プロムス2020ライブ・ファースト・ナイト(オンライン)

確か7月中旬にお知らせしたと思いますが、今年のプロムスは過去のアーカイヴから選別してBBCの放送として開催されてきました。そして、昨日8月28日からは予定通りロイヤル・アルバートホールで実際に演奏家が集まってのライヴ・プログラムがスタートしています。
予定通りに行かなかったのは観客の問題。当初は人数を制限した聴衆を迎えてのコンサートが計画されていたようですが、結局は無観客での開催となってしまいました。それだけ英国のコロナ禍は深刻だ(現在も)ということでしょう。

昨日から約2週間、このスタイルで今年のプロムスは行われ、時折大編成作品のアーカイヴ配信も続けられていくようです。事実上プロムス2020のファースト・ナイトは、いつものようにホスト・オケのBBC交響楽団が登場し、以下のプログラムが演奏されました。
英国ではラジオの他にテレビでも放送されましたが、残念ながら日本は区域外ということでインターネット・ラジオでしか聴くことが出来ません。例年はライブ放送から1か月間は何時でも何処でも聴くことが出来ますが、今年は2週間ほど延長されて45日間は楽しめるようです。皆様も時間の都合が付くときに聴いてみては如何でしょうか。手続きは簡単。インターネットで「BBC3」を検索すれば番組のホームページが表示されますから、スケジュールをクリックして希望の番組をクリックすれば音声が流れ始めます。

8月28日
Hannah Kendall/Tuxedo:Vasco de’Gama(BBC委嘱・世界初演)
Eric Whitacre/Sleep
コープランド/静かな町
ベートーヴェン/交響曲第3番
 BBC交響楽団
 指揮/サカリ・オラモ Sakari Oramo
 合唱/BBCシンガーズ(合唱指揮/ニコラス・チャーマーズ Nicholas Chalmers)

規模が大幅に縮小されても、プロムスの委嘱による新作がいくつも世界初演されるのは流石にプロムスで、今年はこの演奏会のために委嘱されたアメリカ生まれの英国人女性作曲家の作品が冒頭を飾りました。
プロムスの公式ツイッターには写真が何枚も掲載されていますので、演奏会の様子はそれで確認できます。ハンナ・ケンドールのタキシードという作品は、ジャン=ミシェル・バスキアという人の同名の芸術作品に触発されたもので、副題のヴァスコ・ダ・ガマは、アジアを旅した最初のヨーロッパ人という意味があるようです。更に詳しいことはケンドールの公式ホームページを検索してみてください。
世界初演に立ち会ったのは、客席で聴いていた作曲者本人唯一人だったそうです。もちろんコメンテイターの二人も聴いていたはずですがね。

続いては、アメリカの作曲家エリック・ウイトケアの「スリープ」と題された無伴奏合唱曲。BBCシンガーズのメンバーがいつもの客席にソーシャル・ディスタンスを保ちながら並んでの合唱。これまた5分も要しない短い作品です。演奏後に起きた拍手は、恐らくオーケストラのメンバーたちから贈られたものでしょう。
ウイトケアには同じ「スリープ」という題名の弦楽合奏曲があります。こちらは nkoda で閲覧できるので念のために参照しながら聴きましたが、ほとんど同じ曲でした。合唱曲では最後に合唱が弱音で“Sleep”を10回繰り返して終わりましたが、弦楽合奏では9回となっています。この2作品の関係については不勉強で、未だ調べていません。

無観客コンサートは休憩もなくコープランド、ベートーヴェンへと進みます。
ファースト・ナイトの曲目はどれもロックダウン、外出自粛などを反映したものが選ばれていますが、コープランド作品は恰も今回の事態を予言したようなタイトルになっていますね。イングリッシュ・ホルンとトランペットのソロに小編成の弦楽合奏。スコアではオーボエで代奏できるようになっていますが、今回はオリジナル通りイングリッシュ・ホルンでした。「静かな町」はアフター・コロナで脚光を浴びているようで、日本でも何処かのオーケストラが自粛明けに演奏していたのじゃなかったかしら・・・。

メインはベートーヴェンのエロイカ。これまた再開コンサートの王者と言った貫録で、先に行われたコンセルトヘボウ管の開幕もエロイカでしたし、ミューザ川崎のフェスタでもオープニングに選ばれていたのはご承知の通り。
オラモ/BBC響の演奏は、ロト/コンセルトヘボウの革新的な名演に比べればオーソドックス、極く普通のエロイカでしたが、如何にも久し振りの生演奏を楽しむ様子が感じ取れます。第1楽章の提示部をスコア通りリピートするのは最近の常識。第4楽章の第2変奏は、ロトとは違って普通に弦楽アンサンブルによる演奏でした。

ということでライブ・プロムスは2週間続きますが、小欄は全て聴く積りはありません。面白かったもの、注目すべきものに限ってレポートしましょう。
例えば9月12日に行われるラスト・ナイトなど、その選曲や演奏スタイルに付いて今から賛否両論、大変な騒ぎになっています。この論戦にはボリス・ジョンソン首相まで加わっており、小欄は早くも聴く気が失せてしまいました。担当する女性指揮者にもいろいろな話題があるようで、関心がある方はネットで検索してみてくださいな。

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