ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(21)
ウィーン国立歌劇場アーカイヴ・シリーズ、4月最終週は「フィデリオ」が3種類、「蝶々夫人」が2種類と聴き比べシリーズになっています。この2本は何れも纏めて取り上げることにして、今日はその合間を縫うようにして配信されているドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」を紹介しましょう。
先ず指摘しておかなければならないのは、この映像はこれまでのアーカイヴ配信とは違い、ユニテルが制作したDVD版であること。その意味ではクライバー指揮「ばらの騎士」と同じスタイルです。彼のブライアン・ラージが映像監督を務めた名作で、DVDはドイツ・グラモフォンから出ていたと思います。
商品化するために制作された舞台映像ですから、画質のレヴェルが比較にならないほど優れています。クライバーが1994年の記録だったのに対し、こちらは2011年4月11日の舞台。この間の技術の進歩は目覚ましく、通常ウィーン国立歌劇場から配信されているライブストリーミングと比べても、次元の異なるレヴェルであることは一目瞭然。画像の素晴らしさに見惚れてしまいました。因みに私が使っているパソコンのモニターはフィリップス社の4K対応ですから、余計に鮮明なのかもしれません。
日本語字幕を選べる設定になっていますが、実際に字幕は出てきません。いや、これだけの画面であれば却って字幕は邪魔になるでしょう。どの場面も一幅の絵画の様に美しい舞台ですから、画面を見ているだけで充分に楽しめます。
音質も抜群。元々ウィーンからのライブストリーミングは音質の良さに定評がありますが、この「アンナ・ボレーナ」はDVDとして一般販売するために制作されたものですから、音声の収録にも念を入れているのでしょう。これまで以上に臨場感溢れる舞台が楽しめました。
「アンナ・ボレーナ」はドニゼッティの女王三部作と言われている悲劇の一つで、近年復活してきたスペクタクル・オペラ。最後には狂乱の場も用意されています。字幕が無いので予め荒筋はウィキペディアなどで確認しておきましょう。対訳やスコア(ペトルッチで閲覧可能)を見ながら聴くのも良いけれど、ここは純粋に映像と音声を楽しんだ方がお得でしょう。
DVDは持っている、という方もウィーンからのアーカイヴ配信とを比較してみては如何でしょうか。最後に配役などを列記しておきます。
エンリーコ8世/イルデブランド・ダルカンジェロ Ildebrando D’Arcangelo
アンナ・ボレーナ/アンナ・ネトレプコ Anna Netrebko
ジョヴァンナ・セイモー/エリーナ・ガランチャ Elina Garanca
ロシュフォール卿/ダン・パウル・ドゥミトレスクー Dan Paul Dumitrescu
リッカルド・ペルシー卿/フランチェスコ・メリ Francesco Meli
スメトン/エリザベス・クルマン Elisabeth Kulman
エルヴェイ/ペーター・イェロジッツ Peter Jelosits
指揮/エヴェリーノ・ピド Evelino Pido
演出/エリック・ジェノヴェーゼ Eric Genovese
舞台装置/ジャック・ガブリエル、クレール・シュテルンベルク Jacques Gabel, Claire Sternberg
衣装/ルイーザ・スピナテリ Luisa Spinatelli
照明/ベルトラン・クーデルク Bertrand Couderc
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