ウィーン国立歌劇場に室内楽が響く(オンライン)

ウィーン国立歌劇場の再開コンサート・シリーズ、3日目の昨日10日はウィーン・フィルのメンバーによる室内楽でした。
国立歌劇場で開催されているのはオペラやバレーだけではなく、土曜日の11時から1シーズンに10回ほどの室内楽を中心にしたマチネー・コンサートが行われています。この他にもオペラが上演される大ホールだけではなく、小編成のリサイタルや室内楽が演奏できるグスタフ・マーラー・ザールでも適宜サロン風のコンサートが行われていて、この日の室内楽もその一環。

特に今年はベートーヴェン生誕250年の記念の年ということもあり、年10回のマチネー・コンサートも管楽アンサンブルから弦楽四重奏まで、全てベートーヴェン作品が演奏されていました。
このピアノ・トリオの夕べも、本来なら5月9日に予定されていたもの。劇場閉鎖に伴ってこの日に延期された、と思えばよろしい。それがライブ・ストリーミングされたのですから、こちらとしては大変ラッキーだったとも言えるでしょう。コンサートのプログラムは、

ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第5番ニ長調作品70-1「幽霊」
ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第6番変ホ長調作品70-2
 ヴァイオリン/アルベナ・ダナイロヴァ Albena Danailova
 チェロ/トマーシュ・ヴァルガ Tomas Varga
 ピアノ/クリストフ・トラクスラー Christoph Traxler

ヴァイオリンのダナイロヴァは、4人いるコンサートマスターの一人で女性奏者。チェロのヴァルガもソロ・チェロを務める歌劇場の中核メンバーです。ピアノのトラクスラーも当初から予定されていた方。
この日はピアノに譜捲りさんが付き添っていました。マスクを着用していたので良くは判りませんが、日本人女性のようにも見えましたね。

選ばれたのは作品70の2曲。本来なら私も東京でこの春、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲全曲演奏会を楽しんでいたはずでしたし、首都圏では少なくとも3種類、3つの団体によるピアノ・トリオ全集が聴けるはずでした。
その意味でも、今回のライブ配信を貴重な機会として楽しみましょう。なお、オッタヴァ・テレビでは前日のオーロラ・アモローザが聴けない状態でしたが、今朝(11日)は無事アクセス可能。私もピアノ・トリオはオッタヴァを介して鑑賞しました。

ウィーンからのストリーミングは、何と言っても音質が素晴らしく、画面も美しい。こうしたメディアに慣れていない日本は遠く及ばないのが現実ですが、早くこの水準に追い付いてほしいし、必ず達成できると信じましょう。
演奏された2曲も、まるで実際にホールに出掛けて生演奏を体感しているような錯覚に陥ります。一般的には「幽霊」というタイトルが付いた70-1が有名ですが、私は変ホ長調の70-2に思わず聴き入ってしまいました。思えば作品番号は70ですからね、傑作の森の中にあって忘れるわけにはいかない名曲でしょう。中間の2楽章など聴き応え十分の大傑作。

2曲の演奏を終え、思わず頬緩むデザートも味わえました。作品38のピアノ・トリオからメヌエット。この曲は作品20の七重奏曲が原曲で、ベートーヴェン自身がピアノ三重奏にアレンジし、作品番号も38として出版されたもの。ヴァイオリンをクラリネットに替えて演奏できるようにも書かれています。
「ベートーヴェンのメヌエット」として知らぬ人のない調べが流れ出し、この日集った100人の聴き手も、全員が思わずニンマリしたことでしょう。久し振りの室内楽ナマ演奏、この配信を手本にし、日本でも室内楽のストリーミングが日常茶飯事になることを期待しちゃいました。

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