウインター。一方、ロードデンドロンは中団に控えて先行馬を追っていましたが、ペースメーカーの2頭がバテて後退してきたために前が塞がる不利。ムーア、止むを得ずスタンド側に進路を替えて前を猛追に掛かります。
しかしウインターが先手を取って抜け出したのが早く、ロードデンドロンも内のタラーイェブ Talaayeb (11対1、6番人気)、外のダバンを次々に交わしてウインターに迫りましたが、最後は2馬身及ばず2着に終わりました。首差でダバンが3着、更に1馬身4分の1差でタラーイェブ4着、2馬身4分の1差でフェア・イーヴァの順。
人気先行の感があったウインターですが、噂は本物でした。この馬もエイダン・オブライエン厩舎の馬で、父はガリレオ Galileo 。2着もオブライエン/ガリレオのロードデンドロンですから、完璧なワン・ツー・フィニッシュです。
実はウインター、2歳時はデヴィッド・ウォッチマン厩舎に所属していた馬で、師が去年一杯で引退した(未だ45歳!! どういうこと?)ため、今年からオブライエンが預かることになった経緯があります。これに伴ってウォッチマン厩舎の主戦騎手だったウェイン・ローダンもオブライエン・チームに加わることになり、今回も引き続きローダン騎乗。不思議な巡りあわせで、ローダンはクラシック初制覇となりました。
ウオッチマン師の元では3戦、ナース、ゴウランと2戦し、3戦目のダンダルクで初勝利を挙げてシーズンを終了。今期初戦、オブライエン師の元でも初戦となったレバーズタウン1000ギニートライアル(GⅢ)で頭差の2着したのが決め手となって1000ギニー参戦が決まったのでした。
オブライエン師にとって1000ギニーは、未だ!4勝目。同じ年の2000ギニーと1000ギニーに勝つ、所謂ギニー・ダブルは2005年、2012年に続いて3度目で、去年に続く1000ギニー連覇。普通の調教師ならクラシックに勝つことが夢であり、事件でもありますが、オブライエンって何という運命の持ち主なんでしょうか。
ウインターのオークスへのオッズは、レース前の33対1から一気に8対1に急上昇しました。一方負けてなお強しの印象を残したロードデンドロンは、更に上がって5対2。
ウインターのプロフィールもいずれ紹介しますが、チャーチルと同じく牝系はスプリンター。母系のスピードを活かし、ガリレオのパワーでスタミナも獲得するというパターンの配合が成功しているようです。
最後に、1000ギニーに先立って行われたダリア・ステークス Dahlia S (GⅡ、4歳上牝、1マイル1ハロン)。1頭が取り消し、更に1頭がゲートをこじ開けるアクシデントがあって除外となり7頭立て。ここにもオブライエン厩舎でムーア騎乗のサムハウ Somehow が参戦してきたため、当然ながら13対8の1番人気に祭り上げられていました。
7番人気(25対1)のエルベレス Elbereth が強いペースで飛ばし、他の馬は付いて行くのがやっと。それでも後方3頭の中で控えていたサムハウにエンジンが掛かると、逃げ馬はたまったものじゃありません。結局サムハウがエルベレスに3馬身4分の1差を付ける圧勝劇となりました。更に4馬身半差で、同じく後方グループから伸びた5番人気(14対1)でフランスからの遠征馬エイム・トゥー・プリーズ Aim to Please が3着。
勝ったサムハウは、去年のオークス4着、愛オークス5着馬。3歳シーズンはスノー・フェアリー・ステークス(GⅢ)優勝で締め括り、今期は1週前にゴウランのリステッド戦に勝ち、ここは連闘で臨んでいました。
ロッキンジ・ステークスでGⅠ獲りを目指すということで、オッズはレース前の20対1から半分の10対1に上がっています。
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