ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(4)
ウィーン国立歌劇場のアーカイヴ、今日はロッシーニの歌劇「シンデレラ」です。日本では原作の童話シンデレラで親しまれていますが、オペラの世界ではイタリア語のチェネレントラと呼ぶ方が一般的でしょう。
我々は童話やディズニー映画のガラスの靴で馴染んできましたが、ロッシーニのオペラでは腕輪がキーポイント。
今回のアーカイヴ・シリーズでは2016年の公演と、2018年の舞台が放映されました。同じ演出ですが指揮者は異なり、共通するのはドン・ラミロとダンディーニの主従コンビのみ。7人の主役と指揮者は以下の通りです。
2016年11月10日の公演は、
ドン・ラミロ/マクシム・ミロノフ Maxim Mironov
ダンディーニ/アレッシオ・アルドゥイニ Alessio Arduini
ドン・マニフィコ/レナート・ジロラーミ Renato Girolami
アンジェリーナ(シンデレラ)/エレーナ・マクシモヴァ Elena Maximova
クロリンダ/中村恵理 Eri Nakamura
ティスベ/キャサリン・トロットマン Catherine Trottmann
アリドーロ/ミシェル・ペルトゥージ Michele Pertusi
指揮/スペランツァ・スカプッチ Speranza Scappucci
そして2018年2月22日の配役は、
ドン・ラミロ/マクシム・ミロノフ Maxim Mironov
ダンディーニ/アレッシオ・アルドゥイニ Alessio Arduini
ドン・マニフィコ/パオロ・ルメッツ Paolo Rumetz
アンジェリーナ(シンデレラ)/イザベル・レナード Isabel Leonard
クロリンダ/イレアナ・トンカ Ileana Tonca
ティスベ/マーガレット・プランマー Margaret Plummer
アリドーロ/ルカ・ピサローニ Luca Pisaroni
指揮/ジャン=クリストフ・スピノジ Jean-Christophe Spinosi
演出以下の布陣は、
演出/スヴェン=エリック・べヒトルフ Sven-Eric Bechtolf
舞台装置/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンネ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
照明/ユルゲン・ホフマン Jurgen Hoffmann
おっ、と思われるかもしれませんが、演出のべヒトルフはウィーンの「ニーベルングの指環」を担当している演出家で、ワーグナーとロッシーニは直ぐには結びつかないかもしれません。
どちらも台本に忠実なリアリスティックな舞台ではありませんが、かと言って読み替え・深読み演出でもありません。現代の観客にも理解し易いように時代を現代に近く設定し、聴き手のファンタジーを誘い出すような工夫が施されているのが、ワーグナーでもロッシーニでも共通しているのではないでしょうか。
ワーグナーと大きく違うのはオーケストラの編成で、ワーグナーではピットが楽器で埋め尽くされますが、ロッシーニではすっきりしたもの。いつもはヴィオラが座る場所に木管楽器が並んでいるのを見るのも、ストリーミングの楽しみでしょう。コントラバスは3人だけ。
どちらもアンサンブルの妙をたっぷりと楽しみましたが、最初に放送された2016年版では客席にドミンゴの姿があってビックリしてしまいました。この日の指揮者スカプッチは女流指揮者で、姉クロリンダに中村理恵が起用されているのも見所でしたね。
灰被りの意味であるシンデレラ、ことアンジェリーナはマクシモヴァ、レナード夫々に味わいがあって素晴らしかったと思います。かつてこの役はシュターデ、バルトリ、ガランチャなどの名舞台を映像やディスクで楽しんできましたが、最近はメゾ・ソプラノの名花が次々と誕生していますから、このロッシーニの名作を聴く機会も増えていくでしょう。
ロッシーニの6重唱が、そのままヴェルディ(ファルスタッフ)の9重唱に繋がっていることも実感できます。それにしてもロッシーニの楽しさ、19世紀初頭にベートーヴェンもシューベルトも影が薄くなった秘密が良く分かりますね。
ロッシーニと言えばオペラ・ブッファでしょうが、実は彼のオペラ・セリアにも傑作が多く、いつかはウィーンのライブストリーミングでセミラーミデなども見てみたいと思いました。
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