ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(28)
前回の「ペレアスとメリザンド」に続いてウィーン国立歌劇場アーカイヴ・シリーズでは「エフゲニ・オネーギン」が放映されましたが、これは2019年11月26日と今シーズンの公演で、当ブログではライブストリーミングとして紹介済み。私も確認の意味で全編通して見直しましたが、その時の感想に敢えて付け加えることも無いと思います。
従ってオネーギンはパスし、今回は7日に配信されているベルリーニの「清教徒」を紹介しましょう。このベルカント・オペラは古くはマリア・カラスの録音で、ステレオ期に入ってからはジョーン・サザーランドの録音で親しまれてきました。私はレコードでも通して鑑賞したことが無く、今回のアーカイヴで初めて全曲を集中して見ることが出来ました。外出自粛期間中ならではでしょう。
ウィーンで頻繁に上演される演目なのかは分かりませんが、今回のものは2015年3月10日の公演。以下のキャストでした。
エルヴィーラ/オルガ・ペレチャッコ Olga Peretyatko
サー・リッカルド・フォース/カルロス・アルバレス Carlos Alvarez
王妃エンリケッタ/イルセヤー・カイルロヴァ Ilseyar Khayrullova
アルトゥーロ・タルボ卿/ジョン・テジエ John Tessier
サー・ジョルジョ/パク・ヨンミン Jongmin Park
グァルティエーロ・ヴァルトン卿/ソリン・コリバン Sorin Coliban
サー・ブルーノ・ロバートン/カルロス・オスナ Carlos Osuna
指揮/マルコ・アルミリアート Marco Armiliato
演出/ジョン・デュー John Dew
舞台/ハインツ・バルテス Heinz Balthes
衣装/ホセ・マヌエル・ヴァスケス Jose Manuel Vasquez
ストーリーは、中学の世界史授業でチラッと習ったことのあるピューリタン革命の物語ですね。17世紀中頃、チャールズ一世下のイングランドが舞台で、絶対王政に反対するクロムウェルを中心とする清教徒たちのグループが革命を起こして共和制を布くという政治劇に、恋の三角関係と誤解が招いた悲劇?と言えるでしょうか。
チャールズ一世は登場しませんが、その王妃でフランス王の娘でもあるエンリケッタ(フランス語ではヘンリエッタ)は第1幕で出てきますし、クロムウェルも台詞の中でだけ登場してきます。
名前のある登場人物は7人。主役のエルヴィーラは、ピューリタン(議会派)の司令官であるヴァルトン卿の娘で、国王派の騎士であるアルトゥーロを愛している。ところが議会派の騎士リッカルドもエルヴィーラを愛していて、ここに三角関係が生まれます。
議会派ではチャールズ一世の王妃であるエンリケッタを拘束しているのですが、それを知ったアルトゥーロはエルヴィーラとの婚礼当日に王妃を連れて逃亡する。これをエルヴィーラがアルトゥーロの裏切りと誤解します。つまり三角関係と誤解。
あとは実際にオペラを見て筋書きを理解していただければよいのですが、全3幕の内第2幕にエルヴィーラの「狂乱の場」が置かれています。狂乱と言っても後にエルヴィーラは正気を取り戻すので、言わば「半狂乱の場」なのですが、ここがオペラ全編での最大の聴きどころで、ペレチャッコの完璧な歌唱と演技に大喝采が贈られました。よく単独で「アリアの夕べ」などで歌われますが、アリアというよりはリッカルドとジョルジョも加わる「シーンとアリア」と呼ばれるナンバー。これに続くリッカルドとジョルジョの二重唱も聴き物です。
通常、というかこれまで私が理解していたのは、最後は目出度くエルヴィーラがアルトゥーロと結ばれるという幕切れでしたが、今回のデュー演出では違っていました。
結ばれた二人の間にリッカルドが闖入し、アルトゥーロを刺殺してしまう。エルヴィーラはアルトゥーロの骸に倒れ込むように終わるというもの。敢えて悲劇に仕立てたという感想ですが、ここはイタリア・オペラ通に解説して頂きたいものだと思いました。皆さんはどう思われます?
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