日本フィル・第380回名曲コンサート
連日のオーケストラ鑑賞、昨日の日曜日はサントリーホールで日本フィルを聴いてきました。いつもの東京・横浜定期ではなく、普段は余り行かない名曲コンサート。
5月の日フィルはラザレフが振りますが、定期は東京のみ。それで、ということでもありませんが、オール・チャイコフスキー・プログラム、しかも大人気のソリスト二人を迎える豪華版とあってはパスする訳にも行きますまい。こんなプロです↓
チャイコフスキー/戴冠式祝典行進曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23
~休憩~
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
チャイコフスキー/バレエ音楽「白鳥の湖」より
指揮/アレクサンドル・ラザレフ
ピアノ/反田恭平
ヴァイオリン/神尾真由子
コンサートマスター/田野倉雅秋
ソロ・チェロ/辻本玲
一見ありそうで無い名曲コンサートですが、ラザレフならではの捻りが効いています。先ず、交響曲が無い。ピアノとヴァイオリンの協奏曲を一度に楽しめちゃう、しかも絶大人気のヴィルトゥオーゾで。最後はラザレフが余り取り上げない白鳥の湖、しかも普通演奏する組曲じゃなく、組曲には入っていないピースが二つもある。うっかりすると見落としてしまうような仕掛け満載、これは聴かなきゃ。
このコンサートは土曜日に池袋の東京芸術劇場でも行われており(そちらはサンデーコンサートスペシャルというタイトル)、2つ日間ともチケット完売だった由。さすがにファンは目が高いですねェ~、専門家や批評家も真っ青じゃないでしょうか。
実際、このコンサートは凄かった。期待に違わずチャイコフスキー節がこれでもか、これでもかと来襲し、ラザレフ・反田・神尾の神業連発で、完全に参りました。どこかの政党の合流と違って、1+1が3にも4にもなることの好例じゃないでしょうか。
チケット完売、しかも定期ではありませんから、ほぼ全員が「行く積り」で買っているワケ。正真正銘のソールドアウトですから、会場は開始前から熱気に満ちています。普段は演奏会に出掛けないと思われる老若男女も大勢。
さすがに冒頭の行進曲はチャイコフスキーとしてはレアですが、初めてラザレフを見た人は唖然としたのじゃないでしょうかね。
実はこの曲、かなり以前にラザレフ/日フィルで聴いたことがあり、その時は当日券の2階Lで聴きましたっけ。前に座った二人が、“ロシア人は顔が怖くて暗い。音楽もやたらに重くて気が滅入っちゃうんだ”と話しています。それなら来なきゃいいのに、と黙って聞いていましたが、ラザレフ最初の挨拶がこのマーチ。いきなりのドッカーンから始まってマエストロの圧倒的な指揮と客席へのアピール。前の二人は顔を見合わせたまま口アングリ、ぐうの音も出なかったことを楽しく思い出しました。ロシア人のイメージは完全に覆されたのじゃないでしょうか。
続く名曲オンパレードは改めて書くまでもないでしょう。堂々たる反田のピアノは巨匠の風格。艶やかな神尾のヴァイオリンは正にディーヴァの神々しさ。またラザレフが流石。もちろん言うべきところはシッカリと主張しますが、決してソリストの邪魔はしない。二人の楽人の資質をどこまでもサポートすることに徹し、思う存分チャイコフスキーを歌い上げる。ラザレフに鍛え上げられた日本フィルも完璧なアンサンブルで答えます。これぞ第一級の名曲コンサートでしょう。
拍手から音楽へ、音楽から拍手への流れが間髪を入れず、自然にステージと客席に一体感が生まれて行くのでした。
トリの白鳥の湖は、「情景」「スペインの踊り」「ナポリの踊り」「ワルツ」の4曲構成。要するにバレエというより交響曲のアプローチ。プログラムにはバレエ組曲「白鳥の湖」より、と表記されていましたが、これは間違いでしょう。
最初の有名な情景からして、ラザレフの演奏は他とは全然違う。最初のアタックで思わず息を呑みます。杉原のオーボエに背を向け、客席に向いて指揮するマエストロ。ナポリの踊りは、何と言ってもオットーのコルネット・ソロ。カーテンコールでは杉原とオットーを指揮台に上がらせて客席の笑いと涙を誘うラザレフでした。白鳥の湖で泣いたのは初めての体験かも。
反田君がショパンの子犬のワルツをアンコールしたこともあって、演奏会は2時間半。前日に続いての長いコンサートに、お腹一杯。真に充実した週末でした。やっぱ、日フィル凄いワ。
最近のコメント