読売日響・第505回名曲シリーズ

東京はずっと雨続き。夏の終焉を感じさせる小雨が降る中、サントリーホールで読売日響を聴いてきました。8月の名曲シリーズ。
伊福部昭/日本狂詩曲
リスト/ハンガリー狂詩曲第2番
エネスコ/ルーマニア狂詩曲第1番
     ~休憩~
ディーリアス/ブリッグの定期市-イギリス狂詩曲
ラヴェル/スペイン狂詩曲
 指揮/井上道義
 コンサートマスター/藤原浜雄
 フォアシュピーラー/小森谷巧
見てのとおり、ラプソディー特集です。いかにもミッチーこと井上道義らしいプログラム。彼のダンスとも指揮ともつかない不思議な動きが見事に嵌り、8割ほど埋まった客席を沸かせました。
狂詩曲を並べただけのように見えますが、良く見れば、休憩を挟んで後半は内容的にもやや真面目というか、シリアスなもの。対して前半は「ラプソディー」のスタイルを徹底したもので、楽しさ追求型の音楽。
終わってみれば前半と後半を入れ替えたほうが、いや、曲順を全く逆にした方が、より盛り上がったかも知れないな、という印象を持ちました。
つまり、冒頭の伊福部が圧巻。井上の指揮も、いわゆる指揮法の教科書風なものとは対極。インクと紙で出来たスコアから無尽蔵と言えるほどの面白さを引き出し、音にして見せたのはさすが。指揮棒を一切使わず、足踏みあり、両手のグルグル回しあり、呆気に取られて見入ってしまいました。
音楽もまた素晴らしい。伊福部昭、彼は最初から天才でしたね。これを見出したチェレプニンという作曲家も大したモンです。
日本狂詩曲をレコードでしか聴いたことがない方、この曲の素晴らしさを半分も味わっていないことになりましょう。特に第2曲の弦楽器の特殊奏法は、目で見てナンボの世界ですしね。
私の定席は1階6列。ここからは打楽器の面々はほとんど見えません。ですから確信はありませんが、どうやら東洋の特殊な打楽器も使っていたように聴こえました。西洋クラシックでは耳慣れない響きがしていましたから。
幸いこの夜はテレビ・カメラが多数入っていました。多分、読売系で放送されるでしょう。であれば、これは必見。伊福部の音楽、多様な打楽器、井上のノリノリの指揮を見るべし。尤もアンチ井上という向きには薦めませんが・・・。
結局のところ、コンサートの最初に超名演の日本狂詩曲でホールを沸かせたこと、これが雨雲を吹き払ってしまったようで、あとはお馴染のラプソディーが次々と楽しく繰り広げられます。こういうコンサートで難しいことを言っちゃイカンよ。
日本の冒頭とルーマニアで矍鑠たるソロを聴かせたソロ・ヴィオラの生沼晴嗣、ハンガリーで鮮やかな技巧を披露したクラリネットの藤井洋子が、特に大きな喝采を浴びていました。
特に生沼氏、彼は確か巌本真理弦楽四重奏団の最後のヴィオリストでしたよね。こういう重鎮が座っている読響、それだけのことはあるぞ。
このプログラム、1回だけというのは、チョッともったいない。

 

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