ウィーン国立歌劇場公演「真夏の夜の夢」

オッタヴァ・テレビによるウィーン国立歌劇場からのライブストリーミング、10月の第1弾は、ウィーンでは珍しい演目となるブリテンの「真夏の夜の夢」、プレミエ公演の模様でした。
登場人物の大変多いオペラで、その長い出演者リストは、

オベロン/ローレンス・ザゾ Lawrence Zazzo
ティターニア/エリン・モーリー Erin Morley
パック/テオ・トゥヴェ Theo Touvet
シーシアス/ピーター・ケルナー peter Kellner
ヒポリタ/シルヴィア・ヴェレス Szilvia Voros
ライサンダー/ジョシュ・ラヴェル Josh Lovell
デメトリアス/ラファエル・フィンガーロス Rafael Fingerlos
ハーミア/レーチェル・フレンケルRachel Frenkel
ヘレナ/ヴァレンティナ・ナフォーニータ Valentina Nafornita
ボトム/ペーター・ローズ Peter Rose
クィンス/ヴォルフガング・バンクル Wolfgang Bankl
フルート/ベンジャミン・ヒューレット Benjamin Hulett
スナッグ/ウイリアム・トーマス William Thomas
スナウト/トーマス・エベンシュタイン Thomas Ebenstein
スターヴリング/クレメンス・ウンターライナー Clemens Unterreiner
指揮/シモーネ・ヤング Simone Young
演出/イリーナ・ブルック Irina Brook
舞台装置/ノエル・ジニフリ=コーベル Noelle Ginefri-Corbel
衣装/マガリ・カステラン Magali Castellan
照明/ジャン・カルマン Jean Kalman
振付/マーティン・バツコ Martin Buczko
演出助手/ゾフィー・プティ Sophie Petit

この他にも妖精役のボーイ・ソプラノ四重唱が登場します。

ウィーン国立歌劇場で今シーズン予定されているプレミエ公演は、「真夏の夜の夢」「オルランド」「ペルシネッテ」「レオノーレ」「コジ・ファン・トゥッテ」「仮面舞踏会」の6本。そもそもプレミエ公演とは歌劇の新作、あるいは新しい演出のお披露目となる公演初日のことで、オルランドはオルガ・ノイヴィルトの、ペルシネッテはアルビン・フリースの何れも新作となります。
他の4本が新演出となりますが、コジ以外はオッタヴァでライブストリーミングされる予定。現在放映中の「真夏の夜の夢」は10月2日の初日がオンエアされており、正にプレミエ。同作品はこのあと、5・9・13・17・21日と続くことになっているそうです。

英国の大作曲家ブリテンのオペラがウィーンで上演されること自体が珍しいと思われますが、今回の「真夏の夜の夢」は1962年以来57年振りの上演だそうな。
今回のプレミエでは指揮者も演出家も女性ということに注目が集まっているようで、演出のイリーナ・ブルックは、あの伝説的演出家でプロデューサーのピーター・ブルックの娘。このオペラが前回ウィーンで上演された年でもある1962年生まれというのも因縁を感じてしまいました。ウィーンでは既に「ドン・パスクワーレ」を演出している由。

ということでブリテンのプレミエ、私は放映が始まった3日の午前中に一度見たのですが、残念ながらこの時点で日本語字幕が表示されません。間に合わなかったのか当初から予定が無かったのか、そもそも字幕選択に日本語が無いのです。英語のオペラなのに英語字幕があるというのも妙ですが、何とか改善できないものでしょうか。
発表された歌手陣では、ヘレナがオルガ・べズメルトナ Olga Bezmertna からナフォーニータに変更されたのみ。

日本語字幕が無い、と言ってもストーリーはシェークスピアの戯曲でお馴染みのものですし、英語ですからチンプンカンプンということでもありますまい、私は字幕は Off にして試聴しました。それでも十分に楽しめるオペラです。
1幕と2幕は続けて演奏され、2幕と3幕の間に20分の休憩。第1幕は夕暮れの森、第2幕も同じ森の深夜が舞台ですから、舞台設定からも音楽的にも問題はありません。

新しい感覚の演出、時代の最先端を行く話題に敏感ということで、冒頭、「Save the Fairies」「Nature First」 のプラカードが見えるので笑ってしまいました。
他にもパックがティターニアの浮気をコンデジで撮影し、終にはティターニアとロバ頭に変えられたボトムに自分も入れた自撮りシーンにも爆笑。これ、いっそのことスマホにした方が良かったんじゃ、などと思ってしまいます。

ハーミアとライサンダー、ヘレナとデメトリアスのカップルも高校生風。6人のアンサンブルとなる田舎芝居の人たちも、劇中劇の場面では「Mechanicals Company」となっていて笑いを誘います。
圧巻は、語りのみのパックを演ずるトゥヴェ。彼はミュージシャンや俳優である他にもダンサー、アクロバット、サーカス・アーティストとしても有名だそうで、その運動能力には舌を巻きました。彼の所作を見るだけでも放送を見る価値があります。

休憩後の第3幕は同じ森の朝で始まります(第1場)が、中ほどでシーシアスの宮殿に場面転換(第2場)。この場面転換の場面でウィーン国立歌劇場自慢のバレエ団が登場し、いわば「片付けのバレエ」が踊られます。ここにはワルツ風の個所もあって、ニューイヤーコンサートの中継でのバレエ・シーンを彷彿とさせます。バレエを取り入れたのは秀逸なアイディアでしょう。
他にも例えば、第3幕第1場では二組のカップルの目覚めの四重唱、元に戻ったボトムのアリア、村人が揃った喜びの六重唱等々、聴き所満載。劇中劇も捧腹絶倒のおかしさで、字幕が無いことも気になりません。

全曲の最後、パックの後口上は客席最前列、最後に客席を駆け抜ける演出となっていますが、ネタバレになってしまうかな。

カーテンコールでは15人の出演者が勢揃いするのも壮観ですが、プレミア公演だけに、演出家以下5人もカーテンコールに加わるのも見もの。ここでは女性演出家イリーナ・ブルックに注目しましょう。ウィーンでは常連のシモーネ・ヤングと二人でガッチリ手を組み、客席の歓声に応えていたのが印象的でした。
絶賛を浴びたのは、やはりパックのトゥヴェと、6人の職人グループでは主役級のボトムを歌ったペーター・ローズ。ローズは東京春祭ワーグナー・シリーズの第1弾「パルジファル」でグルネマンツを歌ったバス歌手ですから、その深々とした低音を覚えておられる方も多いでしょう。

字幕が無いことが気になる方、ブリテンのオペラには馴染みが無い方。ネットでオペラのあらすじを検索したり、CDに付せられている対訳を読んだり、出来ればスコアを参照するなどしてご覧になられることをお勧めします。
ブリテンが如何に天才的なオペラ作曲家であったことが再確認できるでしょう。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください