2日連続のチャイコフスキー

2月如月、節分から立春と春に向かって歩み出す季節ですが、個人的には演奏会も少なく、引き続き冬籠り状態が続いています。何か出掛けて、聴いて楽しくなるようなコンサートはないかな? 先月は藤倉大、一柳慧、ナンカロウにマーラーの大曲とヘヴィーな体験が続きましたから、ここらでいつも付き合ってくれている家内の為にもウキウキするような音楽を聴こうじゃありませんか。
ということで見つけたのがチャイコフスキー尽くしのプログラム二つ。普段出かけない場所に出掛けるのも楽し、東フィルによるチャイコフスキー連荘を楽しんできました。纏めてアップしちゃいましょう、エイッ!

2月2日の土曜日に出掛けたのは、これ。

東京フィルハーモニー・第51回千葉市定期演奏会

チャイコフスキー/弦楽セレナードハ長調作品48~第1楽章
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
     ~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調作品64
 指揮/広上淳一
 ヴァイオリン/小林美樹
 コンサートマスター/依田真宣

演奏会が行われた千葉市民会館大ホールは、もちろん私は初体験。遥か昔、千葉県には5年間ほど住んでいましたが、JR千葉駅に降り立ったのは僅か2度ほど。その後も用事で房総方面には何度も出掛けていますが、千葉は常に通過点、降り立ったのはほぼ半世紀振りでしょうか。私の記憶に残っていた千葉の町並みは何処にもなく、完全に浦島太郎状態で市民会館を目指します。
チラシには千葉駅から7分、東千葉駅からは3分とあったので、判り易そうな東千葉まで行き、総武本線沿いに千葉駅方面に向かえば直ぐに見つかりました。如何にも昭和期の建物で、はて、この辺りって・・・?

帰ってからネットなどで調べてみると、千葉市民会館ホールが開場したのは1973年だそうで、ロケーションは旧国鉄千葉駅があった場所とのこと。そうか、思い出したぞ。私が社会人になって初めて千葉、木更津の更に先に赴任したのは1969年でしたから、あの頃はホールは無かったわけだし、ヒョッとして駅も現在とは別の場所だったのかも。浦島太郎になるわけだ、と納得。当時総武本線は未だ電化されておらず、両国から蒸気機関車(SL)に乗り、水杯で出立したものでした。
ホールに入って手渡されたプログラムを捲っていると、東フィル千葉定期の全講演記録が掲載されており、目が釘付け。演奏曲目や出演者について新たに書くこともないので、このレポートは東フィル千葉定期の紹介に充てましょう。

記録によれば、東フィルと千葉市が提携を結んでコンサートを行ったのは、1997年7月8日にこの千葉市民会館で開催された名曲コンサートが最初。懐かしくも大町陽一郎指揮・若林顕ピアノでワークナー・グリーグ・ドヴォルザークでした。
同じ年の10月に第1回千葉定期演奏会が行われ(コヴァーチュ指揮・バボラクのホルン独奏!!)、今回が51回目。
ずっと市民会館で開催されていたわけではなく、2000年2月に京葉銀行文化プラザが出来ると、その年からはプラザの大ホールで定期は続きます。プラザで定期、名曲コンサートが市民会館というスタイルが暫く続きましたが、名曲シリーズは2003年10月が最後でした。

定期演奏会とは言いながら開催は不定期で、最も盛んだったのは2006年で、この年は6回もの定期演奏会が行われています。順調に年3~4回の間隔で続きましたが、2011年の3月に打撃に見舞われました。東日本大震災の当日に行われた、いや予定だった第43回(高関健指揮・辻本憲一トランペット)は中止され、確かこの時出演者は東京に戻れなかった、と記憶しています。地震の発生は夕方でしたから、当時の定期は午後3時開演ではなく、もっと遅かったのでしょうか。記録には開演時間までは記載されていません。
この地震でプラザも被害を受けたのでしょうか、2012年から2015年までは会場を昔の市民会館に戻し、2013年は千葉定期がスタートして初めて、開催すら行われていません。2014年以降、定期は年1回と減り、2016年に開場は再びプラザに戻りましたが、諸般の事情でプラザは去年閉館され、今回の51回から3度目の市民会館復帰となったようです。
東フィルと千葉市の提携21年、このプログラムは曲目と演奏者のリストですが、読み込むと千葉定期の歴史がギッシリと詰まっています。永久保存版のプログラムですね。

演奏会の感想についても少し触れておきます。舞台は昨今の大ホールに比べれは狭く、この日はメインの交響曲でもコントラバスが4本の所謂12型での演奏でした。市民ホール特有のデッドな響きで、却って演奏者の息遣いがそのまま感じられるような空間で、2階席はありません。
小林美樹のアンコール(バッハ/無伴奏ソナタ第1番~アダージョ)の間、空調の低いノイズが聞こえたのも昔懐かしい市民ホールならでは。もちろん演奏が素晴らしいのでノイズは気になりませんでしたが。

会場で偶然旧知の知人に遭遇し、帰りはJR千葉駅に。途中、知人から “あれがプラザよ” とご教示頂きました。去年の定期はプラザで、バッティストーニがベートーヴェンの交響曲2本立てを振っていたんですねぇ~。
噂ではプラザは音響的に大変素晴らしかったそうですが、一度聴いてみたかったな、と思います。平成になって建設され、平成の間に消えてしまった名物ホール。
一方の市民会館、今回は平成最後の千葉定期でしたが、少しでも長く継続されることを祈念して千葉を後にしました。

千葉で夕焼けに映える富士山を拝んだ翌日、同じ広上/東フィルのチャイコフスキーを聴きに初台の東京オペラシティコンサートホールへ。このところ新国立劇場もコンサートホールもご無沙汰していましたが、久し振りの初台。こんなプログラムでした。

東京フィルハーモニー・第79回午後のコンサート

≪もっと、チャイコフスキー!≫
チャイコフスキー/スラヴ行進曲
チャイコフスキー/弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11~第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」
チャイコフスキー/イタリア奇想曲作品45
     ~休憩~
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
チャイコフスキー/弦楽セレナードハ長調作品48~第1楽章
チャイコフスキー/大序曲「1812年」作品49
 指揮とお話/広上淳一
 コントマスター/依田真宣

東フィルの人気シリーズ「午後のコンサート」は、今は休日の午後と平日の午後の2つのシリーズがあるそうですね。私が聴いたのは休日の部で、午後のコンサートだけに年配のファンが圧倒的大多数。両シリーズとも年4回で、今回は平成最後の午後のコンサートなのだそうです。因みに次回は、平日が5月21日≪新時代を祝う≫、休日は6月23日≪威風堂々≫となっています。会場はどちらも東京オペラシティコンサートホール。
広上が午後のコンサートに登場するのは2004年、2009年に続いて3度目の由。2004年の山本直純特集は聴きに行った記憶があります。

このシリーズは「お話」が付くのが売りで、今回は広上マエストロが “一人じゃ不安だから”(嘘でしょ) とのことでフリーアナウンサーで知人の田添菜穂子さんとの軽妙なトークで進められました。もちろんチャイコフスキーがテーマですが、質問に答えるコーナーもあって、専ら広上氏の独特な、踊るような指揮振りが話題になっていましたね。節分当日ということで豆まきこそありませんでしたが、鬼の面を被る広上淳一、という珍風景も見られましたよ。
前半も後半も3曲づつ、真ん中に弦楽合奏曲を挟むシンメトリカルなプログラム構成で、たっぷり2時間のコンサート(アンコールは無し)ながら、あっという間でした。

千葉と違って音響設計目にも十分な配慮が施されたコンサート専用ホール。2つを比較するのは止めましょう。舞台もずっと広く、弦は全て14型と1プルトずつ増量されていました。メンバーは前日とほぼ同じです。
特に最後の1812年ではP席にバンダと大太鼓(大砲の代用)がズラリと並び、音響的にも圧巻の午後でした。
個人的には広上では初めてとなる「ロメオとジュリエット」と「1812年」が大収穫。トークで語っていたローマでのグチャグチャになった、それでも客席もメンバーも Bravissimo!! だったという1812年も聴いてみたがったなぁ~。因みにマエストロが日本で1812年を振るのは今回が初とのこと。

全身これ音楽の広上。なるべく飛ばないように、と話してはいたものの、横浜で飛び、京都でも飛んで客席を興奮の坩堝に巻き込んだ広上/イタリア奇想曲はここ初台でも健在。東京オペラシティコンサートホールをひっくり返してくれました。これに1812年と来ちゃあ、沸かないわけないでしょ。
そして「オー人事」の現セレ、比較的大人しく開始した千葉と違って、初台ではこれが同じ奏者、同じ指揮者の演奏かと疑いたくなるほどの大熱演。ナマ演奏の醍醐味を改めて実感した節分でした。さぁ、明日からは春ですな。

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