2017クラシック馬のプロフィール(2)

昨日に続いて今年のクラシック馬血統紹介、今回は1000ギニーのウインター Winter です。ウインターは父ガリレオ Galileo 、母ラッディーズ・ポーカー・トゥー Laddies Poker Two 、母の父ショワジール Choisir という血統。

またまたガリレオですが、実はヨーロッパ3国のクラシックで、去年のシーズンが始まる前までガリレオ産駒が勝っていないのが1000ギニーと仏2000ギニーの2レースだけでした。ご存知のように2016年、1000ギニーはマインディング Minding が、仏2000ギニーはザ・グルカ The Gurkha が制して目出度くガリレオのクラシック完全制覇が達成されたのでしたね。
去年の1000ギニーを初めて、しかもワン・ツー・スリーで独占したガリレオ、今年は2年連続、なお且つワン・ツーで制して長年の無念を一気に晴らした感があります。15冠種牡馬ガリレオはこれだけにして、早速ウインターの牝系に入りましょう。

母ラッディーズ・ポーカー・トゥー(2005年生れ 芦毛)ですが、その前に母の父ショワジールはオーストラリアの2歳チャンピオンで、ロイヤル・アスコットに遠征してキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ、5ハロン)とゴールデン・ジュビリー・ステークス(現在GⅠ、当時はGⅡ、6ハロン)を制したスプリンターだったことを記憶しておきましょう。
さて母、この馬は英国でジェレミー・トゥリー師が調教し、2歳時に4戦2勝。デビューは早くも1月ケンプトンのポリトラック・コースの7ハロンで、2着に6馬身差を付けて優勝。2戦目からは芝コースで、ニューマーケットの同じ7ハロンのハンデ戦3着。3戦目の9月アスコットのハンデ戦6ハロンで2勝目を挙げましたが、ニューマーケットの6ハロンのリステッド戦で6着に敗れ、2歳シーズンを終えます。

通常なら3歳シーズンということになりますが、ラッディーズ・ポーカー・トゥーが次に競馬場に姿を見せるのは20か月後、4歳時のロイヤル・アスコット開催でした。詳しいことは判っていませんが、レースホース誌によると2009年の春に故障したと書かれています。
そのロイヤル・アスコット、彼女が出走したのはワーキンガム・ハンデという6ハロンの最も難解とされるハンデ戦で、何と20か月振りの休み明けながら27頭立ての1番人気に支持され、これまた何とコース・レコードで優勝してしまったのでした。
ラッディーズ・ポーカー・トゥーの戦績はこれだけ。4歳は僅か1戦のみでしたが、恐らくパターン・レース(G戦)に出走してもそれなりの活躍が出来たのじゃないでしょうか。いずれにしても5・6ハロンを中心としたスプリンターだったことは間違いないでしょう。因みに彼女は2歳シーズンまでは別のオーナーでしたが、4歳でロイヤル・アスコットで勝った時にはクールモア・グループの所有に替わっています。

繁殖牝馬としては未だスタートしたばかり。ここまでの記録は、
2013年 ファクツ・アンド・フィギュアズ Facts and Figures 牡 芦毛 父ガリレオ 未出走
2014年 ウインター

2代母ブレイク・オブ・デイ Break of Day (2000年 芦毛 父フェイヴァリット・トリック Favourite Trick)は未出走馬で、彼女には繁殖成績しか残っていません。産駒は特に注目する馬たちではありませんが、一覧表にしておきましょうか。
2005年 ラッディーズ・ポーカー・トゥー
2006年 ルイーザ・テトラツィーニ Luisa Tetrazzini 牝 鹿毛 父ホーク・ウイング Hawk Wing 5ハロンから1マイル少しまで28戦もしたけれど3着6回のみ。
2007年 ワン・グッド・エンペラー One Good Emperor 牡 鹿毛 父アントニウス・ピウス Antonius Pius 8戦1勝、勝鞍はニューマーケットの1マイルハンデ戦。
2008年 ロック・エース Rock Ace 牝 芦毛 父ヴァーグラス Verglas 6戦2勝。勝鞍はライポンとノッティンガムの何れも6ハロン戦。
2009年 チューズデイ Chooseday せん 鹿毛 父ショワジール 5ハロンと6ハロンでのみ走り、33戦3勝。勝鞍は2・3・4歳時に挙げた6ハロン戦。
2011年 ラケット Rakete 牝 芦毛 父マスタークラフツマン Mastercraftsman ドイツで2戦1勝。勝鞍はミュンヘンの7ハロン。

以上が現在まで記録が残っている全てですが、6頭全て調教師も異なり、クールモア・グループと接点があるのはウインターの母ラッディーズ・ポーカー・トゥーのみです。

3代母はケル・アフェアー Quelle Affair (1990年 芦毛 父リヴァーマン Riverman)。彼女も5戦して未勝利ですから、競走馬としての実績はほとんどありません。ただ、未勝利ながら2歳時にカブール賞(GⅢ、ドーヴィルの1200メートル)とカルヴァドス賞(GⅢ、ドーヴィルの1400メートル)に出走し、何れも4着していることは記録しておきましょう。
彼女の産駒では、2歳時に5ハロン戦で勝ったマ・ヨーラム Ma Yoram があり、ケンプトンでデビュー勝ちしたあとジムクラック・ステークス(GⅡ)2着、ミル・リーフ・ステークス(GⅡ)3着。翌春もグリーナム・ステークス(GⅢ)に走って(5着)クラシックを目指したことも付け加えておきましょうか。

そして4代母にGⅠ級の馬が登場します。彼女の名はアンシャン・レジーム Ancient Regime (1978年 芦毛 父オールデン・タイムス Olden Times)と言い、モルニー賞(GⅠ)に勝ってフランスの2歳牝馬チャンピオンに選ばれた馬。
アンシャン・レジームはモルニー賞に続いてサラマンドル賞(現在は廃止、当時はGⅠ)で1400メートルに挑戦しましたが、最下位に敗退。しかしレース後左膝の骨折が判明し、レースを続けられるか危ぶむ声もあったほどでした。
しかし故障を無事克服、3歳シーズンも専ら短距離に絞ってレースを続けましたが、秋までは彼女本来の実力に戻ることはありませんでした。それでもアベイ・ド・ロンシャン賞では4着、キャリアの最後には今は存在しないエヴリー競馬場の1200メートルに勝って引退しています。

アンシャン・レジームの産駒は、ケル・アフェアーの他にも多くがスプリンターで、アベイ・ド・ロンシャン賞2着のラ・グランド・エポック La Grand Epoque 、エクリプス賞(GⅢ)優勝のクラック・レジメント Crack Regiment がいます。
またラミ Rami という牡馬はコンコルド・ステークス(GⅢ)に勝ち、当時はGⅡだったクィーン・アン・ステークス(1マイル)で2着したスプリンター/マイラーで、南アフリカで種牡馬になりました。

アンシャン・レジームの産駒ではダイヤモンドスノーという牝馬が日本に輸入され、中央競馬で10戦1勝、地方競馬で1戦未勝利という成績を残して繁殖入りしています。
その産駒にはジャニュアリーステークス(中山ダート1200メートル)、安芸ステークス(阪神ダート1400メートル)、橿原ステークス(京都ダート1400メート)に勝ったスリージェムがあるほか、娘のスリースノーグラスの牡馬マイネルフロストが毎日杯(GⅢ)に勝って、東京優駿でワンアンドオンリーの3着したのはつい3年前の出来事ですネ。マイネルフロストは先日も新潟大賞典で2着していましたっけ。

アンシャン・レジームの母、つまりウインターの5代母カテリーナ Caterina (1963年 芦毛 父プリンスリー・ギフト Princely Gift)もまたスプリンターで、当時はパターン・レース導入以前でしたが、現在はGⅠに格付けされているナンソープ・ステークスの勝馬。
彼女の産駒ではアンシャン・レジームの他にもクリケット・ボール Cricket Ball という名スプリンターがおり、この馬は現在GⅠのモーリス・ド・ギースト賞を制したほか、やはり短距離のモトリー賞を4連覇したという前代未聞の大記録の保持者でもあります。

カテリーナの娘クローズ・コンフォート Close Comfort からは2代目に凱旋門賞2着(2003年)でジェフリー・フリーア賞(GⅡ)3連覇のムブタケル Mubtaker 、4代目にもアメリカでヴォスバー・ステークス(GⅠ、6ハロン)とアルフレッド・G・ヴァンダービルト・ステークス(GⅠ、6ハロン)のロック・フォール Rock Fall が出ましたし、
別の娘オールデン Olden からも、2代目にBCマイル3着でリヴァー・シティー・ハンデ(GⅢ)を二度制したセーム・オールド・ウイッシュ Same old Wish が出ています。

このファミリーの多くは短距離で活躍していますが、6代母ラジオ・パイ Radio Pye は、エクリプス・ステークスに勝って愛ダービー2着のスコティッシュ・ライフル Scottish Rifle の母でもあります。
以上、長い目で見れば短距離の牝系と言えるのでしょうが、愛ダービー、東京優駿、凱旋門賞で勝てないまでも好勝負した馬たちも出ており、この辺りが牝系研究の楽しさと言えそうです。

ファミリー・ナンバーは15-a。1832年生まれのヴィーナス Venus を基礎牝馬とする牝系です。

 

 

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