2017クラシック馬のプロフィール(8)
このコーナー、今年も残り少なくなってきましたが、今回は愛ダービーを制したカプリ Capri の血統です。後で判明したことですが、英ダービー馬ウイングズ・オブ・イーグルス Wings of Eagles が競走生命を絶たれるほどの骨折をしてもの僅差3着。アクシデントがなければこのコーナーは無かったかもしれません。
しかし競馬は結果が全て、気持ちを切り替えてカプリをウォッチングして行きましょう。
カプリは父ガリレオ Galileo 、母ディアラファラ Dialafara 、母の父アナバー Anabaa という血統。父については紹介するまでもないでしょう。今回はいきなり牝系に入ります。
さてこのファミリーは長年に亘ってフランスの名門牧場がその血を継承してきたもので、その辺りはおいおい触れることになるでしょう。で、ディアラファラ(2007年 芦毛)は、アガ・カーンが生産・所有し、アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ師が管理してフランスのローカル競馬のみで走った馬。4戦1勝が戦績の全てですが、ザッと紹介すると、
デビューは3歳の6月、フォンテンブロー競馬場の2000メートル戦で15頭立ての4着。同じ6月の第3週にクロワーズ=ラロッシュ競馬場の9頭立て2500メートル戦で初勝利を挙げます。
7月にはヴィシー競馬場のリステッド戦、マダム・ジャン・クートリー賞という2000メートル戦に臨みましたが、8頭立ての最下位に敗退。8月中旬にはシャトーブリアン競馬場の2600メートル一般戦に出走し、8頭立ての5着に終わったのが成績の全てです。
つまり、最初から2000メートル以上のレースに絞って出走し、勝鞍は2500メートルと言うステイヤーだったと判断して良さそうです。2011年から繁殖に上がり、ここまでの産駒は、
2012年 ジャマイカ Jamaica 芦毛 牡 父ガリレオ クールモア・グループが購入し、エイダン・オブライエン厩舎で4戦1勝3着1回。勝鞍は2歳時ゴールウェイの7ハロン戦で、アコーム・ステークス(GⅢ)4着。3歳時はレバーズタウン2000ギニー・トライアル(リステッド戦)5着のみ。
2013年 ソヴリン・パレード Sovereign Parade 鹿毛 牝 父ガリレオ ゴスデン厩舎で2戦1勝。3歳時ソールズベリーの10ハロン戦でデビュー勝ちし、ロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークス(GⅡ、12ハロン)に挑戦して7着という成績が全て。やはりステイヤー。
2014年 カプリ
2代母ディアミリナ Diamilina (1998年 芦毛 父リナミックス Linamix)は、ジャン=リュック・ラガルデール氏の生産馬で、アンドレ・ファーブル師が管理し、7戦4勝2着2回という成績を残した馬。
フランスの2歳チャンピオン決定戦のレース名にその名を遺すラガルデール氏は、フランスの実業界で活躍した富豪で、フランス競馬の統括団体であるフランス・ギャロの総裁を務めた競馬人でもありました。
1981年に名門フランソワ・デュプレ氏の競馬王国を引き継ぎ、2003年に死去するまでフランス競馬界に君臨、というか貢献した功績を讃えて、それまでグラン・クリテリウムと呼ばれていたレースがジャン=リュック・ラガルデール賞に変更されたわけです。
2003年の死去に伴い、息子が全ての競馬遺産をアガ・カーンに売却。その結果、デュプレ→ラガルデール→アガ・カーンという流れが続き、これにクールモアの資産が加わって生まれたのがカプリであるとも言えるでしょう。
さてラガルデール氏の勝負服で走ったディアミリナ、2戦目で初勝利を挙げると、それから一気に4連勝してマユレ賞(GⅡ、2400メートル)、ノネット賞(GⅢ、2200メートル)とG戦も連勝。準クラシックの大一番ヴェルメイユ賞(GⅠ)で2着し、凱旋門賞にも駒を進めましたが11着。これが彼女が味わった唯一の着外でもありました。
ディアミリナの産駒では、カプリの母ディアラファラの他に、2歳時にコンデ賞(GⅢ)で2着したディアグハン Diaghan という馬がいます。
3代母ディアモナカ Diamonaka (1990年 芦毛 父アカラッド Akarad)もまたラガルデール氏の自家生産馬で、当時はフランソワ・ブータン師がラガルデール・グループの馬を調教しており、5戦1勝2着2回。その2着は、娘ディアミリナが勝ったマユレ賞と、同じく長距離のロヨーモン賞。彼女もまたスタミナで勝負するタイプの馬でした。
ディアモナカの産駒では、ディアミリナの姉に当たるディアモニクサ Diamonixa が仏オークスのトライアルであるペネロープ賞(GⅢ)に勝っており、スプリンターのグリーン・デザート Green Desert を父に持つ弟ダイアモンド・グリーン Diamond Green がラ・ロシェット賞(GⅢ)に勝って、仏2000ギニー、セント・ジェームス・パレス・ステークス、ムーラン・ド・ロンシャン賞で何れも2着に入るマイラーでした。
4代母ダイアモンド・シール Diamond Seal (1984年 芦毛 父パーシャン・ボールド Persian Bold)はアイルランド産で、10戦3勝。G戦クラスの実績はありませんでしたが、やはりペネロープ賞勝馬のダイアモンド・ダンス Diamond Dance 、グレフュール賞(GⅡ)に勝ってパリ大賞典で3着したダイヤモンド・ミックス Diamond Mix を出しています。
5代母パンセリナ Panserina (1978年 芦毛 父ソヴリン・パス Sovereign Path)は1戦未勝利馬で他に目立った産駒もありませんが、母、つまりカプリの6代母に当たるパンパリナ Pampalina (1964年 鹿毛 父バイラム Bairam)は愛オークス馬です。
パンパリナは母としても成功し、愛2000ギニー馬パンパパウル Pampapaul を産んだ他にも、娘のスイート・イナフ Sweet Enough がイタリアの短距離重賞プリミ・パッシ賞(GⅢ)勝馬シュトルツィング Stolzing を、別の娘パンタメーラ Pantamerla も孫にゴードン・リチャーズ・ステークス(GⅢ)勝馬ノーブル・ペイトリアーク Noble Patriach を出しています。
更に7代母パドゥス Padus にまで遡ると、パンパリナの2年姉に当たるショート・コモンズ Short Commons がダイアモンド・ジュビリー・ステークスのヒー・ラヴズ・ミー He Loves Me を出した他、
娘のショート・レイションズ Short Rations がシドニー・カップのマルーンド Marooned 、愛セントレジャーのアークティック・オウル Arctic Owl を出し、娘マッチ・トゥー・リスキー Much Too Risky の娘たちが日本に輸入され、安田記念のアサクサデンエン、皐月賞・有馬記念のヴィクトワールピサ、阪神ジュヴェナイルフィリーズのロープディサージュを産んで我が国にも枝葉を広げているのです。
以上、カプリの牝系は父によっては短距離馬やマイラーも出ているものの、基本的にはスタミナを紡いできたファミリー。これにガリレオが入ったカプリは、やはりセントレジャー向きの馬と考えるのが自然じゃないでしょうか。
ファミリー・ナンバーは8-d。1868年生まれのフェロニア Feronia を基礎とする牝系です。
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