ピーター・グライムズ再び
放送音楽(音楽番組)ネタにしようかと思いましたが、テレビ放送じゃないのでオペラネタということで・・・。
先般、NHKがハイビジョンでメトロポリタン歌劇場のプロダクションを放送しましたが、2007/2008シーズンの8演目中、流してくれたのは4作品。当初の予定で最も見たかった「ピーター・グライムズ」は没になってしまいました。何故ですかね?
ということで、初めての体験。昨日は時間をこじ開けるようにして、映画館で「メット・ライヴ・ビューイング」を見てきました。東銀座にある東劇。
私は映画を見る習慣がないので、画面も音響も心配です。子供の頃、やたらに大きな音で見た映画がトラウマのようになっているんでしょう。
ですから恐る恐る出掛けたのですが、杞憂でしたね。
映像はハイビジョンですから、遠くから舞台を見るナマよりも迫力があります。
音も6チャンネル。馬鹿みたいな大音量ではなく、適切なバランスで鳴らされていましたから、“これならイケルぞ”という感想。
メットのピーター・グライムズは、ジョン・ドイルの新演出。ミュージカル「スウィーニー・トッド」でトニー賞を受賞した演出家です。
舞台前面に大きな黒壁が立ちはだかっていて、社会の閉鎖性を象徴しています。所々に設けられている窓や扉は、余所者ピーター・グライムズを監視する「目」の象徴。実に重く、暗い舞台を創り出します。
第3幕の最後、冒頭の間奏曲の高いヴァイオリンが戻ってくる箇所で漸く壁が開き、広い舞台に明るさが差し込んでくるという演出。
では鬱々として楽しめなかったか、と言えばそれは逆。リアルな舞台と衣装の効果も満点で、素晴らしいプロダクションでした。
札幌交響楽団の定期と比較するのは野暮というものです。あれはあれ、これはこれで夫々の良さがあります。
プログラムに掲載されていたキャストは、ピーター・グライムズがアンソニー・ディーン・グリファー、エレンはパトリシア・ラチェット、ボルストロードにアンソニー・マイケルズ=ムーア。指揮はスコットランド出身のドナルド・ランニクルズ。これだけですね。
会場は真っ暗ですからメモを取ることも出来ません。そんな中で確認できたのは、セドリー夫人をフェリシティー・パーマーが歌っていたこと。連隊の娘でベルケンフィールド公爵夫人を演じたベテラン。上手いんですよねぇ~、この人。
グリファーはインタヴューでも話していたように、ピーター・グライムズのために生まれてきたような歌手。松本のサイトウキネンでも歌ったそうですし、正に嵌り役です。
この日の舞台裏インタヴュアーは何と、ナタリー・デセイ。この舞台裏からのレポートがライヴ・ビューイングの見所でもあります。
その中でも紹介されていましたが、このプロダクションは初めてオールドバラでも映画館上映された由。現地では250人が楽しんだそうです。
昨日の東劇は、何回か上映された最終回ということもあったのでしょうか、観客は25人でしたけどね。お陰でゆったり、楽々とした観戦で、癖になりそうですよ。
このピーター・グライムズ、見損なった人には朗報です。今年の11月から、EMIミュージック・ジャパンがメットの演目を順次日本語字幕入りDVDで発売するそうです。決まっているのはピーター・グライムズの他に、ラ・ボエーム、マノン・レスコー、マクベス、ヘンゼルとグレーテル、始皇帝。
映画館で見るよりは高いでしょうが、繰り返し見られるのが魅力。映画館とホームシアターの装置の差を確認するのにも良いかも。
さて来シーズン、2008/2009の予定が発表されました。東劇の他でも11月から順次上映されていくようです。ラインナップは、
R.シュトラウス/サロメ
アダムス/ドクター・アトミック
ベルリオーズ/ファウストのごう罰
マスネ/タイス
プッチーニ/つばめ
グルック/オルフェオとエウリディーチェ
ドニゼッティ/ランメルモーアのルチア
プッチーニ/蝶々夫人
ベッリーニ/夢遊病の女
ロッシーニ/ラ・チェネレントラ
個人的には原爆博士、つばめ、夢遊病の女(デセイ主演)は落とせません。
「メット・ライヴ・ビューイング」、これまでは上演時間などの関係で、サラリーマンにとっては縁の遠い企画でした。でも11月以降は、金は無いけれど時間だけは有り余る程の生活に入るメリーウイロウ、これを見逃す手はないでしょ。よし、全演目を制覇しましょう。割引になる回数券もあるそうだし・・・。
東銀座も良いけれど、川崎ラゾーナという手もある。うん。
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