今週のアスコット
久し振りに競馬の話題です。
凱旋門賞がいよいよ来週に迫り、ヨーロッパ競馬界は嵐の前の静けさ、と言いたいところですが、いろいろなニュースが飛び込んで、結構騒がしい状態になっています。ここでは凱旋門の話題は取り上げません。
で、まず書かなきゃならんのがオブライエン・チームにかけられた疑惑でしょう。
これまで触れませんでしたが、先月行われたヨーク代替ニューマーケットのインターナショナル。公式にはデューク・オブ・マーマレイドの完勝で決着していますが、英国競馬総元締めのBHAが異議を申し立てていました。
このレースでオブライエン・チームが競馬法第153条(4)に触れたのではないか、と。
ルールそのものをチャンと読んでませんからキチンとした物言いはできませんが、要するに、“騎手は、自分が騎乗している馬と同じ馬主の出走馬の利益のために作為的なレースをしてはいかん”というルール。この行為が他馬の進路を妨害するとしないとに拘わらず、結果にも関係なく、ということです。
問題になったのは、デュークと同じ馬主、同じ調教師のレッド・ロック・キャニオンに騎乗したカーム・オダナグー騎手が、ゴール前4ハロンの地点で同馬を内埒からわざと外に出し、デュークのために進路を開けたのではないか、という疑惑。
昨日の木曜日にロンドンで査問会が開かれ、出された結論は有罪、エイダン・オブライエン師には罰金、オダナグーとデュークに騎乗したジョニー・ムルタ騎手には7日間の騎乗停止というもの。
でも安心してください。二人とも凱旋門賞はフランスのため、騎乗できます。対象はイギリスでの競馬。
「チーム・タクティクス」ルール(Team Tactics Rule)と呼ばれる条項、実は2007年3月以降に施行されたルールだそうで、判定には微妙な問題が絡みますよね。レースの流れで、本意ではなくとも「有力馬を勝たせるために作為的な騎乗をした」と取られる場合もあるかも知れん。ま、権威筋が判定することですから、一傍観者がどうこう言うことではないのでしょうが・・・。
今回のケースは、ムルタ騎手とオダナグー騎手が事前に謀議を諮り実行した、と判断されたようですね。ペースメーカーを出す場合は慎重な行動が求められる、ということでしょう。日本では考えられないようなケースですけどね。
これにより、インターナショナルの着順が変更されるということでもないようです。
さて話題変わって、9月27日の土曜日、アスコット競馬場でマイルの頂上決戦が行われます。クイーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル)。枠順が発表されました。
01 レイヴンズ・パス Raven’s Pass
02 タマヤズ Tamayuz
03 オナード・ゲスト Honoured Guest
04 ウィンカー・ワトソン Winker Watson
05 ヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator
06 ラシンガー Racinger
07 サバナ・ペルディダ Sabana Perdida
以上の7頭立て。どれも一度はこの競馬日記に登場した強豪ばかりです。特にヘンリーザナヴィゲイター対タマヤズが専らの話題。愛仏対決でもありますね。
(Tamayuz はタマヤズと表記しましたが、フランス馬ですから「タマユズ」が正しいかも。世間的に安定するまでは混乱するかも知れませんが、悪しからず)
レース前のオッズは、ヘンリーが6対4(2.5倍)、タマヤズは7対4(2.75倍)と拮抗しています。
この2頭対決に警告を発しているのがタイムフォーム。私が最も信頼している競馬専門誌です。
彼らによれば、ヘンリーザナヴィゲイターの前走敗退(ムーラン・ド・ロンシャン賞5着)は一般に言われているような馬場状態が敗因ではなく、明らかに本来の能力を出し切っていないと評価。
一方のタマヤズは、ジャン・プラ賞でレイヴンズ・パスを破っているものの、これまでのレースを能力的に計算すると、まだヘンリーには5ポンドの実力差がある由。
そこで注目はレイヴンズ・パスなのだそうです。前走のグッドウッド、セレブレーション・マイルの圧勝は、戦術的なレースをしなくとも極めて高く評価できるマイル戦だった、と判断しています。現時点でのタイムフォームの能力評価は、
142 ヘンリーザナヴィゲイター
141 レイヴンズ・パス
137 タマヤズ
132 サバナ・ペルディダ
130 ラシンガー
129 ウィンカー・ワトソン
127 オナード・ゲスト
とのこと。レイヴンズ・パスの事前オッズは9対2(5.5倍)くらいですから、馬券の狙い目はレイヴンズ・パスでしょう。さあ、どうなりますかネ。
もう一つ、出走すれば凱旋門賞でも人気になるはずのデューク・オブ・マーマレイド、オブライエン師の最終目標はブリーダーズ・カップ・クラシックにあることは公然の事実です。凱旋門もトライアルの一つ。
実はアスコットと同じ日、イギリスでは何十年か振りに新設された競馬場であるグレート・レイズ Great Leighs にデュークを出走させる意向があったのです。この日のサラブレッド・オープン・クラシック。パターン・レースでも何でもありません。
この日に行われる一連のサラブレッド・オープンは新参者のグレート・レイズ競馬場の最大の目玉で、もしオブライエン勢が出走してくれば競馬場としても大きな宣伝効果になったでしょうに・・・。
最終的にはデュークは回避、オブライエン軍団のもう1頭の有力2歳であるリップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle もサラブレッド・オープン・ジュヴェナイルを取り消してしまいましたので、グレート・レイズは拍子抜けでしょう。
尤もこの競馬場はポリトラック(ウッドチップを敷き詰めたコース)ですから、世界から注目を浴びるのは難しいかも知れません。
デュークが凱旋門に出てくる可能性が無くなったわけじゃありませんが、オブライエンさんとしては、来週金曜日のダンダルク競馬場の小さいレースをトライアルとして渡米する案も浮上しているようです。
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