ながらの春 室内楽の和・音楽祭2019
今年も長柄に春がやってきました。公式には第4回、実質的には今年で3年目を迎える「ながらの春 室内楽の和・音楽祭」が、4月2日から7日までの6日間に亘って開催されました。
この音楽祭、主要な柱が二本あって、一つは下に記したように3日間のコンサートですが、もう一本の目玉が同時並行で開催される室内楽セミナー。プロ・アマを問わず、参加者がクァルテット・エクセルシオの一員として演奏に参加しながら受講するという世界でも珍しいスタイルが採られているのが特徴と言えるでしよう。
このセミナー自体は4月2日から5日までの4日間行われ、4月6日に受講者成果発表会が開かれました。一般の聴講者にも開放されており、成果発表会終了後は交流会が行われ、会費制でエクはもちろん、音楽祭出演者や裏方スタッフとのお喋りの場となり、飲み食いしながら音楽界の裏話が楽しめる、のだそうです。私は一度も参加したことはありませんが、エクフレンズの知人によれば、今年はベートーヴェンのカヴァティーナに挑戦し、極めて充実した時間を経験できたとのこと。レッスン会場は主に茂原市長生郡長柄町味庄にあるゴーシュ音楽院で、豊かな自然の中での音楽三昧に浸れる空間と言えるでしょう。
一方のコンサートは、ゴーシュ音楽院にほど近いRESOL生命の森リゾート内にある真名カントリークラブの特別室「むくげ」が開場。JR誉田駅から送迎バスが出ており、駅からはバスで15分ほどの立地にあります。この音楽祭、私は3年連続で参加してきましたから、設立の経緯やこれまでの様子は以前の記事も参考にしてください。
ということで、今年のコンサートを手短に振り返っておきましょうか。
4月3日(水)14時開演
ハイドン/弦楽四重奏曲作品20-2
メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第1番作品12
~休憩~
ブラームス/弦楽六重奏曲第1番作品18
クァルテット・エクセルシオ
高橋梓(ヴィオラ)、大友裕子(チェロ)
4月5日(金)14時開演
ベートーヴェン/「魔笛」の「娘か女か」の主題による12の変奏曲作品66
プッチーニ/弦楽四重奏のための「菊」
ブラームス/ヴィオラとピアノのためのソナタ第2番
~休憩~
ブラームス/ピアノ五重奏曲
クァルテット・エクセルシオ
野本哲雄(ピアノ)、荘司成子(ピアノ)
4月7日(日)11時開演
ブリッジ/ファンタジー弦楽四重奏曲
ハルヴォルセン/ヘンデルの主題によるサラバンドと変奏曲
プーランク/クラリネット・ソナタ
~休憩~
モーツァルト/クラリネット五重奏曲
クァルテット・エクセルシオ
高橋梓(ヴィオラ)、荘司成子(ピアノ)、大和真弥(クラリネット)
セカンドが交替したばかりのエク、今年の音楽祭のセカンドは、ゴーシュ音楽院でヴァイオリン科の講師を務める高橋渚。彼女はソロやオーケストラでの活動が中心で、室内楽は余り経験が無かったそうな。彼女にとっても刺激的で実り多い一週間だったと、音楽祭終了後のティータイムでスピーチされておられました。
そのエクセルシオ、弦楽四重奏曲単独での演奏は初日のハイドンとメンデルスゾーン、二日目のプッチーニ、最終日のブリッジの4曲で、ここでもセカンド一人が替わっただけでクァルテットとしての響きが微妙に変化することを実感してきました。特に冒頭のハイドンは第2楽章がハ短調で書かれており、ハイドン特有の実験的な試みが新鮮に表現されていたと聴きました。会場には次期セカンドに決まっている北見春菜氏の姿も。
初日は後半に高橋姉妹の姉でもあるヴィオラの高橋梓、チェロに大友夫人でゴーシュ音楽院を切り盛りされている大友裕子の両氏を加えてブラームスの六重奏曲が豪華に演奏されました。
二日目はエクのメンバーに二人のピアニストが加わっての多彩な楽曲。前半のベートーヴェンとブラームスは野本哲雄が共演し、後半の五重奏曲のピアノは荘司成子が務めました。両名共にゴーシュ音楽院の講師でもあります。因みに音楽院のピアノ科は上野先生を含めて3名体制だそうです。2019年春現在、ゴーシュ音楽院はヴァイオリン・ヴィオラ科、チェロ科、ポピュラー・ギター科、フルート科、クラリネット科、ピアノ科、子供のピアノ科、幼児のためのリトミック科の8科目がありますので、興味ある方は直接音楽院に照会してくださいな。
この日は吉田由紀子ヴィオラのソナタ2番、最後のピアノ五重奏と、ブラームスをたっぷりと堪能できました。年増女の深情け、かな? 別に他意はありませんよ。
三日目は長柄町出身のクラリネット奏者・大和真弥が聴きモノ。プーランク最後の傑作でもあるソナタと、モーツァルト畢生の名作クラリネット五重奏曲で音楽祭が締め括られました。前半の2曲目として演奏されたハルヴォルセン作品は、高橋姉妹による息の合ったアンサンブルが見事でしたね。
これまでの2年間と同様、演奏会が終わった後は会場をより大きな「あじさい」に移して、ケーキとコーヒーのサービス(ケーキは日替わり)。参加者が自由に歓談する中、出演メンバーによる楽しくもハプニング満載のアンコール演奏が楽しめました。
ほとんどがリハーサル無しのぶっつけ本番、初見演奏とあって、ホールは時に笑いや感嘆のため息が聞かれます。エクはグルック、ルクレール、トーマなどのレアものを披露してくれましたし、高橋姉妹のフォスター・メドレーやシューベルト魔王の鮮やかなデュオなど。大和氏はドビュッシー作のコンクール課題曲を吹いてくれましたし、大友・野本によるフィッツェンハーゲン作品(諦めと題された無言歌)という滅多に聴けないプレゼントもありましたっけ。
音楽祭の期間中は珍しく天候に恵まれ、桜や花桃を中心とした初春の花々も百花繚乱。来年に向けてのプロモーション・ビデオ作製の動きなどもあったようで、幅広いジャンルの室内楽が楽しめる長柄の春・音楽祭が更に発展していくことを祈念して音楽祭レポートと致しましょう。
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