読売日響・第153回芸術劇場名曲シリーズ

昨日は池袋の東京芸術劇場で読売日響の芸劇名曲シリーズを聴いてきました。私はこのシリーズは会員ではないので、1回券ピック・アップです。もちろんスクロヴァチェフスキの指揮だから。以下の内容。
シューマン/交響曲第2番
     ~休憩~
R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
 指揮/スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
 コンサートマスター/藤原浜雄
 フォアシュピーラー/小森谷巧
現在の読響は主なシリーズが5種類あり、シリーズ名とはかけ離れたプログラムが組まれることが多いように感じます。他のオーケストラなら充分に「定期演奏会」に匹敵する内容が、「名曲」というタイトルのコンサートにも組まれる。そろそろシステムを見直して、色分けを鮮明にした方がスッキリするのでは、と素人考えで思ってしまうのです。
この日もシューマンとシュトラウスの大曲が2曲。全体としては短かめのコンサートですが、音楽の内容も演奏の質も、とても名曲をリラックスして楽しむようなものではなかった、と思います。ま、それでもスクロヴァ首席としては、一服感のある演奏の積りだったのでしょうか。
最初のシューマン、とにかくテンポが速く、とても80の坂を越した老巨匠の枯れた境地には聴こえません。特に第2楽章や終楽章の息も吐かせぬ快速感は、マエストロが読響の実力を熟知しているからこそ採用できたテンポでしょう。行きずりの客演では、こんな危険は冒さないと思います。
それでも歌うべきは歌う。「歌うアレグロ」というのが私の第一印象ですが、「歌うプレスト」と言い換えたほうが良いかも知れません。
第1楽章の対位法的扱い、2拍目に置かれたアクセントの巧みな扱い、何処にも作曲家スクロヴァチェフスキのクリティカル・アイが光っているのが明瞭に聴き取れます。傑出したシューマン演奏。
後半のシュトラウス。これはもう、オーケストラの実力、パワーが全開で、我々はただ座して、オーケストラ音楽の醍醐味に浸っていれば良いのです。
シュトラウスの作品の多くは、オケのソロ・プレイヤー達の技量が優れていなければどうにもならないような曲が多く、その意味でも読響は世界を見渡しても確実に5本指に入る実力。その高度なオケ・サウンドを堪能してきました。
(その事実は、今日のコンマス二人が共通に確信していることで、そのことを日本の批評家・多くの聴衆が正しく認識していないことを指摘していた文章を読んだことがあります。こともあろうに、一番判っていないのがスポンサーである某放送局という嘆かわしい現実)
ですからツァラトゥストラをナマで体験したときは、演奏の難しい大曲を聴いた、という感想になるはずですが、スクロヴァチェフスキ/読売日響の演奏では、何か軽いオーケストラ組曲でも聴いたような錯覚に囚われてしまいます。例のトランペットの難所、他のオケ(海外の有名オケも含めて)では“上手くいくだろうか”という不安と共に聴くのが常ですが、長谷川首席の手にかかれば、安心して椅子に深く腰を沈ませていられる。
贅沢な話ですが、不満があるとすれば、この辺かも。
スクロヴァチェフスキは必ずしもシュトラウスを全面的に認めている指揮者ではありません。読響とのインタヴューでも、「英雄の生涯」は共感できず決して振らない、と語っていましたから。その辺りが、シューマン演奏との温度差だったのかも知れません。些細なことですが・・・。
今日のプログラムに、“読売日響「第9代常任」にシルヴァン・カンブルラン氏”というペラ紙が挟まれていました。噂には聞いていましたが、これで決定なんですね。任期は2010年4月から2013年3月までの3年間の由。
“カンブルランねぇ~”というのが私の正直なキモチ。スクロヴァチェフスキは高齢ですから致し方ないとしても、この新常任にしても、せいぜい年間3回程度の来日になるような気がします。思い切って下野竜也を常任に据え、少なくとも年間コンサートの半分くらいを任せることが出来ないものか。
読響の設立当初のモットーに、海外の有名指揮者による演奏の提供、というのがありましたが、ほぼ半世紀を経過した今、日本人の指揮者事情は当時とは比べ物になりません。
誤解を恐れずに言えば、潤沢な報酬を用意して優れたプレイヤーと有名指揮者・ソリストを迎えることだけが、オーケストラのあり方ではないと思うのです。
皮肉にも、今日も都内別オケの正規メンバーがエキストラとして参加していました。得意の引き抜き作戦でなければよいのですが・・・。
カンブルラン時代、私もそろそろコンサート通いの転機を考えねばなりますまい。

 

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