アイルランド、シーズン最後のGⅠシリーズ

昨日のブログでも紹介しましたが、今週末のヨーロッパは注目レースが目白押し。日曜日はアイルランドとフランスで合計11鞍ものG戦が行われました。
日本の諸兄にとってはサトノダイヤモンド惨敗のフォア賞が気になる所でしょうが、当欄は順序としてアイルランドから始めます。緯度の高いアイルランドは、この日が事実上のシーズン・フィナーレでもあり、この後は落穂拾い的なG戦を残すのみとなります。
それでは5鞍のG戦をレース順に見て行きましょう。馬場は極めて悪く、第2レース以降は直線コースが soft to heavy に、周回コースは soft へと一段と重くなりました。

カラー競馬場、G戦第一弾はブランドフォード・ステークス Blandford S (GⅡ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。9頭が出走し、仏1000ギニー2着馬で前走ヘイドックのリステッド戦を制した英国馬シー・オブ・グレース Sea Of Grace が5対4の1番人気。
レースは5番人気(9対1)まで人気を落としていたシャムリーン Shamreen が逃げ、シー・オブ・グレースは後方7番手から。しかし馬場が重いこともあって後方待機馬は伸びず。そのままシャムリーンが2番手を追走していた6番人気(16対1)のビューティフル・モーニング Beautiful Morning に3馬身差を付けて逃げ切ってしまいました。5番手から伸びた3番人気(5対1)のレイン・ゴッデス Rain Goddess が首差の3着に入り、シー・オブ・グレースは4着と期待を裏切っています。

名前から想像がつくように、勝ったシャムリーンはアガ・カーンの所有する4歳馬で、デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗。去年のこのレースに続く2連覇ですが、去年より今年の相手の方が骨っぽかったのは事実です。前走ロイヤル・ホイップ・ステークス(GⅢ)に続くG戦連勝で、次は来月のオペラ賞でGⅠ制覇を目指します。
ウェルド師とスマーレン騎手のコンビは前日、レバーズタウンのエンタープライズ・ステークス(GⅢ)をエジーラ Eziyra で制しており、実り多い週末となりました。そのエジーラも来月、GⅠを目指してアスコットに遠征することになるでしょう。

G戦二つ目は、soft to heavy の不良馬場で行われた短距離のフライング・ファイヴ・ステークス Flying Five S (GⅡ、3歳上、5ハロン)。1頭が取り消して11頭立てとなり、ここ2戦は期待を裏切っているカラヴァッジョ Caravaggio に又も期待が掛かって10対11の断然1番人気。
大本命と同厩、9番人気(50対1)のアルファベット Alphabet がペースメーカーとして逃げ、カラヴァッジョは前半スタンドに近い側の8番手待機。しかしレース半ばから進出を開始したカラヴァッジョ、進めば進むほど加速し、最後は逃げ粘るアルファベットに1馬身差を付けて堂々期待に応えました。6番手を進んだ4番人気(9対1)のサン・オブ・レスト Son Of Rest が1馬身4分の1差で3着。

結局2頭出しのエイダン・オブライエン厩舎のワン・ツー・フィニッシュで、カラヴァッジョはもちろんライアン・ムーア騎乗。デビューから6連勝でコモンウェルス・ステークス(GⅠ)を制した時は連勝記録を何処まで伸ばすかと思われましたが、ニューマーケットのジュライ・カップ(GⅠ)では思わぬ4着敗退。続く前走ドーヴィルのモーリス・ド・ギースト賞(GⅠ)でも6着と連敗しましたが、フランスでは蹄鉄が合わなかったとのこと。今回は距離もグレードも一段下げ、かつてのカラヴァッジョが復活しました。
来月アスコットのチャンピオン・シリーズで行われるスプリント(GⅠ)のオッズは、レース前の8対1から5対1へと再び上昇してきました。

ここからはアイルランド最後のGⅠ戦シリーズ、最初のモイグレア・スタッド・ステークス Moyglare Stud S (GⅠ、2歳牝、7ハロン)は2頭が取り消して8頭立て。出れば本命になる筈だったクレンミー Clemmie を予定していたライアン・ムーアは、替わってマジカル Magical を選んで9対4の2番人気。マジカルに載る筈だったドナック・オブライエンも4番人気(13対2)のハッピリー Happily に替わるというスクランブルがありましたが、オブライエン軍団を抑えて2対1の1番人気に支持されたのは、ロイヤル・アスコットのアルバニー・ステークス(GⅢ)微差2着以来となるアルファ・センタウリ Alpha Centauri でした。
ダッシュ良く飛び出したのはハッピリーでしたが、直ぐにマジカルが交わしての逃げ。しかし一旦は3番手に控えたハッピリーが再び盛り返し、最後はマジカル対ハッピリー。結局ハッピリーが寮馬マジカルを短頭差制して優勝し、6番手から伸びた3番人気(4対1)セプテンバー September の3着と併せてオブライエン厩舎のお馴染みワン・ツー・スリーに。1ハロンから2番手に上がっていたアルファ・センタウリは、結局は5着に沈んでいます。

勝ったハッピリーは、前走デビュタント・ステークス(GⅡ)ではマジカルの2着していた馬。今回は逆転でのGⅠ戦初制覇となりました。来年の1000ギニーのオッズは、レース前の12対1から8対1に上昇。血統的には姉のマーヴェラス Marvelous が愛1000ぎーに馬、兄グレンイーグルス Gleneagles も2000ギニーと愛2000ギニーの二冠馬。更には前日愛チャンピオンを制したデコレイテッド・ナイト Decorated Knight とも2代母を同じにする良血。クラシックを獲って下さい、と言わんばかりのファミリーなのですね。
ハッピリー、マジカル、そして馬場を理由に取り消したクレンミーは、夫々マルセル・ブーサック賞、フィリーズ・マイル、チーヴリー・パーク・ステークスへと、夫々のGⅠ奪取に向かう予定。どれがどのレースかは、全てラッド達が決めることになるのがオブライエン流です。

続いては2歳牡馬チャンピオンを決めるナショナル・ステークス National S (GⅠ、2歳牡牝、7ハロン)。ここもオブライエン厩舎のエース格グスタフ・クリムト Gustav Klimt が取り消して7頭立て。結局オブライエン軍団は3頭で臨みましたが、今年はこれを上回りそうなのが、7月1日に行われたレイルウェイ・ステークス(GⅡ)の1・2着馬。勝ったベックフォード Beckford が6対4の1番人気に推され、2着のヴァーバル・デクステリティー Verbal Dexterity が5対2の2番人気で続きます。
ヘファーナンからムーアに乗り替わった3番人気(7対1)のロストロポーヴィチ Rostropovich が逃げましたが、最後は好スタートから2番手に控えたヴァーバル・デクステリティーと、3番手を進んだベックフォードの叩き合い。結局ヴァーバル・デクステリティーがベックフォードに3馬身半差を付ける逆転劇で、逃げたロストロポーヴィチは更に2馬身4分の3差の3着でした。

勝ったヴァーバル・デクステリティーはジム・ボルジャー厩舎、ケヴィン・マニング騎乗で、6月10日にカラーの7ハロンでデビュー勝ち。続く2戦目が上記レイルウェイで、これで3戦2勝で2歳のチャンピオン牡馬のタイトルを手にしました。
来年の2000ギニーのオッズは、レース前の25対1から14対1に上昇。ボルジャー師にとっては4度目のナショナルとなります。これまでの3頭、テオフィロ Teofilo 、ニュー・アプローチ New Approach 、ドーン・アプローチ Dawn Approach は何れもデューハースト・ステークスを制しており、ヴァーバル・デクステリティーも当然ながらデューハーストに向かうでしょう。

カラーの最後は、古馬にも開放されているアイリッシュ・セントレジャー Irish St.Leger (GⅠ、3歳上、1マイル6ハロン)。10頭の参戦がありましたが、やはりここは一昨年の勝馬で、前走トライアル(GⅢ)を制してきたオーダー・オブ・セントジョージ Order Of St Georges が2対5の圧倒的1番人気。
8番人気(28対1)ロード・イェーツ Lord Yeats の逃げを前半6番手で追走した大本命、去年の苦杯の轍を踏まぬよう残り3ハロンで先頭に立つと、後は独走。5番手から追い上げる4番人気(14対1)のターセダー Torcedor に9馬身の大差を付ける圧勝で人気に応えました。3番手を進んだ4番人気(14対1)のマウント・モリアー Mount Moriah が更に4馬身半差で3着。

もちろんオーダー・オブ・セントジョージはエイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗の5歳馬。愛セントレジャーは3歳時に続く2勝目で、GⅠ戦は去年のアスコット・ゴールド・カップを加えて3勝目。今年のゴールド・カップではビッグ・オレンジ Big Orange との死闘の末に僅差2着に敗れていました。
次はメルボルン・カップ(オッズは20対1)に向かうのか、去年3着と意外にも1マイル半に適性を示した凱旋門賞を目指すのか、単なるスタミナ馬に止まらない同馬の動向に注目です。

 

 

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