2017菊花賞馬のプロフィール

クラシック勝馬の血統紹介、今年の最後は不良馬場の菊花賞を制したキセキを取り上げます。キセキは、父ルーラーシップ、母ブリッツフィナーレ、母の父ディープインパクトという血統。

主なテーマは母系を探ることですが、最初は父馬について一言。不良馬場の3000メートルを制するキセキのスタミナについては、やはり父から受け継いだものと見るのが順当ではないでしょうか。ルーラーシップの成績を改めて見直すと、不良馬場の金鯱賞(GⅡ、京都2000メートル)とアメリカ・ジョッキー・クラブ・カップ(GⅡ、中山2200メートル)を制していますが、ダービー(5着)、有馬記念(6着、4着、3着)、宝塚記念(5着、2着)、天皇賞(3着)、ジャパン・カップ(3着)は全て良馬場だったことに気が付きます。

ルーラーシップは2013年から種牡馬になり、キセキは初年度産駒の1頭で、G戦を勝ったのもキセキの菊花賞が初めて。初年度産駒ではキセキの他にキングズラッシュ(芙蓉ステークス)、アディラート(はこべら賞)、イブキ(水仙賞)、プリンセスルーラー(カーネーションカップ)、ビートマッチ(種市特別)、レジェンドセラー(横津岳特別)、ブライトムーン(鳥栖特別)、スペリオルシチー(両津湾特別)があり、2年目の産駒では、現時点では9月の中山で芙蓉ステークスを制したサンリヴァルが只1頭のステークス勝馬です。去年のこの時点でも初年度産駒でステークスに勝ったのが同じ芙蓉ステークスのキングズフラッシュのみだったというのが面白い所でしょう。

父については以上にして、ここからは本題の牝系に移ります。母ブリッツフィナーレ(2008年 鹿毛)は未出走で、何の実績も無いまま繁殖に上がりました。その繁殖成績は、
2012 ジュビリーライン 鹿毛 牝 父スウェプト・オーヴァーボード Swept Overboard 中央と地方で13戦2勝(勝鞍は地方)
2013 ファントムグレイ 芦毛 牡 父クロフネ 中央で20戦未勝利 現役
2014 キセキ

こちらもキセキが最初のステークス勝馬ですが、最初という意味では母の父ディープインパクトも、母の父としては今年の菊花賞がGⅠ戦初勝利だったことを付け加えておきましょうか。
続いて2代母。

2代母ロンドンブリッジ(1995年 栗毛 父ドクター・デヴィアス Dr Devious)は、2歳から3歳まで走って6戦3勝。2歳時にファンタジーステークス(GⅢ)を制し、桜花賞で2着した堂々たるステークス・ウイナーでした。距離不安が囁かれたオークスでは逃げ、結局10着に惨敗。その後に屈腱炎を発症し、そのまま引退して母となります。彼女の繁殖成績も一覧表に纏めておきましょう。
2001 ダイワエルシエーロ 鹿毛 牝 父サンデー・サイレンス Sunday Silence オークス(GⅠ)、クイーン・カップ(GⅢ)、京阪杯(GⅢ)、マーメイド・ステークス(GⅢ) (因みにオークスは稍重)
2002 ビッグプラネット 青毛 牡 父ブライアンズ・タイム Brian’s Time アーリントン・カップ(GⅢ)、京都金杯(GⅢ)
2003 ビッグカポネ 鹿毛 牡 父ブライアンズ・タイム 如意ケ岳特別(京都1400)、戎橋特別(阪神1600)、大須特別(中京ダート1700)、名古屋城ステークス(中京ダート1700)
2004 ダイワデライト 栗毛 牡 父アフリート Afleet ダート1200メートルの特別に5勝
2005 ダイワスピリット 栗毛 牝 父ダンスインザダーク 大倉山特別(札幌1800)
2006 ゴッドフェニックス 黒鹿毛 牝 父ブライアンズ・タイム
2007 レッドステラーノ 栗毛 牝 父アグネスタキオン
2008 ブリッツフィナーレ
2011 サトノエカテリーナ 青鹿毛 牝 父ディープインパクト
2012 グレーターロンドン 鹿毛 牡 父ディープインパクト 節分ステークス(東京1600)、東風ステークス(中山1600)、安田記念4着
2014 ブリッジオーヴァー 黒鹿毛 牝 父エンパイア・メーカー Empire Maker

いきなり初年度産駒にオークス馬を出しましたが、そのあともG戦勝ち馬、特別勝馬が続き、合計6頭のステークス勝馬を出して成功します。

3代母オール・フォー・ロンドン All For London (1982年 鹿毛 父ダンジヒ Danzig)はアメリカ産馬で、ウェイン・ルーカス厩舎に所属して26戦3勝。3勝は全てアローワンス戦で、一般ステークスは少なくとも6回走り、モンマス競馬場のプラチナム・ベル・ステークス、アトランティック・シティー競馬場のオーシャン・シティー・ステークスで夫々2着したのが最高で、G戦の経験はありませんでした(私が調べた限りでは)。
アメリカで繁殖入りしましたが、初年度産駒1頭のみを残して日本に輸出され、その産駒の殆どは日本で走りました。因みに、初年度産駒の牝馬もアルゼンチンに輸出されましたが、未だここからステークスで活躍した馬は出ていないようです。

オール・フォー・ロンドンの産駒で最も競走成績が良かったのはロンドンブリッジで、その前には高湯特別(福島ダート1000)と湘南特別(東京1400)に勝ったオースミファンダー、文月ステークス(阪神1200)勝馬のホウユウピアレスが、またロンドンブリッジの後にはポインセチア賞(阪神ダート1200)のナリタオンザターフと、赤穂特別(阪神ダート1400)と御影特別(阪神ダート1400)を制したビッグロンドンが出ています。

4代母フル・カード Full Card (1975年 鹿毛 父ダマスカス Damascus)からは全て海外の馬で、フル・カードは未出走馬ながらオール・フォー・ロンドンの他にソロリティー・ステークス(GⅢ)に勝ったオフィサーズ・ボール Officers Ball があります。フル・カードの娘ではスルー・オブ・ハーツ Slew of Hearts という牝馬も日本に輸入されていますが、彼女からは未だステークス勝馬は出ていません。

5代母ベル・オブ・ザ・ボール Belle of the Ball (1964年 鹿毛 父プリンス・ジョン Prince John)もまた未出走。フル・カードの一つ下の妹ダンスランド Danceland が、ホイスト・ザ・フラッグ・ステークス(GⅢ)勝馬のシルヴァー・レイ Silver Ray の母になっているのが目立つ程度でしょう。

以上、5代母まで遡って見てもGⅠ級の馬はダイワエルシエーロのみという牝系ですが、更に上の6代母イヴニング・ベル Evening Belle (1945年 鹿毛 父エイト・サーティー Eight Thirty)からはGⅠ戦、あるいはそれに類する大レースを制した馬たちが数多く発見できます。ザッと紹介しておくと、
①イヴニング・ベルの娘イヴニング・アウト Evening Out はマトロン・ステークス、スピナウェイ・ステークス、スカイラーヴィル・ステークス、モンマス・オークス、リグレット・ハンデに勝ち、アルシバイアディーズ・ステークス勝馬ミセス・コーンウォリス Mrs. Cornwallis の2代母でもある。
②イヴニング・アウトの6歳下イヴニング・グロウ Evening Glow の娘テイクン・アバック Taken Aback がスピンスター・ステークスに勝ち、3代娘にプリンセス・ロイヤル・ステークス(現在のアスコット・チャンピオンズ・フィリー・アンド・メア・ステークス)に勝って仏セントレジャーで2着したオールウェイズ・フレンドリー Always Friendly が出ている。
③娘ダンス・ファン Dance Fan はテスト・ステークスのワルツ・ファン Waltz Fan と、イスパハン賞に勝ってチャンピオン・ステークスで3着したラミレス Ramirez の母で、デル・マー・デビュタント・ステークス勝馬らジャズ・デライト Raja’s Delight の2代母でもある。
④テスト・ステークスに勝った娘ベル・ド・ニュイ Belle de Nuit からは4代を経てクリテリウム・ド・サンクルーのパッション・フォー・ゴールド Passion for Gold 、5代を経てフェブラリーステークスのモーニン、6代を経てBCジュヴェナイル・ターフのヒット・イット・ア・ボム Hit It a Bomb とチーヴリー・パーク・ステークスのブレイヴ・アンナ Brave Anna が出ているという具合です。

ファミリー・ナンバーは22-b。1828年生まれのエコー Echo を基礎牝馬とする牝系ですが、このファミリーでは戦前にフリッパンシー Flippancy が輸入されており、その古い流れからセントライト、トサミドリ、ノースガストの3頭がが菊花賞を制していることを付記しておきましょう。ファミリー全体としては、キセキは4頭目の菊花賞馬ということになります。

 

 

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