これぞプロムス

プロムスにはいくつか聴き所があります。有名指揮者と偉大なオーケストラの競演、極めて多彩なプログラム、毎年設定されるテーマに沿って集中的に関連作品を鑑賞する、多くの世界初演乃至は英国初演で新しい音響を体験する等々。
それでも私が個人的に楽しみにしているのが、英国ならではの作品と演奏。これざプロムスと呼べるコンサートに出会うことなのです。29日に行われたプロム53こそ、そうした演奏会だったと思います。以下のもの。

8月29日 ≪Prom 53≫
ヴォーン=ウイリアムス/タリスの主題による変奏曲
ヒュー・ウッド Hugh Wood/コーミュスからの一場面 Scenes from Comus
     ~休憩~
エルガー/ミュージック・メイカーズ
 BBC交響楽団
 指揮/サー・アンドリュー・デイヴィス Sir Andrew Davis
 ソプラノ/ステイシー・タッパン Stacey Tappan
 メゾ・ソプラノ/デイム・セイラ・コナリー Dame Sarah Connolly
 テノール/アンソニー・グレゴリー Anthony Gregory
 合唱/BBCシンフォニー・コーラス

英国のオーケストラ作品、声楽を含む大作と言えば、今や大巨匠と評されるのがサー・アンドリュー・デイヴィスの指揮でしょう。四の五の言わずにマエストロの至芸を楽しみました。

冒頭のヴォーン=ウイリアムス、これぞ英国そのもの。
前半の2曲目は、英国クラシック界の重鎮たるヒュー・ウッドの若かりし頃の名曲再演です。ミルトンの詩による管弦楽伴奏付きの歌曲集で、1965年8月2日のプロムスで、ノーマン・デル・マー指揮BBC交響楽団によって初演されています。作曲家について詳しくは知らない、という方は出版社のプロフィールをご覧ください。
作品一覧をクリックし、出てきたリストから当該作品をクリックすれば、スコアを見ながら鑑賞することができます。

http://www.musicsalesclassical.com/composer/short-bio/hugh-wood

今回はプロムス・デビューとなるタッパンとグレゴリーのソロ。アンドリューもコメントしているように、管弦楽伴奏付きの歌曲というより歌曲付き大管弦楽曲というべきか。冒頭ホルン・ソロで始まり、先ずソプラノ、次いでテノールが歌います。そのあとは長大なオーケストラのみによる間奏が続き、最後は二人の歌手による二重唱。冒頭のホルン・ソロが回帰して全曲が閉じられます。
演奏後、87歳のウッドも客席の歓声に応えていました。

後半はエルガー晩年の作品。演奏される機会は少ないものの、エルガー好きには堪らないメゾと合唱の入るオラトリオ的大作。エルガーと言えばあの曲、あの曲と言えばこのメロディーと呼べる断片がいくつも引用されます。気になる方は是非。
幸い、最近になって全曲総譜がIMSLPにアップされました。フル・スコアをダウンロードしてお楽しみください。

もしノットが東京交響楽団で取り上げてくれれば、迷うことなく聴きに行きましょう。お願いしますよ、ジョナサン。

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