サルビアホール 第110回クァルテット・シリーズ

平成の御代も残す所あと2週間チョッと、4月の第2週は演奏会が目白押しとなります。昨日15日は、鶴見サルビアホールのクァルテット・シリーズを聴いてきました。シーズン33の第1回目、サルビア初登場となる関西弦楽四重奏団です。
初登場ながらいきなりのベートーヴェン後期2曲。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第16番へ長調作品135
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131
 関西弦楽四重奏団

チラシのキャッチ・フレーズは「京都・大阪でフィーバー、ついに首都圏進出!」ということでしたが、彼等の評判は少しづつながら耳にするようになっていました。もちろん私が実際に関西弦楽四重奏団を聴くのは、今回が初めて。先ずはメンバーを紹介しておきましょうか。

ヴァイオリンは林七奈(はやし・なな)、田村安祐美(たむら・あゆみ)の女性両名。作品によってファーストとセカンドを入れ替えるようで、この日は前半の135が林ファースト、田村セカンド。後半はファーストに田村が座り、林がセカンドを受け持っていました。
ヴィオラは小峰航一(こみね・こういち)、チェロが上森祥平(うわもり・しょうへい)の4人で、これが2012年の結成時以来のメンバーでしょう。

個々には、林は現在大阪交響楽団のコンサートマスター。田村も同じく大阪響のコンマスを経て、現在は京都市交響楽団の団員。小峰は京都市響の首席ヴィオラ奏者で、彼は去年の9月、ここサルヴィアでウィハンQとドヴォルザーク(弦楽五重奏曲)で共演していましたから、サルビアは二度目のお目見えでもあります。上森はオケの専属ではなく、ソリストとして、主要オケの客演首席として活動中で、2016年には齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞した逸材。
従って常設団体ではありませんが、京都のカフェ・モンタージュを拠点に活動し、関西クラシック音楽界を背負って立つ存在と言えるでしょう。

関西Qが基本に据えているのは、今回のプログラムでも明らかなようにベートーヴェン。その全曲演奏会は既にカフェ・モンタージュで2015年から2017にかけて完走しましたし、現在も2017年11月から今年5月にかけて大阪のザ・フェニックスホールにて進行中。大阪での最終回(5月13日)となるプログラムが今回の演目で、同じプロは前日、名古屋の宗次ホールでも開催されたはずです。
先月京響を聴きに名古屋に遠征した時に宗次ホールでも室内楽を聴きましたが、その折にはホールのロビーに彼等のチラシが貼ってありました。顔見知りの名古屋在住クラシックファン氏に聞いたところでは、宗次では2000円、鶴見では5500円でしょ、もちろん地元で聴きますわ、と言って誇らしげにチケットを見せてくれましたっけ。
一方、カフェ・モンタージュ。こちらも数年前に京都在住のファンに勧められたこともあり、一度は出掛けて見たいスペースにリストアップしています。関西の重要なサロン・スペースだそうで、こちらも2000円で40席ほどだそうな。コアなファンは東京からも駆けつけるとのことで、いつかは京都御所近くにあるという隠れスペースを覗いてみたいと思っている次第。詳しくは平井満・渡辺和共著「クラシック・コンサートをつくる。つづける。」にも取り上げられているので、参考にされてください。

ということで、とても初めてとは思えない関西Qでしたが、ホールに入って最初に目が行ったのは、椅子の配置。通常の団体より舞台の奥に、しかも4人が固まる様にキッチリと纏められた配置で、実はこれこそが彼等の弦楽四重奏に対する姿勢でもあると実感しました。並びは伝統的なファースト→セカンド→チェロ→ヴィオラですが、4本の弦楽器の音色、フレーズが極力統一されるように配慮されており、高い集中力が聴き手にも伝わってきます。
もちろん暗譜などではありませんが、細部にまで磨き上げられたアンサンブルが安定し、些かの迷いも乱れも無く進行。長大な後期作品も間然とするところなく、充実した時間を堪能できました。奇を衒うような表現を避け、あくまでも音楽はベートーヴェン自身に語ってもらう、という姿勢。正統派ベートーヴェンを支持するファンは、彼等の全曲チクルスを聴いてみたいという誘惑に駆られること間違いなし。

後期2曲の後ではアンコール不要。演奏時間的には短めなコンサートでしたが、お腹一杯の充足感がありました。近い将来の再登場を期待しましょう。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください