フェスタサマーミューザ・フィナーレ(オンライン)

今年のフェスタサマーミューザも遂にフィナーレを迎えてしまいました。この間開幕したばかりのようでしたが、あっという間、誠に短く感じられます。
毎年フィナーレはホスト・オケの東京交響楽団が務めることになっていて、特に今年は来年4月から同オケの正指揮者に就任する原田慶太楼の指揮とあって、チケットは直ぐに完売したそうです。期待に違わぬ素晴らしいフィナーレでしたね。プログラムはアラビアン・ナイトと題し、原田が愛して止まないというロシア音楽を並べたもの。

ショスタコーヴィチ/祝典序曲
グリエール/ハープ協奏曲変ホ長調作品74
     ~休憩~
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」
 管弦楽/東京交響楽団
 指揮/原田慶太楼
 ハープ/景山梨乃
 コンサートマスター/水谷晃

ライブ配信の特典映像でインタヴューを受けた東響の首席ハープ奏者・景山梨乃、事前のプレトークでも原田、コンマス水谷とのトークに参加、この日はソロの協奏曲だけでなく後半のシェエラザードでもオケ中で弾くとあって、正に梨乃デイの感がありました。
彼女は去年12月に紀尾井ホールでクァルテット・エクセルシオと共演、その時にはカプレとクヴィエシュという珍しい作品を演奏しましたが、今日のグリエールも余り聴く機会のない協奏曲でしょう。

実は私はこの協奏曲、1960年代にN響定期で聴いたことがあって、ソロはロシアの伝説的女性ハープ奏者のヴェラ・ドゥロワという方でした。彼女の名前を冠した国際ハープ・コンクールがある程で、クラシックを聴き始めたばかりの若造はそんなことも知らずに東京文化会館に座っていたのでした。
指揮したのは朝比奈隆。あの頃はブルックナー指揮者という定評は未だ無く、定期の曲目は最初にチャイコフスキーのフランチェスカ・ダ・リミニ、ハープ協奏曲(グリエールの他にヘンデルも引いたはず)を挟んでプロコフィエフの第2交響曲というロシア・プロ。何故かその時の光景を不思議に覚えています。

1960年代にはグリエールの楽譜などは手に入りませんでしたが、今はいわゆるピアノ・スコアながら nkoda で閲覧が可能。音源はいくらでもありますから、今回は事前にピアノ・スコアを見て予習しておきました。
第1楽章はロシア音楽らしく5拍子が時折顔を出しますし、6つの変奏曲とやや長いコーダを持つ第2楽章が美しく聴きどころ。第3楽章は軽快なリズムが楽しい協奏曲。これがアーカイブ配信で何度も聴けるのは有難いですね。

レアな作品を見事に暗譜で演奏した景山、アンコールのサービスも。作品はフランスの女流ハープ奏者で作曲家でもあったアンリエット・ルニエ Henriette Renie (1875-1956)の「いたずら小鬼の踊り Danse des Lutins」。ルニエはハープ奏者には欠かせない作曲家で、少し前に「黙想」というソロ曲を鵠沼で、吉野直子氏の演奏を聴いたことがありました。

最初は無人のP席にバンダが入るショスタコーヴィチ。フィナーレというより、これからフェストが開幕するようなウキウキする作品で、本来なら東京オリンピックの真っ最中だったはず。前日がショスタコーヴィチの命日だったそうで、因縁を感ずる選曲と言えるでしょう。
メインのシェエラザードは誰でも知っている名曲ですが、原田/東響はいくつも目新しいアイディアを繰り出し、まるで今日初めて演奏されたような新鮮さに満ち溢れていました。4つの楽章を切れ目なく演奏し、特に第1楽章の和音が鳴り止まない内に第2楽章のヴァイオリン・ソロが入ってくるあたり、心臓が口から飛び出すばかりに驚かされました。東響は良い指揮者を捕まえましたね。

これでサマーフェストは終了しましたが、8月一杯は何度でもアーカイブを楽しむことが出来ます。
これからの演奏会は、ライブ配信とアーカイブ配信が基本になるでしょうし、このスタイルが定着していくことに期待しましょう。出来ることなら海外からも簡単にアクセスできるようにして欲しいもの。日本のオーケストラ界のレヴェルの高さをアピールする良いツールとなること間違いなし。

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