セーラ・コナリー・リサイタル@ヴィグモア・ホール(オンライン)

15日にヴィグモア・ホールのランチタイム・コンサートを紹介しましたが、今日も16日のマチネーを取り上げましょう。余りにも素晴らしかったので・・・。
前回はロンドンのマチネーが日本では夜9時に当たり、夜型人間にとっては絶好の癒しタイムになるとお伝えしました。翌日はヒース・クァルテットの演奏会があるとお知らせしたのですが、この回は演奏会そのものは行われたようですが、技術的な問題(詳しいことは判りません)が生じて配信はキャンセルされてしまったようです。この時間、私は藤沢から東京に向かう電車の車中でしたから、その混乱は知らずにいました。

ということで仕切り直し、現地時間で9月16日の午後1時に開演されたのが、表題に掲げたデイム・セーラ・コナリーのリサイタル。共演は歌曲のリサイタル・ピアニストとして第一人者のマルコム・マルティノーという何とも贅沢な1時間でした。歌われたのは、フランス語、ドイツ語、英語の歌曲で構成されたインターナショナルな選曲。

9月16日マチネー
プーランク/月並
ルーセル/雨に濡れた庭作品3-3
ルーセル/秋の庭作品8-3
ルーセル/2つの歌作品20~サラマンカの学生
マーラー/子供の魔法の角笛~ラインの伝説
マーラー/子供の魔法の角笛~この世の生活
マーラー/子供の魔法の角笛~美しいトランペットが鳴り響くところ
マーラー/子供の魔法の角笛~原光
ブリッジ/3つの歌~毎日、毎日 Day after Day
ブリッジ/3つの歌~私に話してください、いとしい人よ! Speak to me, my love!
チルコット/Sky Picture ~Cloud Language
チルコット/Sky Picture ~Cloud River
 メゾ・ソプラノ/デイム・セーラ・コナリー Dame Sarah Connolly
 ピアノ/マルコム・マルティノー Malcom Martineau

コナリーについては紹介するまでもないでしょう。私はグラインドボーンのジュリアス・シーザーで虜になってしまいました。
この配信はユーチューブで誰でも簡単に視聴することが出来ますが、ヴィグモア・ホールの公式ウェブサイトなら30日間見ることが出来ます。興味ある方はジックリ鑑賞してください。また歌曲のリサイタルに付いては、ウェブサイトから歌詞をダウンロードすることもできますので、それを対照し乍ら聴かれるのも良し。

歌の一つ一つは取り上げませんが、ブリッジの歌曲はタゴールの詩による曲集から2曲が歌われたもの。また最後に取り上げられたボブ・チルコットの2曲は、チャールズ・ベネットの詩による新しい歌曲集「Sky Picture」から抜粋されたもので、この演奏が公開での世界初演でもありました。

マーラーの4曲が終わった後、ヴィグモア・ホールのディレクターを務めるジョン・ギルフーリー氏が登場し、デイム・セーラ・コナリーがロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティーの名誉会員に選出されたセレモニーが行われました。
ロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティーは1813年に創設された団体で、ベートーヴェンに第9交響曲を委嘱したことでも知られる老舗中の老舗。ギルフーリー氏が挨拶の中で初期の名誉会員としてメンデルスゾーン、リスト、ワーグナー、クララ・シューマン、ブラームスなどの名前を挙げると、さすがのヴィグモア・ホール聴衆からも驚きの笑い声が漏れていました。この日、デイムは歴史的な音楽家たちの仲間入りを果たしたことになります。

そしてもう一つ、世界初演されたチルコットの2曲の素晴らしかったこと。チルコットは主に合唱曲の作曲家として有名ですが、今回の新作、特に Cloud Language はクラシックとかポピュラーとかいうジャンルを超えて歌われていく名曲じゃないでしょうか。もちろん初めて聴いた歌ですが、感動しましたね。
この歴史的と言って良いコンサートが、その瞬間と同じ時間にネットを通じて共有できる不思議さと幸福感。ヴィグモア・ホールに感謝しましょう。

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