アルビオン・クァルテット(オンライン)

29日のヴィグモア・ホールは、マチネも夜のコンサートも弦楽四重奏ということで、クァルテット・ファンには堪らない一日でした。私は28日(日本時間)の夜9時からマチネを聴き、29日の朝に夜のコンサートを聴くという段取り。
マチネは初体験のアルビオン・クァルテット、夜は秋のシリーズ二度目の登場となるカスタリアン弦楽四重奏で、夫々個別に印象記を残しておくことにしました。従って連続投稿となります。

最初はマチネで、アンコールを入れても1時間丁度というプログラム、

エリザベス・マコンキー Elizabeth Maconchy (1907-1994)/弦楽四重奏曲第3番
フレイア・ウェイリー=コーエン Freya Waley-Cohen (1989-)/スナップ・ドラゴン Snap Dragon
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135
 アルビオン・クァルテット Albion Quartet

2016年に結成された比較的新しい団体ということで、一部のCDコレクターを除き、恐らく日本では殆ど知られていないと思われます。
ヴァイオリンはタムシン・ウェイリー=コーエン Tamsin Waley-Cohen とエマ・パーカー Emma Parker 、ヴィオラはアン・ベイルビー Ann Beilby 、チェロがナサニエル・ボイド Nathaniel Boyd 。チェロのみ男性というグループです。

CDではシグナム・レコードにドヴォルザーク・シリーズを録音(NMLで聴ける)していて、これは全集に発展するのでしょうか。今のところ2枚リリースされているようで、有名なアメリカも聴けます。子供たちへの音楽教育に情熱を注いでいるのが注目されるでしょう。
団体名のアルビオンの出典は不明ですが、ブリテン島の古名から? と考えるのが自然、かな。ドーヴァーの白い台地がイメージできます。

この日は珍しいレパートリーを2曲取り上げ、ベートーヴェン最後のクァルテットで締め括るプログラム。最初に演奏されたマコンキーはアイルランドの作曲家で、弦楽四重奏曲は13も残されているそうです。名前から判るように女性作曲家で、ヴォーン=ウイリアムズの弟子筋に当たる由。
今回紹介された第3番は1938年の作品で、単一楽章、11分ほど。レングニックから出版されていて、nkoda で閲覧できます。私もスコアを参照しながら聴きましたが、バルトークの影響が明らかだと聴きました。4分の4拍子と8分の5拍子が交互に登場する部分と、ベートーヴェンの第5交響曲を連想させるタタタター・リズムが執拗に繰り返されるプレストが夫々繰り返され、大きな頂点を形成して最後は静かに終わるというもの。

続いて取り上げられたフレイア・ウェイリー=コーエンは、ヴァイオリンのタムシンの姉。二人の母はアメリカの彫刻家ジョシー・スペンサー Josie Spencer なのだそうです。師はオリヴァー・ナッセンで、ナスップ・ドラゴンは2017年の短い作品。題名に付いては良く分かりませんが、コンピューター上の数字遊びでしょうか? Snap Dragon は植物の名前(キンギョソウ?)でもあり、英国の子供の遊戯の名前でもありますよね。この作品が何を意味するのかについても詳しいことは判りません。
客席には作曲者も来場していたようで、舞台上の4人が拍手を贈っている所だけが映し出されていました。

最後はベートーヴェン。正直なところ、私にはかなり違和感を覚えたベートーヴェンでした。上手く説明できませんが、ベートーヴェンとは違う言語で喋っているような感覚。4つのパートが一つの合奏体を創り出すのではなく、夫々が自分のパートを主張して譲らないような演奏と言いましょうか。第2楽章のヴィヴァーチェでは、特にチェロが演奏上で生ずるノイズを撒き散らし、良く言えば推進力のある、悪く言えば乱暴な演奏に聴こえてしまうのでした。
アンコールもあって、ハイドンの作品20-5へ短調から第3楽章アダージョ。

この一度のコンサートだけで断定するのは避けましょう。折を見てドヴォルザークなどを聴いてみてから考えてみたいと思っています。

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