読売日響・第472回定期演奏会
昨日は晴海にショスタコーヴィチを聴きに行く、という手もあったんですが、定期会員としての義務を果たすのが筋でしょ。キチンとサントリーで読響の定期を聴いてきました。偉いでしょ!
チャイコフスキー/幻想曲「テンペスト」
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第4番
指揮/アレクサンドル・ラザレフ
コンサートマスター/デヴィッド・ノーラン
フォアシュピーラー/小森谷巧
会場に入ると、マイクロフォンの林立に度肝を抜かれます。何しろ向かって左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの真ん前に背の高ぁ~いマイクがズラリ並んでいます。まるでマイクロフォン四重奏曲を始めそうな雰囲気。他にもズラズラと。見え見えの商業録音用セットでしょうが。
ラザレフは前回の読響客演のときにチャイコフスキーの交響曲をまとめて振っていましたよね。私も残らず聴いて、感想も全部書きました。もちろん第4もありました。そのときの第5と第3?だっけな、はCDになってますが、第4は何故か発売されてませんでした。この夜の演奏を聴き終わってみて、その理由はよぉ~く判りましたよ。
今回は読響定期としては名曲路線。従って客席も入りは上々です。前売り券は100枚ほど出ていましたがね。
私としては第4は前回も聴いたし、今日は珍品のテンペストが聴きどころかな、と思いつつ席に座ります。もちろんテンペスト、大いに楽しみましたよ。滅多に演奏されないのが不思議なくらい、チャイコフスキー節に溢れています。
ラザレフは今回(も)張り切ってました。私より一つ年上なだけですが、どこからあんなパワーが出てくるんでしょうか。食べ物が違うとかいうより、これは民族的な相異なんでしょう。ただただ圧倒されるばかり。
ラザレフのチャイコフスキー、とにかくドラマティックですね。速いテンポと極端なまでの強弱の強調。これでもか、これでもか、と歌い上げるチャイコフスキー・メロディー。
ラザレフならでは、と評したいのが、弱音の強調です。ロメオとジュリエットなら193小節からの弱音器を付けたヴァイオリンの囁き。聴こえるか聴こえないかのギリギリまで音量を落とし、ラザレフも“どこから聴こえてくるのだろう”という表情で客席をチラと一瞥する。これによって飽きるほど聴いている名曲が、今書かれたような新鮮さを取り戻すのです。
それは第4交響曲でも同じこと。この独特な弱音囁きは、第1楽章の134小節目から、ベン・ソステヌート・イル・テンポ・プレセデンテ。第4楽章なら157小節からの民謡主題にフルートが絡まる、そのヴァイオリンのテーマの歌わせ方。
これとは対照的に、強音は徹底して盛り上げます。驚きを通り越して、もう笑うしかないほどに痛快だったのが全曲の最後の大クライマックスでしょう。
フォルティッシシモの頂点ですら、3段ギアーを使ってヒート・アップ。楽譜にそんな指示はないけど、音楽がそれを要求している。その説得力。長谷川首席の、恐怖すら覚える凄みを利かせたトランペット。(トランペットは倍管、ホルンはアシスタントを一人つけてました)
最後の最後は空手チョップ10連発でオケを煽り、最後は仁王立ち。“どぉだぁ~”
これで客席が沸かないわけがないでしょう。何度カーテンコールがあったか、ラザレフが登場する度に激しい拍手とブラボォがホールを満たすのでした。
前回の第4、改めて感想を読むと、ラザレフにしては大人しい演奏だったように思います。しかし今日は凄かった!!!
思うに、前回の演奏はマエストロとしては不本意だったのかも知れませんね。だから音盤化は許可しなかった。“よし、もぅ一丁”それが今回のプログラムだったのでしょうし、最初から気合が違いましたわ。私の体感では、前回の3倍くらいのエネルギーを感じましたね。
CDが出たら、皆さん、騙されたと思って聴いてみて下さい。尤も録音では当夜のエネルギーは半減してしまうでしょうけど、それでも凄いものが出来そうです。
これから来日機会が益々増えそうなマエストロ、もう誰もラザレフの爆走を止められません。
いゃ~、行って良かった、聴いて良かった。だからライヴ通いは止められんのですワ。
今回の特徴は、
強弱の強調
と
高速
のチャイ4
ですね。