ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(29)

今日ウィーンから配信されているアーカイヴ映像は、2015年3月10日に行われたマスネーの「ウェルテル」ですが、通常の版とは少し違うところがあります。オペラ通ならこのキャストを見て気が付くかもしれません。

ウェルテル/ルドヴィック・テジエ Ludovic Tezier
アルベール/アドリアン・エレート Adrian Erod
シャルロット/ソフィー・コッホ Sophie Koch
ソフィー/マリア・ナザロヴァ Maria Nazarova
大法官/アレクサンドルー・モイシウク Alexandru Moisiuc
シュミット/ペーター・イェロジッツ Peter Jelosits
ジョアン/マーカス・ペルツ Marcus Pelz
指揮/フレデリック・シャスラン Frederic Chaslin
演出/アンドレイ・セルバン Andrei Serban
舞台/ペーター・パブスト Peter Pabst
衣装助手/ペトラ・ラインハルト Petra Reinhardt

セルバン演出の「ウェルテル」は去年11月にライブストリーミングされ、グリゴーロ様のウェルテルに注目が集まっていました。明らかにワーグナーを意識させるような演出に付いては、ここでは繰り返しません。去年の記事をご覧ください。アルベールのエレートだけが共通しています。

そもそも「ウェルテル」は、1892年2月16日に作曲者自身の指揮でウィーンで初演されたもので、ウィーンとは縁の深い作品。初演の際はドイツ語による歌唱だったそうです。
もちろん去年グリゴーロが歌ったのは本来の形であるフランス語でしたが、イタリア語による版もある由。マスネーは、1902年に当時の名バリトンと言われたマッティア・バティスティーニのために敢えてバリトン版を用意し、この歌手がフランス語では歌えなかったためにイタリア語に翻訳したのがイタリア語によるバリトン版なのだそうです。

今回の配役で気が付くのは、ウェルテルがフランスの名バリトン、テジエであること。そう、2015年3月の「ウェルテル」はフランス語によるバリトン版なんですねェ~。同じセルバン演出ながら、グリゴーロが歌ったウェルテルとはかなり趣が異なるところが聴きどころとも言えるでしょう。
私は決してオペラ通ではないので実際に見てはいませんが、トーマス・ハンプソンがシャトレ座でバリトン版ウェルテルを歌っているDVDがあるそうです。またパリ・オペラ座での公演をDVD化したものがあって、そこではヨーナス・カウフマンがウェルテルを歌い、テジエはアルベール役で出演しているとのこと。つまにテジエはウェルテルとアルベールの二役をレパートリーに持っている稀有な歌手でもあるのですね。

更に追い打ちでニュースを紹介すると、来週早々のメトロポリタン歌劇場のストリーミング配信でも「ウェルテル」が予定されており、そのウェルテルはカウフマンだそうな。因みにシャルロット役はウィーンと同じコッホだそうです。メトロポリタンの演出は不明ですが、今日のウィーンと来週のメットで「ウェルテル」合戦というのはどうでしようか?

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