ながらの春 室内楽の和・音楽祭2018

久し振りのブログ更新です。投稿の仕方も忘れちゃいましたけど、何とか思い出しながらやって見ましょう。今回のテーマは、4月4日から8日まで開催されていた表記「ながらの春 室内楽の和・音楽祭」のレポートです。
2018年が第3回となるこの音楽祭については去年、当ブログで大雑把に紹介しておりますので、2017年の様子もご覧ください。

第2回ながらの春 室内楽の和・音楽祭

ということで、今年はこんなプログラムでした。

4月4日(火)14時開演
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第7番
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」
     ~休憩~
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第14番
 クァルテット・エクセルシオ

4月6日(木)14時開演
ハウェルズ/ファンタジー
ラフマニノフ/チェロ・ソナタ~第3楽章
メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番
     ~休憩~
ドヴォルザーク/ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ
ボッケリーニ/弦楽五重奏曲G310作品28-4
 クァルテット・エクセルシオ
 高橋渚(ヴァイオリン)、大友裕子(チェロ)、野本哲雄(ピアノ)、荘司成子(ピアノ)

4月8日(日)11時開演
モーツァルト/フルート四重奏曲第2番
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」
ヴィラ=ロボス/ジェットホイッスル
     ~休憩~
ブロッホ/ヴァイオリンとピアノのための「バール・シェム」~ニーグン(即興)
ドヴォルザーク/ピアノ五重奏曲
 クァルテット・エクセルシオ
 高橋渚(ヴァイオリン)、上野範子(ピアノ)、山野雅美(フルート)

最初に去年と異なる点から。それは上記3回の演奏会に併設して、室内楽のセミナーが行われたこと。演奏会にセミナーが並行して行われる音楽祭は珍しくありませんが、今回から新企画が加わったことで、音楽祭としての内容が更に充実してきたことは間違いないでしょう。セミナーの日程は演奏会の前日に当たる4月3日から始まり、6日までの連日4日間、7日(土)には受講者の成果発表会も行われ、セミナーも発表会も一般に無料で公開されました。

私は演奏会に3日間通いましたが、セミナーはパス。受講された方に伺った所では、アマチュアの団体にプロが加わって行う講習会は普通に行われていますが、ここではエクセルシオの中に受講者一人が加わって弦楽四重奏や五重奏に参加するというスタイルで、滅多に無い機会だったそうな。新たな発見に目から鱗だった由。
生徒としては大変な緊張を強いられそうですが、この方式で腕はめきめきと上達、発表会を聴かれた方は “凄く良い演奏に仕上がってましたよ” とのことで、こちらも大きな成果が上がったとのことでした。

新年度のエクはドヴォルザークがテーマ。初日の弦楽四重奏のみの会はオール・ドヴォルザークで固め、有名なアメリカを挟んで比較的若い頃の第7番、最後の室内楽作品となった14番が並びます。
多くの方が7番は長い、作品としてはやや物足りないという感想。それでもこうした作品と比べられるからこそ、アメリカは改めて名作であるということが実感できます。私も現代音楽ばかり聴いていた頃は “アメリカは通俗で・・・” などと否定的でしたが、歳の所為もあってか、思わずウルウルとしてしまうのでした。

二日目はエクにゴーシュ音楽院の講師陣が加わっての多彩なプログラム。去年はクァルテット・エクセルシオとしての演奏会は初日と3日目だけでしたが、今年はセミナーもあり、エクが全日登場と言うのもこれまでとは違った音楽祭です。冒頭のハウエルズはイギリスの比較的新しい作品で、エクによる純粋な弦楽四重奏曲。今年の初めに大塚のライブハウスでも聴きましたね。
ラフマニノフは、最近コンビでCDも録音した大友・野本のコンビ。やはりラフマニノフはピアニストにとっては難関なのだそうな。前半最後は大友・野本にファースト西野が加わり、メンデルスゾーンでは最も良く演奏される室内楽作品の全曲演奏でした。
後半は高橋・荘司の音楽院コンビによるデュオで、懐かしさに満ちたドヴォルザークの名作。3日間ともドヴォルザークが取り上げられるのはエクの今年のテーマに因んだから、ということではないそうで、高橋・荘司組には演奏する作品はお任せだったとのこと。高橋先生の選択は、いつかは弾いて見たかったドヴォルザーク、これ偶然です。
最後はボッケリーニの100曲近くある室内楽作品から、第2チェロが加わる五重奏曲。エクに音楽院講師大友裕子が加わる合奏ですが、この組み合わせは意外にも今回が初共演とのこと。肇旦那の紹介には笑ってしまいました。作品はほのぼのとしてユーモラス、CDでよく聴くような学究肌の演奏とは大いに異なって、時に笑っても良いような楽しい一時を楽しみます。おお、何というファースト・チェロのハイ・ポジション!! メヌエット楽章もあるけれど、あの有名なメヌエットじゃない。

三日目もエクはセリオーソで緊縛した四重奏を披露。その前には山野・高橋にエクから吉田・大友が加わってのモーツァルト。去年はこのメンバーでフルート四重奏曲第1番が演奏されましたが、今年は順番で第2番。ということは来年は第3番でしょうか。モーツァルトはフルートが嫌いだった、と手紙に書かれているのは事実ですが、あれは作曲が間に合わなかったことによる嘘の口実だった、という説が有力なのだそうな。こんな素敵な楽章を書いて、モーツァルトがフルート嫌いだったわけはないでしょ。
前半の最後は、上野・大友によるヴィラ=ロボスのフルートとチェロによる二重奏作品。タイトルの「ジェット・ホイッスル」というのはフルートの特殊奏法の一つで、聴いてみてのお楽しみ、ということ。全3楽章、アレグロ・ノン・トロッポ、アダージョに続いて演奏されるヴィーヴォの第3楽章で、タイトルにもなっているジェット・ホイッスルが吹かれて全曲が終わります。要するに吹口を塞いで思い切りよく息を吹き込む奏法。ここで長柄の長閑な風景が、ブラジルの蒸し暑い熱帯夜に変わりました。
後半は山田・上野によるブロッホからスタート。ドイツに3年間留学した経験のある山田が、ユダヤ人ブロッホの苦悩を判り易く解説。ここはかなりシリアスな音楽が響き、前半のセリオーソとシンメトリーになっているようにも感じます。
三日目の最後、音楽祭のフィナーレともなるのはドヴォルザークの名作。去年はシューマンのピアノ五重奏が大トリでしたが、今年はドヴォルザークで。壮大な作品が堂々と響き、第3回も盛大な拍手の内に幕を閉じました。

今年は桜が早々と満開になってしまい、音楽祭が始まった4日は早くも葉桜状態でした。幸い3日間とも好天に恵まれましたが、初日は熱いくらい。二日目は、音楽にゴォーッという伴奏が入るほどに強い風が吹き荒れましたが、最終日は風も納まり、気温も程よく春らしさが戻っていました。演奏会場のあるゴルフ場周辺は、時にウグイスやキジが啼き、ツバメが舞う。思いがけずエサを探すアオジに出会ったりと、新年度はながら音楽祭から、というのがこれからの音楽ライフ・スタイルになりそうですね。

各日とも演奏会の後は部屋を移動してティータイム。3日間とも出されるケーキは日々様変わりで、コーヒーは飲み放題。無料シャトルバスによる送迎もあって4000円はかなりお得なコンサート(3回通し券は1万円)でしょう。このティータイムでも生演奏サービスがあって、これも名物になりそう。きちんと仕上がったアンコールではなく、ほとんどが初見と言うハプニング期待のお楽しみで、3日間の内容を簡単に紹介すると、

初日はもちろんエクによる四重奏。ヘンデルのラルゴ、モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されましたが、本編のドヴォルザーク3曲のあとで、“速い音楽は弾けません” ということでリハ無しの2曲。

2日目はエクセルシオがボッケリーニの有名なメヌエット。本編のボッケリーニには出なかったメヌエットが四重奏番で紹介されます。開始早々、西野ファーストが“速いッ”とクレームを出すあたり、ティータイムならでは。続いて大友・野本がカサドのセレナード。ここは二人のセカンド・アルバムを期待しちゃいましょう。最後は春をテーマにした日本歌曲のメドレー(春よ来い、早春賦、春が来た、墨田川)が、高橋、大友、荘司のトリオで・・・。

3日目は山野・上野デュオによるゴーベールの子守唄からスタートし、続いて上野氏のピアノ・ソロでグァスタヴィーノ(スペインの作曲家)のソナチネ・ト短調から第1楽章だけ。続きは彼女のリサイタルで、とちゃっかり宣伝も交えます。ここで大友チェロが、このところゴーシュ音楽院近辺では慶事が続いてると挨拶。出産されたばかりというヴィオラ奏者の高橋梓氏(渚氏の姉)がサプライズ登場し、姉妹のデュオでアイルランド民謡ロンドンデリーの歌(またの名をダニー・ボーイ)が奏でられました。アンコールの締めも当然エクで、日本の春の歌を繋いだスプリング・メドレー。これは何と高橋梓編曲(作曲に近いもの)だそうで、譜面がエクに手渡されたのが数時間前と言うホヤホヤ。当然初見、初演奏と言うことで、時々は笑いも起こる楽しい時間となりました。
“練習していないとこんな具合になってしまいます” と弁解?した大友氏が音楽祭を代表し、来年以降の抱負を述べてスピーチ。3回のコンサートと五日間に及んだセミナーで構成された第3回ながらの春 室内楽の和・音楽祭が無事に終了しました。

 

 

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