イッツ・ア・ピアノワールド(オンライン)

昨夜 tiget からメールが送られてきて、視聴にはチケット購入に続いて事前登録が必要である旨の連絡がありました。昨日のレポートでも紹介したように、サマーミューザ配信の視聴にはチケットを購入した後で各番組のURLにアクセスし、指示されたパスワードを入力する必要があります。わざわざメールで注意喚起があったのは、事前登録をしなかった顧客がかなり多かったのではと想像します。
このサイトは実際に演奏会に出掛けるのと同じ手続きで、先ずチケットを購入。演奏会当日にはチケット持参で会場に赴き、半券を切ってホールに入場して初めてコンサートが聴けるのと同じと考えればよいのです。送られてきたメールはただの購入御礼ではなく、事後の手続きを詳しく解説したものでもありますので、良く読んで対応しましょう。

ということでフェスト2日目は、ミューザシンフォニーホールのアドヴァイザーでもある小川典子のリサイタル。彼女が毎年行っている子供向けのコンサートで、今年はステージに子供たちを上げることは断念し、ミニ・リサイタルの形式を採っていました。
子供向けのリサイタルと侮る事勿れ、相当なピアノ好きにとっても大いに楽しめる、更には感動的とも言えるコンサートでしたね。演奏曲目は、

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」~第2,3楽章
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
武満徹/雨の樹素描
ショパン/バラード第1番
 ピアノ/小川典子

このコンサートは午前11時開演。開演の10分前辺りから実際のホールが映し出されます。登場を待つ小川典子のバックステージ姿が見られる特典も。
マスク装着でステージに上がった彼女、マスクを外してマイクを握り、客席に語り掛けます。ご覧になれなかった方は、アーカイヴで内容を確認されることをお勧めします。この配信は無料ですから、誰でも視聴できるはず。

いきなりモーツァルトに付いて、2014年にプラハで発見された手書きの楽譜から始めるのは小川ならでは。かなりモーツァルトに詳しいファンでも思わず膝を乗り出してしまうようなトークに惹き付けられてしまいました。実際に自筆譜と現行譜の違いを弾いて見せてくれるというサービスも。
続くベートーヴェンでは彼女の意図するところが語られ、聴き慣れた悲愴ソナタに新たな光が当てられた印象。

ここで毎年恒例になっている質問コーナーに入りましたが、子供の質問(全員5歳という設定)から大きく飛躍したクエスチョンも楽しめます。具体的には各自確認していただくとして、彼女の「マスクをして弾いていると何処かが違う。音は耳からだけでなく鼻や口からもはいってくるものだということに改めて気付きます」という言葉には大いに納得しましたね。
これは演奏する側だけでなく、聴く側も同じだと思います。ライヴで体感する演奏と、配信で聴く音楽の違いの一つに、やはり耳だけで聴くか身体全体で味わうかの差があることは明らか。昨今のコンサートでは聴衆にもマスク装着が求められますが、やはりマスクをして聴くのは間違いでしょう。耳を澄ませて実演を聴くときにマスクは必要なのでしょうか? 小川典子は重要なことを指摘してくれたと思います。だからと言って演奏会場で聴く際に、ルールを破ってマスクを外せ、と言っているのではありませんよ。

彼女の武満を聴くのも久し振り。昔買ったショット版のスコアを見ながら楽しみましたが、思えばこの譜面も何時だったの彼女のコンサートに合わせてゲットしたものでしたっけ。今の季節に相応しい雨の樹素描を満喫しました。
アンコールは定番、リストのラ・カンパネラ。彼女はこの超絶技巧曲を何百回となく演奏してきたでしょうし、私も何度聴いたことか。今回は配信ということもあり、鍵盤上のテクニックを思う存分視覚で味わうことが出来ました。
鼻と口からの入力が不足している分、目からの情報満載のコンサートでしたね。

音質は優秀の上に「超」の一文字を付けたくなるほど。スタインウェイの、小川典子の、強靭なピアニズムを十分に捉え切っていたと思います。

なお午後も小川と国府のピアノ・デュオが配信されますが、私は所用があってアーカイヴ視聴になる予定。感想は後日になりそうでので悪しからず・・・。

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