ポール・パレー指揮ニューヨーク・フィル
ニューヨーク・フィル・シリーズ、今回はフランスの名匠ポール・パレーです。
パレーはフランスの名指揮者ですが、作曲家でもありました。作曲家としては有名なローマ大賞も受賞しています。ラムルー管、モンテ・カルロのオケ、コロンヌ管などの指揮者を務めた後、アメリカのデトロイト交響楽団の音楽監督(1952-1963)を長く務めましたね。その当時の演奏は大量にマーキュリーに録音され、その高音質も手伝って現在も現役盤として聴かれています。
残念ながら来日することがなかったので、パレーがどのようなプログラムを組んでいたのか、一般にはあまり知られていないと思います。
その意味で、以下のニューヨーク・フィルとのプログラムを紹介しておきましょう。
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1956年11月15・16日 カーネギーホール
ハイドン/交響曲第96番
モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調K466
バロー/「ある魂への捧げ物」
ドビュッシー/「海」
指揮/ポール・パレー
ピアノ/クララ・ハスキル
1956年11月17・18日 カーネギーホール
ハイドン/交響曲第96番
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
シャブリエ/スペイン狂詩曲
ドビュッシー/「海」
指揮/ポール・パレー
ヴァイオリン/トッシー・スピヴァコフスキー
1956年11月22・23日 カーネギーホール
カウエル/弦楽オーケストラのための讃歌とフーガ風音楽第2番
シューマン/交響曲第4番
バルトーク/ピアノ協奏曲第2番
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ゲザ・アンダ
1956年11月24日 カーネギーホール
カウエル/弦楽オーケストラのための讃歌とフーガ風音楽第2番
シューマン/交響曲第4番
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番
指揮/ポール・パレー
チェロ/アルド・パリソー
1956年11月25日 カーネギーホール
カウエル/弦楽オーケストラのための讃歌とフーガ風音楽第2番
シューマン/交響曲第4番
リスト/ピアノ協奏曲第1番
フォーレ/「ペレアスとメリザンド」組曲
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ゲザ・アンダ
1956年12月6・7日 カーネギーホール
プロコフィエフ/古典交響曲
ドヴォルザーク/ヴァイオリン協奏曲
シューベルト/交響曲第7番「ザ・グレイト」
指揮/ポール・パレー
ヴァイオリン/ジョン・コリリアーノ
1956年12月8日 カーネギーホール
プロコフィエフ/古典交響曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調K488
シューベルト/交響曲第7番「ザ・グレイト」
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ロベール・カサドシュ
1956年12月9日 カーネギーホール
モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調K488
フランク/交響変奏曲
シューベルト/交響曲第7番「ザ・グレイト」
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ロベール・カサドシュ
1957年4月4・5日 カーネギーホール
ヘイデン/管弦楽のための情景「ユーフォリオン」
ルーセル/バレエ「蜘蛛の饗宴」
ショパン/ピアノ協奏曲第2番
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」ワルキューレの騎行
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ヴィトールド・マルクジンスキ
1957年4月6日 カーネギーホール
ラロ/歌劇「イスの王」序曲
ルーセル/バレエ「蜘蛛の饗宴」
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」ワルキューレの騎行
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
指揮/ポール・パレー
ヴァイオリン/ジノ・フランチェスカッティ
1957年4月7日 カーネギーホール
ラロ/歌劇「イスの王」序曲
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」ワルキューレの騎行
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
指揮/ポール・パレー
ヴァイオリン/ジノ・フランチェスカッティ
1959年3月19・20・21・22日 カーネギーホール
ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」序曲
シャブリエ/ブーレー・ファンタスク
フォーレ/「ペレアスとメリザンド」組曲
ラヴェル/ラ・ヴァルス
サン=サーンス/交響曲第3番
指揮/ポール・パレー
1961年1月12・13・14・15日 カーネギーホール(14日はブルックリン)
ロッシーニ/歌劇「絹の梯子」序曲
グールド/ピアノと弦楽オーケストラのための対話
ベルリオーズ/劇的物語「ファウストのごう罰」3つの管弦楽曲
シベリウス/交響曲第2番
指揮/ポール・パレー
ピアノ/モートン・グールド
1961年1月19・20・21・22日 カーネギーホール
ロパトニコフ/祝典序曲
プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番
フランク/交響詩「プシケ」
ベートーヴェン/交響曲第2番
指揮/ポール・パレー
ピアノ/ザーデル・スコロフスキー
1961年11月9・10・11・12日 カーネギーホール
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
ベートーヴェン/交響曲第6番
ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ワーグナー/歌劇「ローエングリン」前奏曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
指揮/ポール・パレー
1961年11月16・17・18・19日 カーネギーホール
メンデルスゾーン/「フィンガルの洞窟」序曲
シューマン/交響曲第2番
ショパン/ピアノ協奏曲第2番
ラヴェル/ボレロ
指揮/ポール・パレー
ピアノ/フー・ツォン
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最初のプログラムにあるラボー Henri Rabaud (1873-1949) はパリに生まれてパリで没した作曲家兼指揮者です。彼もまたローマ大賞を受賞(カンタータ「ダフニス」で)していますから、パレーにとっては大先輩に当たりますね。1918年から1919年の短期間、ボストン交響楽団の指揮者も務めていましたから、この面でもパレーの先を行っていたことになるでしょう。
Offrande a une Ombre は「ある魂への捧げ物」と訳しておきましたが、日本で何と表記されているのか判りません。この曲もデトロイト交響楽団とのマーキュリー盤が残っていますから、現在でも視聴可能です。
カウエル Henry Cowell (1897-1965) はカリフォルニアのメンロ・パークという所で生まれ、ニューヨークで没したアメリカの作曲家兼ピアニストです。3歳でヴァイオリンを弾き、11歳で最初の作品を書いていますから、ま、天才でしょう。作品は所謂アヴァン・ギャルドと呼ばれる手法で、クラスターなども多用しています。ピアノに色々仕掛けを施して、不思議な音を出す作品もありますね。
異文化に興味を持っていた人で、東洋の楽器を取り入れた作品も多数残されています。日本音楽の影響下に、正に“Ongaku”という作品もあるほど。
パレーが取り上げた Hymn and Fuguing Tune という作品は、逆にアメリカの古い文化に根ざした作品で、一連のシリーズになったもの。その第2番が演奏されていますが、このシリーズは確か16番まで書かれていると思います。
1957年4月のヘイデン Heiden という人については全く資料がなく、詳細は不明です。
1961年1月のグールドは、もちろんモートン・グールド Morton Gould (1913-1996) のこと。ニューヨーク州生まれでフロリダ州で没した作曲家・指揮者・ピアニスト。NBCとCBSという放送畑で大活躍しましたね。ジャズなどアメリカのポピュラー音楽を積極的に取り込んだ人で、華麗なオーケストレーションで人気を博しました。日本では黒人霊歌交響曲というのが有名でしたよ、ね。
同じく1月に取り上げたロパトニコフ Nikolai Lopatnikov (1903-1976) はロシア生まれの作曲家。ペテルブルグ音楽院で学び、ロシア革命によりアメリカに亡命、1944年にアメリカ国籍を取得しています。ストラヴィンスキーやヒンデミットの影響があると言われていますが、私はこの人の音楽を聴いたこともありませんし、資料もほとんどないのでこの程度。
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