雨でも楽勝、チャーチルの愛2000ギニー
5月の最終土曜日、ヨーロッパではイギリスとアイルランドで(ドイツも)G戦が行われましたが、今回はクラシック・レースの舞台となったアイルランドを先にレポートしましょう。
カラー競馬場の週末は、アイルランドで今期最初のクラシックとなるギニー・デイの2日間。初日は3鞍のG戦が行われており、レース順に取り上げることにしましょう。
この日のカラーは終日の雨。馬場は yielding to soft と悪化し、ニューマーケットの2000ギニーとは一変した馬場状態になっていました。
2000ギニーの前に行われたのは、短距離のグリーンランズ・ステークス Greenlands S (GⅡ、4歳上、6ハロン)。オブライエン厩舎のアカプルコ Acapulco が断然の本命になる筈でしたが、発熱のために取り消し。突然中心馬が不在となった6頭立て、9対4の1番人気になったスードア Suedois は去年のフォレ賞(GⅠ)3着馬。今期初戦のデューク・オブ・ヨーク・ステークス(GⅡ)は8着と奮いませんでしたが、GⅠ戦で度々入着している実績の走りを取り戻せば、ここは勝って当然でしょう。
逃げたのは5番人気(14対1)のオンリー・マイン Only Mine 、スードアはダッシュ良く飛び出したものの、直ぐに3番手に控えての競馬。これを2番手で追走していた最低人気(20対1)の伏兵ゴードン・ロード・バイロン Gordon Lord Byron が久し振りに闘志を見せて先頭に立つと、逃げるオンリー・マインに1馬身半差を付けるサプライズとなりました。半馬身差でそのままスードアが3着。
トム・ホーガン厩舎、クリス・ヘイズが騎乗したゴードン・ロード・バイロンは、今年9歳になるせん馬。今記録を調べる時間はありませんが、9歳馬がG戦に勝つのはかなり珍しいことではないでしょうか。
とは言え歴戦の同馬、5年前にはフォレ賞、4年前はヘイドック・スプリント・カップ、3年前にもアスコットのチャンピオン・スプリント(当時はGⅡでしたが)とGⅠレースを何度も制してきたスプリンター。せん馬だけに間隔を開けずに使い詰め、今期も既に6戦目でのシーズン初勝利となりました。これからも、彼の名前を何度も見かけることになるでしょう。
そして愈々アイルランド2000ギニー Irish 2000 Guineas (GⅠ、3歳牡牝、1マイル)。枠順も事前に紹介しましたし、出走馬6頭については改めて紹介することもありますまい。ニューマーケットに続く2000ギニー・ダブルを目指すチャーチル Churchill が4対9の断然一番人気。エイダン・オブライエン師は馬場の悪化を不安視していたようですが、ラットを含めて陣営は自信満々。
予想されたとおり、オブライエン厩舎のペースメーカーとして4番人気(11対1)のランカスター・ボンバー Lancaster Bomber が逃げ(鞍上はオブライエン師の末の息子ドナック Donnacha)。これをゴドルフィンの2番人気(5対1)サンダー・スノー Thunder Snow が2番手でマークし、チャーチルは後方2番手で待機。
ペースメーカーが役目を終えた所でサンダー・スノーが先頭に立つと、ほぼ同時に外から差を詰めたチャーチルが並び掛け、ライヴァルを2馬身半差抜き去って見事2冠を達成しました。全く危なげのないレース振りで、唯一の不安材料だった重馬場も問題にはなりませんでした。最後方から終いの勝負に賭けた3番人気(7対1)のアイリッシュコレスポンダント Irishcorrespondent が4馬身半差の3着。人気通りの1・2・3着という結果です。
エイダン・オブライエン師にとって愛2000ギニーは11勝目、アイルランドのクラシックは36勝目になるそうです。また英愛ギニー連覇は、1969年にライト・タック Right Tack が初めて達成して以来、チャーチルが9頭目。オブライエン師にとってもロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar 、ヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator 、グレンイーグルス Gleneagles に続く4頭目となります。ライアン・ムーアは、一昨年のグレンイーグルスに続く2度目の愛2000ギニーとなりました。
チャーチルの次走はロイヤル・アスコットのセント・ジェームス・パレス・ステークス、オッズはイーヴンから4対6と本命は動かないところでしょう。今回は重馬場の1マイルを楽勝したことで、シーズン後半には10ハロンに挑む可能性もありそう。未だ未だ成長を継続中のチャーチルです。
土曜日の最後はランウェイズ・スタッド・ステークス Lanwades Stud S (GⅡ、4歳上牝、1マイル)。僅か5頭立てとなりましたが人気は割れ、今期ドバイでGⅡ戦に勝って来たオパール・ティアラ Opal Tiara と、前走ブルー・ウインド・ステークス(GⅢ)を制したターレット・ロックス Turret Rocks が5対2で並んでの1番人気。
人気馬が牽制し合う中を逃げたのは3番人気(3対1)のクレッグス・パイプス Creggs Pipes 、そのまま2番手を進んだオパール・ティアラに3馬身4分の3差を付ける逃げ切り勝ちです。3番手に付けたターレット・ロックスがそのまま1馬身半差で3着に入り、出走馬5頭はスタートからゴールまで同じ順番、差が開いただけという単調なレース内容でした。
クレッグス・パイプスはアンドリュー・スラッタリー厩舎、デクラン・マクドナー騎乗の5歳馬で、前走ブルー・ウインド・ステークスはターレット・ロックスの3着。前走より距離が2ハロン短かったことが、逆転の要因と言えそうです。これがG戦初勝利。
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