フリッツ・ライナー指揮ニューヨーク・フィル
期待していたアイルランドの競馬は雨で中止になるし、いつまでも蒸し暑くて動きが取れません。集中力を少しでも維持するため、ニューヨークフィル・ネタを復活させました。
今回はハンガリーの名匠フリッツ・ライナー(1888-1963)です。ライナーと言えばシカゴ交響楽団ですが、ニューヨークにも度々客演しています。メトロポリタン歌劇場の首席指揮者もやっていましたからね。そのニューヨーク・フィルとのプログラムです。
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1943年1月14・15日 カーネギーホール
ストラヴィンスキー/交響詩「夜鳴き鶯の歌」
ショスタコーヴィチ/交響曲第6番
ムソルグスキー=ラヴェル/組曲「展覧会の絵」
指揮/フリッツ・ライナー
1943年1月17・19日 カーネギーホール(19日はコネチカット州での楽旅)
プロコフィエフ/古典交響曲
ショスタコーヴィチ/バレエ組曲「黄金時代」ポルカとダンス
チャイコフスキー/イタリア奇想曲
ムソルグスキー=ラヴェル/組曲「展覧会の絵」
指揮/フリッツ・ライナー
1943年1月21・22日 カーネギーホール
ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」序曲
ハイドン/交響曲第102番
バルトーク/2台ピアノと管弦楽のための協奏曲
ブラームス/ハンガリー舞曲集第5・6・7・21番
R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ・デュオ/ベラ・バルトーク、ディッタ・パストリー・バルトーク
1943年2月24日 カーネギーホール
ハイドン/交響曲第102番
ドヴォルザーク/ヴァイオリン協奏曲
リーガー/「新しい舞曲」~フィナーレ
J.シュトラウス/円舞曲「ウィーン気質」
R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
指揮/フリッツ・ライナー
ヴァイオリン/ジョン・コリリアーノ
1943年3月25・26日 カーネギーホール
ウィリアム・シューマン/「祈り 1943」
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
ブラームス/交響曲第2番
指揮/フリッツ・ライナー
ヴァイオリン/ヨゼフ・シゲティ
1943年3月27日 カーネギーホール
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲へ長調K459
モーツァルト/セレナード第13番K525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツァルト/交響曲第39番
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/オルテンセ・モナース
1943年3月28日 カーネギーホール
モーツァルト/セレナード第13番K525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
ウィリアム・シューマン/「祈り 1943」
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
指揮/フリッツ・ライナー
ヴァイオリン/ヨゼフ・シゲティ
1943年3月31日、4月1日 カーネギーホール
ガーシュイン=ロドニー・ベネット/交響的絵画「ポーギーとべス」
ドビュッシー/イベリア
チャイコフスキー/交響曲第6番~第2楽章(3月31日のみ)
チャイコフスキー/交響曲第5番
指揮/フリッツ・ライナー
1943年4月3・4日 カーネギーホール
ガーシュイン=ロドニー・ベネット/交響的絵画「ポーギーとべス」
シューマン/チェロ協奏曲
メンデルスゾーン/交響曲第4番
指揮/フリッツ・ライナー
チェロ/グレゴール・ピアティゴルスキー
《第1回サマー・シーズン》
1943年8月1日 カーネギーホール
ワーグナー/楽劇「パルシファル」前奏曲
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕~イゾルデの語り
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
R.シュトラウス/楽劇「サロメ」七つのヴェールの踊りと終幕
指揮/フリッツ・ライナー
ソプラノ/マージョリー・ローレンス
1943年8月8日 カーネギーホール
ベートーヴェン/「プロメテウスの創造物」序曲
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番
コープランド/サロン・メキシコ
ガーシュイン=ロドニー・ベネット/交響的絵画「ポーギーとべス」
指揮/フリッツ・ライナー
ヴァイオリン/ジョン・コリリアーノ
1943年8月15日 カーネギーホール
カバレフスキー/「コラ・ブルニョン」序曲
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチ/交響曲第6番
指揮/フリッツ・ライナー
ヴァイオリン/ナタン・ミルシテイン
《第2回サマー・シーズン》
1944年6月18日 カーネギーホール
プロコフィエフ/組曲「キージェ中尉」
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/ウイリアム・カペル
1944年6月25日 カーネギーホール
ベートーヴェン/「プロメテウスの創造物」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番
ベートーヴェン/交響曲第4番
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/アニア・ドルフマン
1944年7月2日 カーネギーホール
ワーグナー/歌劇「リエンツィ」序曲
ワーグナー/歌劇「タンホイザー」ヴェヌスブルクの音楽
ワーグナー/楽劇「パルシファル」抜粋
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」抜粋
指揮/フリッツ・ライナー
1944年7月16日 カーネギーホール
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
ベートーヴェン/交響曲第7番
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/ルドルフ・ゼルキン
1944年7月23日 カーネギーホール
ムソルグスキー=ショスタコーヴィチ/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」モノローグと幻覚の場
ムソルグスキー=ショスタコーヴィチ/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」別れの場
チャイコフスキー/交響曲第5番
指揮/フリッツ・ライナー
バス/アレキサンダー・キプニス
《第3回サマー・シーズン》
1945年4月22日 カーネギーホール
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」
チャイコフスキー/交響曲第6番
指揮/フリッツ・ライナー
1945年4月29日 カーネギーホール
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
R.シュトラウス/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/ロベール・カサドシュ
《通常シーズン》
1960年3月10・11・12・13日 カーネギーホール
コダーイ/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲
バルトーク/バレエ組曲「中国の不思議な役人」
ブラームス/交響曲第2番
指揮/フリッツ・ライナー
1960年3月17・18・19・20日 カーネギーホール
ストラヴィンスキー/バレエ「妖精の口づけ」ディヴェルティメント
バルトーク/ピアノ協奏曲第1番
ムソルグスキー=ラヴェル/組曲「展覧会の絵」
指揮/フリッツ・ライナー
ピアノ/ルドルフ・ゼルキン
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以上です。
1940年代は、主にサマー・シーズンで指揮を執りました。サマー・シーズンについてはブルーノ・ワルターの記録集を参照して下さい。
ライナーはこの後、1960年3月に1度だけ客演しています。
1943年1月の記録で注目すべきは、何と言ってもバルトーク夫妻との2台ピアノ協奏曲の演奏でしょう。これはアメリカ初演です。
一部の資料では世界初演と誤って伝えられているようですが、世界初演は1942年11月14日、ロンドンのアルバート・ホールでボールトの指揮、ルイス・ケントナーとイオナ・カボスのソロで演奏されていました。
ライナー指揮で珍しいレパートリーとしては、43年1月のリーガー作品でしょう。
ウォーリングフォード・リーガー Wallingford Riegger (1885-1961) はジョージア州で生まれニューヨークに没したアメリカの作曲家兼指揮者。19世紀のスタイルから出発しましたが、シェーンベルクの12音技法の影響でスタイルを変えた人ですね。
バレエの振付師との協力関係が深かった人で、多くのダンス音楽の作品が残されています。ライナーが取り上げたものもそうしたものの一つ。1935年の作品です。これはライナーではありませんが、戦前にビクターからSP盤が出ていました。
ウイリアム・シューマン william Schuman (1910-1992) については説明の必要はないでしょう。ニューヨークに生まれて没したニューヨーカー。ピューリッツァ賞受賞作曲家で、ジュリアード音楽院の校長を長く務めた人で、正にニューヨークの顔でした。
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