ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(45)

昨夜飛び込んできたニュースによると、ウィーン国立歌劇場は6月8日に再開されるとのこと。但しオペラが帰ってくるわけではなく、6月中はルールに基づいて観客を100人限定とし、歌手によるリサイタルが何日かおきに開催されるようです。出演する歌手たちの名前も挙がっていましたが、これらのリサイタルがライブストリーミングされるか否かは不明。続報があれば追って紹介することにしましょう。

さて今日はリヒャルト・シュトラウスの「エレクトラ」が配信されています。この演目は今年2月の公演がライブストリーミングされましたが、今回のものは同じ演出による2015年4月11日の舞台で、指揮者も多くの主役たちも入れ替わっています。キャストを列記すると、

エレクトラ/ニナ・シュテンメ Nina Stemme
クリュテムネストラ/アンナ・ラーション Anna Larsson
クリソテミス/ガン=ブリット・バークミン Gun-Brit Barkmin
オレスト/ファルクク・シュトラックマン Falk Struckmann
エギスト/ノルベルト・エルンスト Norbert Ernst
第1の少女/モニカ・ボヒネク Monica Bohinec
第2の少女/イルセヤー・カイルロヴァ Ilseyar Khayrullova
第3の少女/ウルリケ・ヘルツェル Ulrike Helzel
第4の少女/カロリーネ・ウェンボーン Caroline Wenborne
第5の少女/イルディコ・ライモンディ Ildiko Raimondi
監視の女/ドンナ・エレン Donna Ellen
若い召使/トーマス・エベンシュタイン Thomas Ebenstein
年老いた召使/マーカス・ペルツ Marcus Pelz
オレストの後見人/ヴォルフガング・バンクル Wolfgang Bankl
クリュテムネストラの腹心の侍女/シミナ・イヴァン Simina Ivan
クリュテムネストラの裾持ち/アウラ・ツヴァロフスカ Aura Twarowska
指揮/ミッコ・フランク Mikko Franck
演出/ウヴェ・エリック・ラウフェンベルク Uwe Eric Laufenberg
舞台/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンヌ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
照明/アンドレアス・グリューター Andreas Gruter

前回はビチュコフの指揮でしたが、2015年の公演はミッコ・フランク。主役と呼べる5人の中で共通するのは、エギストのエルンストのみです。今年2月に見た時には演出に不満があり、いろいろ文句も書きましたが、不思議なもので見慣れたせいでしょうか、今回は遥かに楽しめた印象でした。
開始して間もなく登場する2匹の犬について前回は意味不明と書きましたが、今回はエギストが帰還したことを暗示していると納得。最後のバレエ団による舞にも違和感を覚えませんでしたね。

ラ・ボエームのロバといい、魔笛の鳩といい、生きた動物を登場させるウィーン国立歌劇場の舞台裏に改めて感心します。そういえばオッタヴァでは配信されませんでしたが、現地では「国立歌劇場のバックステージ」というドキュメントが配信されていて、それこそ舞台裏の隅々にまで光を当てたもの。オペラ座が長期間閉鎖されることによる影響が計り知れないものだ、ということも改めて理解できた次第。日本でも何処かでこのドキュメントが再放送出来ないものでしょうか。

エレクトラに戻れば、今年2月も素晴らしい歌手たちが揃いましたが、今回配信されているのはそれを更に上回る出来じゃないでしょうか。何よりエレクトラ、クリュテムネストラ、クリソテミス3人のソプラノ揃い踏み(クリュテムネストラはメゾ)が凄い。
今回のオレストは、ハーゲンでお馴染みのシュトラックマンで、堂々たる貫録。本来ならシュトラックマンは7月の読響定期に登場して「ワルキューレ」のフンディングを歌うはずでした。7月については未定ですが、海外から来日し、舞台の上も下も三密の状態で歌うのは難しい情況でしょう。延期してでもシュトラックマンのバリトンにナマで接してみたいものだと思います。

そしてやはり、オーケストラの素晴らしさを挙げないわけにはいきますまい。ウィーン・フィルは「エレクトラ」を数限りなく上演してきたと思われます(実際に私も来日公演に接したことがあります)が、その経験の蓄積が随所に感じられる。大音響になっても決して金切り声にならず、何処か余裕を感じさせる音響を堪能できました。
この「エレクトラ」は24時間限定の配信です。

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