日本フィル・第611回東京定期演奏会

巨匠アレクサンドル・ラザレフが日本フィルの首席指揮者に就任してから二度目の登場、その3種類のプログラムの最後を飾るのがプロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクトの2回目です。
チャイコフスキー/組曲第4番「モーツァルティアーナ」
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調
     ~休憩~
プロコフィエフ/交響曲第2番二短調
 指揮/アレキサンドル・ラザレフ
 ヴァイオリン/ニコラ・べネデッティ
 コンサートマスター/木野雅之
 フォアシュピーラー/江口由香
 ソロ・チェロ/菊地知也
プロコフィエフにはモーツァルトを組み合わせる、というのがラザレフの方針で、両者には共通した透明さがあるというのが根拠だそうです。
冒頭のチャイコフスキーは、そのモーツァルトを愛して止まないチャイコフスキーがモーツァルトの知られざるピアノ小品をオーケストレーションしたもの。
全4楽章の第3楽章はリストのアレンジから、第4楽章はグルックの主題が使われいてるという具合で、音楽史上の様々な巨匠の顔が見え隠れする面白い作品です。
何故か日本フィルではこれまで取り上げられたことが無く、今回が日フィル初演。
ラザレフは冒頭のジーグで驚くほど速いテンポを採用、オーケストラに集中力を要請します。
2曲目はモーツァルトの超有名作品。ソロのべネデッティはモデルかと見紛うほどの美形にして抜群のプロポーション。降り番のオケ・メンバーも舞台横に殺到するほど注目を集めていました。
例のカブリツキ男がいないのが不思議なくらいですわ。
肝心のモーツァルト、ロココ風の典雅な演奏を期待してる人には薦められません。現在では主流のやや尖ったモーツァルト。
しかし演奏そのものは、単に美女の素人芸とは全く違う本格派です。ただスタイルが相当に現代的ということ。
アンコールに弾いたイザイこそ彼女の本領でしょう。無伴奏ソナタ第5番の第2楽章「田園風舞曲」に客席は大喝采。
本編のモーツァルトで弾いたカデンツァは、恐らく彼女自身の作品だろうということ。ササッと手書した譜面をラザレフに手渡していたそうです。
使用している楽器はジョナサン・モールズ氏より受けたストラディヴァリス「アール・スペンサー」。ストラッドを弾きこなすということ自体、彼女本人の音楽性を表していると思います。
メインのプロコフィエフ、私がナマで聴くのは三度目ですが、やはり今回のものが最も素晴らしい演奏だと思いました。
最初は恐らく日本初演の朝比奈隆/N響。2拍子しか振れない朝比奈がよく変拍子の作品をやったよ、という感じで、ただただカオスだった記憶のみ。
二度目はロジェヴェン/読響。馬鹿デカイ音が記憶に残りますが、音楽として楽しめたかと言うと疑問だったような・・・。
ところが流石にラザレフです。確かにオーケストラの音量は極限で耳を聾さんばかりなのですが、チットも煩くない。
例えば冒頭にしても、轟音の中から様々なモチーフが聴き分けられます。そればかりか、第1楽章がソナタ形式に則っていることも一聴瞭然。
第2楽章の変奏の面白さ。ポッドキャストで江口コンマスが語っていた「お化け屋敷」も「ディズニーランド」も、ははぁ~ん、ここね、と容易に認識できます。
ラザレフと日本フィルは、この鉄と鋼で出来た作品をこれ以上不可能と思えるほどに緻密、かつダイナミックに演奏しました。
このシリーズは夫々CD化されて全集になると聞きますが、完成されれば21世紀の最も重要なプロコフィエフ交響曲全集になるでしょう。
噂どおり、定期ながらアンコールがあり、三つのオレンジへの恋から行進曲。最後はマーチに乗って指揮台を降り、舞台下手に来たところでジャン!!
マエストロのサービスは終演後のサイン会まで続いていました。得難い指揮者です。

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