フェスタサマーミューザ・オープニングコンサート(オンライン)

気を揉ませましたが、今年も何とかフェスタサマーミューザが開幕しました。例の流行病の影響で一旦は発表されていた曲目などが大幅に変更され、チケットの販売日程も見直されての開催です。
客席は600席限定、だったかな、いずれにしても密を避けるために疎らに着席。実際に川崎に出掛けたファンは手指消毒、検温、時差退席などが求められていました。

例年とは大きく異なるコンサート風景でしたが、コロナのお陰?で新しい演奏会スタイルも試みられます。それがホールからの配信。有料ではありますが、ナマ演奏を聴くチケットより遥かに廉価で(1演奏会1000円)、フェスタを通して鑑賞するセット券なら17公演で何と9000円というお買い得。緊急事態宣言以来すっかり巣篭りスタイルに転向してしまった小生も、迷うことなくネット配信を選びました。
ライブストリーミングを扱うサイトも様々で、私もこれまでいくつかを体験してきましたが、今回のサマーミューザの取り扱いはティゲット Tiget というところ。これまで様々なイヴェントを扱ってきた会社のようで、単にチケットを売るだけではなく、逆に購入から予約、集客サービスまで幅広くイヴェントを扱っているようですね。

私は初めてだったので先ず会員登録。チケット販売日を待ってセット券を購入しましたが、これで終わりじゃありません。代金をクレジット決済すると登録したアドレスにメールが送られてきて、改めて演奏会ごとに番組URLと指定されたパスワードを入力して無料チケットとアーカイヴ視聴のチケットを購入する(これは無料)仕組み。慣れないとチョッと戸惑いますが、視聴までの手順についてもメールが送付されてきますから、私のような情報弱者でも何とかクリヤーできました。
で、最初に体験したのが以下のオープニングコンサート。

三澤慶/「音楽のまちのファンファーレ」~フェスタサマーミューザKAWASAKIに寄せて
ストラヴィンスキー/ハ調の交響曲
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第3番
 管弦楽/東京交響楽団
 指揮(ベートーヴェンのみ映像出演)/ジョナサン・ノット
 コンサートマスター/グレブ・ニキティン

演奏会の開演時間は午後3時ですが、ネットは午後1時45分に繋がります。画面右にコメントを書き込める欄があって、早速何人かが “楽しみ” “ワクワク” などと書き込んでいます。投げ銭(スパチャ)は出来ないのかな? 暫くはタイトル画面だけでしたが、コメントが順次入って来るので、無事に視聴出来ているのだと安心。
やがてナビゲーター嬢が登場し、番組が始まりました。配信だけの特別画像としてオケのメンバーへのインタヴュー放送などもありましたが、現場では絶対に見ることが出来ないバックステージからの映像があるのは有難いサービスですね。演奏前後の楽員たちの様子がバッチリ見えるので、ナマで楽しめないファンにとっては得した気分になるでしょう。

そうこうしているうちに、東京交響楽団の事務局長・辻敏氏によるプレトークがスタート。何故今回の演奏がノット監督の映像出演になったかが紹介されました。なるほど、そういうことね。東響なら代演の指揮者なんていくらでもいるでしょうに。
現地に行かないとプログラムを手にすることはできませんが、事前に同じものをPDFでダウンロードすることが出来ます。オープニング・プログラムの曲目解説はオヤマダアツシ氏。
良く見える客席も三々五々埋まっていき、やがて定刻。ブラスのメンバーが拍手に迎えられて登場し、恒例のファンファーレです。確か例年はホールのエントランスで華々しく吹奏されるお馴染みのファンファーレですが、今年はソーシャル・ディスタンスに配慮してホール内での演奏。

続いて指揮者無しによるストラヴィンスキー。特に後半の第3・4楽章がリズム的にも難しいこの作品を、コンマスのリードで演奏するのはかなり珍しいことでもあり、勇気のいる試みじゃないでしょうか。自宅で配信視聴ということもあり、意地の悪い私は楽譜を引っ張り出してきて聴く事に。この曲は紙ベースの譜面しか無いので久し振りにスコアを見ながらの鑑賞でしたが、指揮者不在によるアンサンブルの乱れや破綻は皆無。それだけオーケストラの力量が優れているということでしょう。
逆に言えば、指揮者って何のためにいるのか、という疑問も湧いてくることになります。

それは後半のベートーヴェンでも同じで、今回は事前にノットがイメージを浮かべながらカメラに向かって指揮する姿を撮影し、それを使ってリハーサルと本番を行ったワケ。大型画面がオーケストラの3方向に向かって設置され、観客用に客席に向けられたモニターが1台。もちろんメンバーはモニター上のノットに合わせて演奏するのですが、客席は何処を見れば良いんでしょうか。
配信映像では、時折指揮者のみの映像が大写しされたりもします。

演奏で一つ気が付いたのは、第4楽章の変奏曲。弦楽器のみによる最初の方の変奏では、通常のユニゾンではなく首席奏者のソロで恰も室内楽のように弾いていたのが印象的でした。
この試み、以前に下野竜也が読響で実行していたと記憶しますが、ノット監督ならではの解釈と思われます。改めて確認することが出来るのも、配信ならではと言えそうですな。

恐らく今回の東響の試みは、歴史的に見ても珍しい部類に入ると思われます。賛否は別れるでしょうが、指揮台が映像であるなら、いずれはロボットかAIでも演奏できるのでは? 故人となった巨匠の映像を記録しておけば、追悼演奏会にも新たな道が拓けるかも。
そんなことを考えているうちに、演奏は無事に、そして殆ど違和感も無く終了。コンマスのニキティンが音頭を取りながら楽員一人一人にエールを送り、最後はスイスからノット本人が拍手に飛び入り参加するというハプニングもありました。これはホールに集まった生演奏組も大喜び。
ネット配信の強みは、首都圏のファンだけでなく日本全国、そして海外からも視聴できることにあります。

成功裡に終わった今年のフェスタ初日、ネット上のコメントでは配信音量が小さいという声が少なからずありましたが、当方は繋いでいるDACのヴォリュームを思い切り上げての視聴。音声出力レヴェルが低かったのは事実ですが、音質的には満足の行くものであったことを添えておきましょう。
なお、別の配信番組でもライブ配信では音量レヴェルが低かったものの、アーカイヴでは劇的に改善されていた例もありました。この点は、後日のアーカイヴで確認したいと思っています。そのアーカイヴ配信は、翌日の12時からということです。

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