ウィーン国立歌劇場公演「ワルキューレ」

休場中のウィーン国立歌劇場、これまでの公演アーカイヴの中から本来行われるはずだった演目を中心に無料で配信されていますが、オッタヴァ・テレビでは19日から3日間視聴できるのが「ワルキューレ」。16日から3日間配信されていた「ラインの黄金」の続編です。
続編と言ってもラインゴールドが2016年1月のアーカイヴだったのに対し、こちらは更に遡った2015年5月31日の公演が配信されています。もちろん演出や舞台・衣装は同じコンビで、指揮者と歌手たちだけが異なります。本来なら今年上演される予定だったサイクルも同じ演出ですから、リアルタイムと同じ感覚で楽しみましょう。キャストは以下の通り。

ジークムント/クリストファー・ヴェントリス Christopher Ventris
フンディング/ミハイル・ペトレンコ Mikhail Petrenko
ヴォータン/トマーシュ・コニェチュニー Tomasz Konieczny
ジークリンデ/マルティナ・セラフィン Martina Serafin
ブリュンヒルデ/イヴリン・ヘルリッチウス Evelyn Herlitzius
フリッカ/ミカエラ・シュースター Michaela Schuster
ヘルムヴィーゲ/ドンナ・エレン Donna Ellen
ゲルヒルデ/イルディコ・ライモンディ Ildiko Raimondi
オルトリンデ/ヒュナ・コー Hyuna Ko
ワルトラウテ/マーガレット・プランマー Margaret Plummer
ジークルーネ/ウルリケ・ヘルツェル Ulrike Helzel
グリムゲルデ/モニカ・ボヒネク Monika Bohinec
シュヴェルトライテ/キャロル・ウイルソン Carole Wilson
ロスヴァイゼ/ジュリエッテ・マース Juliette Mars
指揮/サイモン・ラトル Simon Rattle
演出/スヴェン=エリック・べヒトルフ Sven-Eric Bechtolf
舞台/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンヌ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
ビデオ/フェットフィルム fettFilm

この「ワルキューレ」、今回のアーカイヴ配信の中では最も古い記録で、2015年の公演では唯一のものですね。ウィーンでは毎回、開幕前に場内アナウンスが公演中の写真撮影、録音録画は禁止されていること、携帯電話の電源を切るよう要請があり、現在はドイツ語と英語でアナウンスされています。しかしこの「ワルキューレ」では、最後に日本語のアナウンスも流れているのに驚きました。何故今はやらないのか、ウィーンのどうでもよい話題になりそう。

前回の「ラインの黄金」とヴォータン、フリッカが同じ配役ですから、続けてご覧になられる方は違和感なく溶け込めるでしょう。特にヴォータンのコニェチュニーは今年も歌う予定でしたから、今のウィーンではヴォータンと言えばコニェチュニーというイメージなのでしょうね。
「ワルキューレ」は名場面が多く、5時間の長丁場も一気に鑑賞してしまいました。特に第1幕終盤の圧倒的な高揚感、第3幕のヴォータンの告別などは思わず胸が詰まってしまいます。

ラトルの指揮ということで一般的には注目が集まっていたと思いますが、意外にもブーイングがありました。個別のカーテンコールでは歌手たちには大喝采が浴びせられますが、ラトルに対しては少なからぬ「ブー」が浴びせられます。これを「ブラヴォー」が打ち消すような客席の反応でしたが、どこが批判の対象なのでしょう。
確かに冒頭の嵐の場面からして、これまでウィーンで振ってきた往年のドイツ系名指揮者たちに比べれば「軽い」かも知れません。スターツオパーの常連からすれば、ワーグナーを英国人に託すとは何事か、という反発もあるのかな、と思った次第。

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